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1 2-3 15-15 そういう言い方はやめて下さい!


「さあ、乞食するぞー!」


「ちょっと環希ちゃん! 恥ずかしいから、そういう言い方はやめて下さい!」


「はーい」



 麻生さんに怒られてしまった、庭野環希です。


 あれから季節は巡り、また冬がやってきました。


 私も12歳になりました。あともう少しで、赤いランドセルともお別れになります。

 最初は多少、気恥ずかしかった赤いランドセルでしたが、六年間という長い間お世話になっていると、愛着というものが湧いてきて、なにやら名残惜しい気分にさせられますね。


 小学校を卒業したら、小学生時代の思い出として、ミニチュアのランドセルに作り直してもらおうかな?

 そんな、センチメンタルな気持ちになるのも、もう既に六年生の三学期に入っているので、小学生でいられるのも、残りあと僅かな時間だからなのでしょう。


 残り僅かな小学生での生活ですけど、私には学校に通っている暇は与えられなかったようでした。

 ほんま、テニス少女は辛いよ……


 まあ、自分が好きで選んだ道なのだから、後悔はしていないのですが。

 それに、修学旅行には、みんなと一緒に行けたし、ちゃんと卒業アルバムの集合写真にも、みんなと一緒に写れたので、それで良しとしますか!


 一人だけ別枠で、左上の隅に一人寂しく写っているとかだと、さすがに私でも泣けてくるぞ。



 それで、いまどこに居るのかといいますと、羽田空港の国際線ターミナルに来ているのですよ。

 出国審査も終わってゲートをくぐり抜けて、あとは飛行機に搭乗するだけなのですけど、まだ一時間以上は待たされますので、ラウンジに突撃したというわけである。


 お目当てのブツは、カレーライスであります。

 なんといっても、ラウンジの食べ物は無料ですから、それを食べないという手はありえません。


 無料、タダ、ロハ。いい響きですよね?


 時間帯は少し早いですけど、夕食の時間ですので、ガッツリといただきましょう。

 あー、でも、今回の旅はビジネスクラスを利用するので、ビジネスクラスの機内食も食べたいから、ラウンジでガッツリと食べるのは、控えておいた方が良いのかな?


 しかし、機内食は、与圧の関係と湿度が乾燥しすぎているから、なにを食べてもイマイチ感は拭えない気もするのですよね。

 あえて言うならば、日本で積み込んだエコノミーの機内食は、そこそこ食べられると思います。チープな味なんだけど、なんだか美味しいと感じさせる、あのエコノミーの機内食は、不思議な感じがしますね。


 海外で積み込んだエコノミーの機内食は、日本人の肥えた舌では、あまり期待しないほうが無難ではありますけど。

 航空会社によっては当たりもありますけど、日本人の舌には外れのほうが多い気がしますね。


 それよりも、今世ではビジネスクラスに乗るのは初めてだから、少し楽しみにしております。

 でも、ビジネスクラスとは言っても、CA、中国国際航空のビジネスクラスなんですよね。ちょっとがっかりしたのは、言わないでおきましょう。


 中国系のエアラインは、どうしてもサービスの質が悪いイメージがあるんだよなぁ。

 台湾や香港系のエアラインはそうでもないのに、どうして差が付いたのでしょうか? 昔の中国が社会主義国だったから、その弊害なのかも知れませんね。


 それで、べつに中国に用事があって、CAを利用するわけではないのですよ。

 フランスへ行くのに、CAのビジネスクラスが安かったから、北京経由の乗り継ぎ便で利用することにしたのです。


 日本からの直行便のエコノミー料金の半額で、フランスまでビジネスクラスで行けるのですから、ママ曰く、これを利用しない手はないということなのでしょうね。

 日系だったら、エコノミーでも三倍以上の値段がするのですよ。


 ちなみに、パリまでのエコノミー料金で安いチケットだと、四万円ぐらいでフランスまで行けちゃったりもするのです。

 航空運賃とは、いったいどうなっているのでしょうか? 不思議ですよね?


 しかし、ケチで有名なママでも、エコノミークラスに乗せて遠くヨーロッパまで行かせるのは、さすがに悪いと思ったのか気が引けたみたいで、ビジネスクラスの利用となりました。 ……CAだけどさ。

 あと、ビジネスクラスにしたのは、私だけではなくて、麻生さんが一緒というのも大きいかと思いますね。


 私だけだったら、「ビジネスクラス? そんな贅沢は環希にはまだ早い」とか、ママだったら平気で言いそうな気がしますし。

 自分で稼げるようになって、早く直行便のビジネスクラスに乗れるような身分になりたいぜ。


 それで、なんでママと一緒にフランスに行かないで、麻生さんと一緒なのかといいますと、ママは優梨愛ちゃんと萌香ちゃん二人のコーチングがあるからなのです。

 ママたち三人は今年もまた、ニュージーランドへ遠征に行っているしね。


 つまり、私はママに見捨てられたということである。まあ、見捨てられたは半分冗談なんですけどね。でも、半分程度は合っているのだ。

「もう環希に教えられることは、技術的な面ではほとんどない」とか、ママに言われちゃいましたので。


 でもこれは、ある意味では仕方ないことだと言えるのかも知れません。だって、私は前世でもプロのテニス選手だったのだから。

 しかし、最近では、そのことを忘れそうになるのですよ。


 そう、前世の私が男だったということも含めて……

 これはきっと、肉体の性別に精神が引っ張られているのだろうなぁ。



 ちなみに、鶴のマークのラウンジに突撃しました。

 え? 他社便かつ、アライアンスも違うだって? もーまんたい!


