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1 2-3 15-30 おそろしあ


 私の初めての国際大会での大舞台であった、Petits Asも順調に勝ち進んで、決勝を迎えました。

 いくら、海外の強豪とはいっても、まだ13歳とかのジュニア選手が相手ですから、私の敵ではなかったみたいでしたね。


 そう思えたのは、準決勝で対戦した相手までみたいでした。


 現在、第一セットの終盤を迎えてゲームカウントは、2-4とリードされているのです。

 過去に何度かは、わざとゲームを落としたことはあったとしても、この私が真面目にプレーをしているのにかかわらず、今世で初めて相手にブレイクを許してしまったのだ。


 その相手の名前は、アナスタシア・トハチェフスカヤ、13歳。

 なんだか、名前でも名字でも昔のロシアでは、処刑されてしまいそうで微妙な名前の気がするのですけど、私の気のせいですかね?


 アナスタシアは、13歳でありながら、もう既に身長は170cmを越えているのではないかと思われる、スラっとした体形で、髪はプラチナブロンドでサラサラのストレート。瞳は切れ長で一見冷たそうに見える瞳のロシア美人です。

 いまにでも直ぐに、ファッション雑誌のモデルも務まりそうな気がしますね。それぐらいアナスタシアさんは綺麗だと思います。


 しかし、この美女もオバチャンになったら、おっかさーんというような、ふくよかな体型になってしまうのでしょうか?


 ロシア人のDNAおそろしあ……


 それで、第7ゲームは相手のサービスゲームですので、このゲームか第9ゲームを私がブレイクバックしない限りは、セットを落としてしまうのである。

 いままで、私のサービスゲームでブレイクを許したことがなかったということは、当然ながら、セットも落としたことがないということだ。


 しかし、まだ慌てるような時間ではない。

 まだ、尻に火が点いたというわけではないのだ。


 多少苦戦している理由は、なんとなく解っている。今世の私は本当に強い相手とは、いままで一度も真剣な勝負をしたことがなかったのです。

 私自身が強すぎた弊害が、ここに来て噴出した格好というわけだ。


 本当の天才テニス少女というのは、転生した記憶があるインチキな私ではなくて、アナスタシアみたいな子のことをいうのでしょうね。


 しかしさすがに、今の時点で外国人の強豪といえども同世代を相手にして、セットを落とすのは、私のプライドが許さない。

 私が半分インチキな存在だったとしても、私にだってプライドはあるのだから。そう、前世を含めたら相手よりもテニスの経験が豊富というプライドが。


 だから、私はギアを一段上げることにした。

 それに、もう既に彼女の弱点らしきモノは見つけてしまったのですから、それが本当に弱点なのか、これから確認させてもらいましょう。


 では、そろそろブレイクバックさせていただきしょうか!






 ※※※※※※






『だぁ!』



 相手のサーブがセンターラインを狙って打ち込まれた。フラットサーブだとしても、13歳にしてはかなり球速が速い。160km/h近く出ている気がしますね。

 さらに、ハードコートだから、バウンドしてからの球足も速くて伸びる。


 これが、18.44mしか距離が離れてない野球であったのなら、小学六年生で女子の私では球の速さに、対応できずに空振りをするのだろうけど、160km/hの球だろうと、テニスでは対応が出来ちゃうのですよね。

 テニスのベースラインとベースラインの距離間は、23.77mあるのだ。この5.3mの差、野球に比べて約三割増しの距離が、まだ身体的に成長しきってない小学生女子でも、対応を可能としているのである。


 18.44÷23.77=0.7757 

 160×0.7757=124.1


 つまり、野球で投手が投げる160km/hの豪速球であったとしても、テニスでは、124km/hの打ちやすい手頃なスピードの球になってしまうのです。

 だから、子供の私でも打ち返すことが出来るのだ。


 まあ、正確には、この単純な計算方法が本当に合っているのかどうかまでは、知らないのですけどね!

 私の動体視力と、身体が反応してから対処が出来ることを考えると、この計算に落ち着いたということです。


 ようするに効果の程は、個人の感想ってヤツだ。


 ということで、リターンを返しますよっと。


「とぅ」


 センターラインを狙ってきた相手のサーブを、私は両手バックハンドで相手のアドサイドのコートへと打ち返した。

 個人的には、少し腕を捏ねる感覚でしょうか?


『だぁ』


 しかし、アドサイドに打ち返された私のリターンは、アナスタシアに拾われてしまった。

 今度は、私のアドサイドにクロスでリターンが返ってきた。


「やっ!」


 私はサイドライン際まで走って、相手のリターンをバックハンドで捕らえる。

 まだ相手は戻りきれてないし、戻れないと判断して、私は相手のデュースサイドのサイドライン際を目掛けてリターンを返した。


『ラブ15』


 バックハンドでのダウンザラインが決まった。

 やっぱ、ダウンザラインを決めると気持ちいいね!



『だぁ!』


 今度はアドサイドから、角度を付けたクロスのサーブが打ち込まれた。

 このサーブをダウンザラインで返すのは厳しそうですね。


「てぃ」


 私は球の勢いには逆らわずに、そのままバックハンドのクロスを打ち返した。


『だぁ』


 相手のリターンが、私のデュースサイドに返ってくる。


「とぅ」


 私は横に走りながら、フォアハンドで相手のデュースサイドにストレートのリターンを打ち返す。


『だぁ』


 相手はバックハンドでクロスのリターンを、私のアドサイドに返してきた。

 私はやや前方に釣り出された格好になってしまっている。


 でも、大丈夫。十分に届く範囲だ。

 ボールに追いついて、私はラケットを切る。そう、今回のリターンは、ラケットを振り抜くのではなくて、横に切る感覚で打ち返したのだ。


「おりゃ!」


 掛け声とは裏腹に、私がリターンしたボールには勢いがない。


 まあ、厳密に言うのであれば、打つ時に声を発するのは、ルール上では禁止されている行為なのですが。

 でも、無意識のうちに声が出ちゃうのですよね。


『ラブ30』


 相手のデュースサイドのかなり浅めの位置で、私がリターンしたボールが二回跳ねて、レシーブのために駆け出していた相手をあざ笑うかのように、転々とコートを転がった。

 私のドロップショットが決まった瞬間である。


 そう、彼女の弱点とは、諦めが早いということである。

 守備範囲は広いのだけど、自分が届かないと思ったボールに対しては、絶対に無理をして追い付こうとはしないのだ。


 いままでは、それで勝ててきたのだから、その諦めの早さを改善する機会が多分なかったのでしょうね。

 これはきっと、彼女が天才ゆえの弊害なのかも知れません。


 いままで、真に強い相手とは対戦したことがなかった私にも、これは当て嵌まることだから、私も気を付けなければいけませんね。


 しかし、このドロップショットは自分をコケにされたとでも思ったのか、これで、アナスタシアの闘争心に火が点いてしまったようでした。

 一段ギアを上げた彼女に、連続でサービスエースを決められてしまった。



『30オール』



 ひぇ~、この連続でサービスエースを決めたサーブって、170km/hは出ている気がしますね。

 このサーブは初見殺しだわー。


 でも、まだだ。まだ慌てるような時間ではない。

 そのサーブも二回も見れば、もう見切ったも同然なのだから!


 練習では、180km/hのサーブを相手にして練習をしていたりもするのだ。

 男性の大人が相手ではないのだから、私が対処できる範囲のサーブである。


 さあ、こい! 勝負はこれからであって、まだ終わらんよ!


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