表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/246

1 4-3 15-0 エヴァ・ブラウン?


 ウェリントンから、プロペラ機に乗って、小一時間。

 ニュージーランド南島で最大の都市、クライストチャーチにやってきました!


 しかし、B737かA320に搭乗するとばかり思っていたのに、まさか、プロペラ機に乗せられるとは思ってもいなかったよ。

 せめて、CRJかエンブラエル、NRJとかの、リージョナルジェットに乗りたかったぞ。


 まあ、これは私個人の気分的な問題ですので、ジェット機に比べて、プロペラ機が別に劣っているというわけではないのですが。


 プロペラ機はジェット機に比べて、機体の調達コストが安いとか、ターボプロップの方が燃費が良いとかの問題で、短距離の路線では、未だに生き残っているのでしょう。

 日本国内でも、需要の少ない地方路線や離島を結ぶ路線とかでは、プロペラ機の方が主役だもんね。


 それはそうと、優梨愛ちゃんと萌香ちゃんの、全豪オープンジュニアのダブルス決勝の様子が気になります。



「そういえば、もうそろそろ全豪の結果出ている頃だよね?」


「ちょうど終わったばかりみたいです。あー、坂巻さんたち、負けちゃいましたね」



 私の問いに、麻生さんは素早くネットで試合結果を確認してくれたのですけど、結果は甘くはなかったみたいでした。

 やはり、ジュニアのダブルスとはいえ、そう簡単にはグランドスラムは勝たせてもらえませんでしたか。



「スコアは?」


「7-5、4-6、10-7ですね」


「ファイナルセットが、10-7?」



 ほわい? なんで、スーパータイブレークなの?



「スーパータイブレークですから」


「ああ、そういえばそうだったか」


「そういうことですね」



 そういえば、ジュニアのダブルスは、グランドスラムでもスーパータイブレークを採用していたんだっけ。

 ダブルスやらないから、すっかり忘れていたよ。



「でも、グランドスラムのファイナルに進出しただけでも立派だよね」


「里田さんは、まだ中学三年生ですから、十分立派な成績だと思いますね」



 これで、二人のランキングも、また少し上がるから、私も二人に追い付けるように頑張らないと!

 ウェリントンで、60ポイント取った程度では、二人との差が開いちゃったからね。






 ※※※※※※






 クライストチャーチG4大会の予選をサクッと突破して、本戦も順調に勝ち上がって決勝戦を迎えました。

 決勝の対戦相手は、オーストラリア人のエマ・ブラウンさんです。エヴァ・ブラウンではありません。エマさんです。


 残念ながら、髪型はブラウンヘアーのキノコカットではなくて、金髪のポニーテールでした。

 いや? 金髪でポニーテールも似合っていて可愛いとは思いますよ?


 でも、ネタ的に言って、「エマさんはそうじゃない!」とか、叫びたくなってしまったのですよね。

 これは、なんなのでしょうか? 魂の慟哭とでも表現すればいいのかな?


 そのエマさんは、今大会の第2シードで、現在のランキングは350位前後という、ジュニアサーキットでは中堅の部類に入る選手だと思います。

 350位前後で、第2シードなんだから、大会のレベルはそう高くはないのがお分かりになるでしょう。


 まあ、G4大会なんだし、これでも選手が集まった方なんだろうなぁとか思ったりもしたりして。

 相変わらず、日本人のジュニア選手が多かったですけど、今回は無事に?外国人のエマさんとの決勝戦となりました。


 では、試合開始と行きますか!