 羽田の国際線でも、プライオリティパスが使えるようになったのです!

 カレーライス、美味しゅうございました。






 ※※※※※※






「やっと着いたー!」



 羽田から出発して、北京で飛行機を乗り継いで、パリのシャルル・ドゴール空港へと到着。

 そこから、さらに飛行機を乗り継いで、ポーという街の空港で飛行機を降りました。



「目的地までは、まだ車で一時間近く掛かりますよ」


「げぇ!」



 まあ、そうだよね。目的地の街に、必ずしも空港があるとは限らなかったのでしたね。

 でも、ここから車で一時間弱なら、そこそこ近いですし、まだマシな部類に入るのでしょう。


 しかし、パリ~ポー間は、小型の四発ジェット機という、珍しい飛行機に乗れたので満足でした。

 日本国内では、飛んでない飛行機だしね。


 ちなみに、乗り継ぎの合い間に、シャルル・ドゴール空港にもピアノが置いてあったので、数曲ばかりピアノを弾かせて頂きました!

 おフランスといったら、クレイダーマン! あと、白い恋人たち!


 〆は、オー・シャンゼリゼ!


 結構、パリジェンヌにもウケてたよ。途中からバイオリン奏者が乱入してきたり、周りにいた人たちが歌い出したりして、即興のミニ演奏会みたくなってしまったけど。

 これが本当の、フラッシュモブってヤツのなかも知れませんね。


 フランス人はノリが良かったです。


 でも、シャンゼリゼの曲ってイギリス生まれなんだよね。プライドの高いフランス人が、よく受け入れたと思わなくもない。

 音楽に国境はないということなのかも知れませんね。






 ※※※※※※






「今度こそ本当に、やっと着いたー!」


「ええ、ようやく到着しました」



 ポーという街の空港から、さらに車で東に小一時間走った場所、スペインとの国境にほど近いピレネー山脈の麓にある、フランスのタルブという田舎町にやってきました!

 このタルブで、Petits Asというテニスの大会が開催されるので、わざわざ学校を休んだりまでして、おフランスくんだりまで、やって来たというわけなのであります。


 ペティットエス? フランス語だから、プティアズでしょうか?

 なにはともあれ、Petits Asは、14歳以下のジュニア選手によるテニスの世界大会なのである。


 このPetits As大会は、ITFジュニアサーキットとは別枠の国際大会ではあるのだけれども、世界各国から将来有望なジュニア選手が集まってくるのです。

 この大会で活躍したジュニア選手の中は、未来においてグランドスラムを優勝したり、ツアーで活躍したりする選手も少なくないのですよね。


 つまり、一流テニスプレイヤーへの登竜門と見做されている大会が、Petits Asなのである。

 だから、私に足りなかったモノ。そう、国際大会での経験というモノが積める大会なのだ。



 それにしても、日本から丸一日掛かっての到着だったから、さすがに疲れたよ。ビジネスクラスでこの疲労なのですから、これがエコノミーに乗っていたらと思うと、ゾッとしますね。


 飛行機の中で横になって眠れるのって素晴らしいと思いました。小並感。

 というか、私はまだ小学生だったよ。


 だから、小並感でも良かったんや。

 こういう時には、子供特権って便利ですよね?


 ちなみに、中国国際航空の機内食は、可もなく不可もなくといったところでした。

 羽田発の日本食の仕出し弁当仕様は、結構美味しかったけど、北京発パリ行きの食事がイマイチでしたね。


 私は二回目の食事に中華風を頼んだので、朝食で出されたお粥さんは、まあ食べられたのですけど、麻生さんは洋食を選んで渋い顔をしていましたので、味は推して知るべしだったのでしょう。

 ご愁傷さまでした。


 帰りは、どうやら台湾経由になりそうなので、そっちの便に期待しましょう。


 それと、ママは相変わらず、飛行機を選ぶのが下手だと思いました。

 もしかしたら、麻生さんが選んだのかも知れないですけど。


 北京発パリ行きの便なんて、夜中の二時過ぎに出発するのですよ?

 北京空港のラウンジで乗り継ぎ便を待っている二時間程度の時間が、いやに長く感じられましたよ。


 まあ、麻生さんが一緒なのだから、私はウトウトさせて貰えたのだけど、これが一人だったら、たとえ眠かろうと無理矢理にでも起きていなければならないのです。

 これは、深夜便のデメリットだと思います。


 あと、何故か、羽田でパリまでの発券をしてくれなかったので、北京でもう一度カウンターに行かなければならなかったし、保安検査も煩わしいかも知れませんので、旅慣れた人向けかな?

 いくら安い値段でビジネスクラスに乗れるとはいっても、あまり個人的には乗りたくない便でしたね。だから、たぶん次はないかな?


 しかし、ヨーロッパへ行くのに、時間に余裕があって飛行機の中で寝たいだけの人なら、中国での乗り継ぎ便もありっちゃありなのかも知れません。

 さすがに、エコノミークラスはお薦めしませんけど。



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