 ※※※※※※






 まず最初のサービスは、相手のエマさんからのスタートです。



『はっ』


 うーん、ごく普通のサーブですね。まあ、最初だし軽く相手にリターンして様子を見てみましょうか。


「てぃ」


 私がリターンしたボールは、エマさんのボディを目掛けて飛んでいった。

 しかし、アウトになると思われたボールは、ベースライン手前で急激に落ちてバウンドして跳ねた。


『くっ』


 エマさんは窮屈な体勢になりながらも、なんとかリターンを返そうとしたけど、そのボールはネットに突き刺さってしまった。

 ボディ狙いのリターンは、相手のアンフォーストエラーを誘いやすいので、お薦めのリターンだと思います。


 まあ、ボディ狙いばかりだと、そのうち相手も慣れてしまって対処されるので、何事もバランスが大切なんですけども。



『ラブ15』



 これで、私が1ポイント先取した格好である。


『はっ!』


 む? これは、なかなか角度が付いていいサーブですね。

 そうか、サウスポーだから、アドサイドからのサービスの方が、ワイドに逃げるサーブを打ちやすいのでしたね。


 これは、私もよく多用するサーブでして、これをレシーブするのは半分以上は無駄な労力ですので、今回は諦めましょう。

 テニスとは、体力の温存と、ペース配分が大事なのです。



『15オール』



 エマさんのランキングは350位だけど、少しは楽しめるかも知れませんね。



 ※※※※※※



『ゲーム、ブラウン』



 様子見に徹して、軽くヒッティングの練習をする感じで、身体をほぐしていたら、ゲームカウントは2-1となっていました。

 さて、だいたいエマさんの特徴も掴んだことだし、ここからは一段ギアを上げて行くとしますか!


 今度は私のサービスの番だから、頑張っちゃうよ!



「はっ!」


 まずは、サービスラインとサイドラインが直角に交わる隅を狙ってサーブを打ちます。


『くっ』


 バウンドしながら外に逃げるボールをリターンしたけど、私のコートに返ってきたボールはやや浅めのイージーなリターンでした。

 まあ、そうなるようにサーブを打ったのだから、当然なのですが。


「とぅ」


 私は前方に走りながら、ジャンプしてフォアハンドで相手のアドコートのサイドライン際にリターンを叩き込んだ。



『15ラブ』



 ジャックナイフとか、エアケイとか呼ばれている打ち方である。

 これを女の子がやると、おへそが見えちゃう確率が高いので、恥ずかしがってるなのか、あまりやる女子選手がいないのが、もったいない気がしますね。


 さて、お次はアドサイドからのサーブだから、私もサウスポーにスイッチしてみましょうか?


「でや!」


 私の左腕から繰り出された、サーブは角度を付けてワイドに逃げると予想してレシーブをしようとしていた、相手の裏をかいてセンターに打ち込んだ。

 ズドンと打ち込まれたサーブは、センターライン上でバウンドして低く速く跳ねた。


 エマさんは、目を見開いて驚くだけで、一歩も動くことが出来ずに、ボールを見送ることしか出来なかった。

 オン・ザ・ラインでのサービスエースである。



『30ラブ』



 うーん、残念ながらも、エマさんとのヒッティング練習はここまでのようですね。

 やっぱり、ランキング350位程度だと、こんなモノなのかなぁ。


 私にとって、得るべきモノがないのであれば、もうこのあとは、機械的にサクッと終わらせてしまおう。

 それに、多少暑くなってきたしね。このあとオークランドに戻って、ニュージーランド最後の大会も控えているのだから、体力は温存しないとね!


 オークランドの予選は明日から始まるのだから、この試合が終わったら、直ぐに飛行機に乗ってオークランドに移動しなければならないのだ。

 オークランドの大会は今大会よりも格上のG3大会だから、主催者によっては、例外を認める場合もあるらしいけど、基本的にはSEを使えないのである。


 それに、オークランドの大会にエントリーした時点では、私のランキングポイントはゼロだったので、本来であればオークランドの大会は、予選すら出場が出来ない立場だったのですよ。

 しかし、ウェリントンの大会でSFに進出した時点で、オークランド大会の予選ワイルドカードを主催者がくれましたので、予選の出場が可能になったというわけなのです。


 この辺りは、柔軟性がある主催者で助かりましたね。

 もしかしたら、私が庭野まどかの娘であるという、親の七光りも多少あるのかも知れませんけど。


 でも、持つべきものは、コネとお金と権力だよね?

 え、違う?


 でも、あえて捨てるのはもったいないじゃん。

 使えるモノは親の七光りだろうと、使わなければ損だよ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