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1 2-3 15-0 テニスファンド


「庭野まどかは凄かったんだね!」


「そうよ! ママは凄かったのよー! なんてったって、ママが庭野まどかなんだからね! シングルスだって、プレミア5までは勝てたし!」



 私が煽てたとはいえ、ママが自画自賛するなんて珍しいですね?

 ママ、酔っ払ってきたのか? お酒が入って、気が大きくなっているのかも知れませんね。



「だからママは、日本でルビーやサファイアを、人工ダイヤに作り変えることにしたの」


「それが、優梨愛ちゃんと萌香ちゃんということ?」


「そう。それが、里田に坂巻だったってわけよ」



 なるほど、ルビーかサファイアである二人は、錬金術師でもあるママの琴線に触れたから、Team Madokaに入れたということでしたか。

 なんで、優梨愛ちゃんと萌香ちゃんの二人だけなんだろうと、ずっと疑問に思ってはいたんだよね。



「それに元々、日本人選手は留学なんかしなくても、ある程度は世界で活躍していたのよ?」



 まあ、それはそうだったけど。でも、ママたちが活躍した時代と、今とは時代が違うようにも思えるのですけど?



「安達さんなんて、高校までは部活テニスだったのよ? 信じられる? あの人は、環希とは別の意味で天才だと思うわね」



 私の場合は、半分インチキみたいな存在だから、除外するとして、ハム子様が凄いテニス選手だったのは確かだろうね。


 確かハム子様は、関西の高校女子テニスの強豪校の出身でしたっけ?

 本気でプロを目指しているジュニア選手は、部活でインターハイを目指すなどとは、無縁のテニス生活を送っている子が大半なのだ。


 つまり、部活テニスから世界で活躍するのは、相当に厳しいと言わざるを得ません。

 だから、ママはハム子様を天才と言ったのでしたか。



「ママでさえ、ジュニア時代から海外遠征はしていたというのに、ママもあの人には勝てないわー」



 ああ、だから、苦手意識があるのね。納得しました。

 でも、ママが怖いから言わないけどさ。



「そう、環希、あなたのような天才だねあの人は」


「でも、それを言ったら、ママだって」


「まあね。私は私が庭野まどかだからね」



 また、自画自賛しているし。



「でも、それを言ったら、環希、あなたも同じじゃないのよ」



 なんか、話がかみ合ってない気がするのですけど?



「ママ、もしかして酔ってる?」


「いいえ、ママ以上の才能の塊のクセに。嫉妬するわー!」



 人の話を聞いてない。こりゃ酔っ払ているで確定だな。

 嫉妬もクソも、ママは現役を引退してまんがな。


 それに、ママは私の母親なんだから、娘の才能を喜ぶべきなのでは?



「それにぶっちゃけると、ファンドを通したら最終的には、優梨愛ちゃんは損なのよ」


「損?」



 また話が飛んだし。なんで、ファンドの話に戻るんだよ?

 これだから、酔っ払いは性質が悪いって言われるのですよ。


 でも、ママのその話し振りからすると、優梨愛ちゃんにも海外留学の話が持ち上っていたということなのかな?

 私はなんにも聞いてないぞ?



「将来、優梨愛ちゃんが五年間で稼ぐ賞金の10%が、ファンドが持ち出した額よりも少なくなると思う?」


「うーん、それはないかな」



 ママが言った五年間で稼ぐ賞金の10%とは、ファンドを利用して留学した場合には、ランキングのトップ100入りを果たしたら、五年間はファンドに賞金の10%を納めるという契約になっているのだ。

 ファンドに納められた賞金の10%は、後に続くであろう、ジュニア選手の留学費用にまた充てられるのでしょうね。


 つまり、留学費用が合計で、20万ドル掛かったと仮定した場合で話をすると、ファンドを利用した選手がトップ100入りしてからの五年間で、200万ドル以上稼げれば選手の方が損になる仕組みとも言える。

 トップ100位以上の選手が、年間で40万ドルしか稼げないということはあり得ないので、損は確定しているともいえるでしょう。


 しかし、女子の場合に限って言うのであれば、ランキングの100位~50位ぐらいまでの選手の年間獲得賞金というのは、45万ドル~60万ドル程度なのである。

 年間で100万ドルを稼ぐには、ランキングを30位ぐらいまで上げなければなりません。


 だから、ランキングを上げて稼げば稼ぐほど、10%は変わらなくても、その中身は増えていくのだ。稼げば稼ぐほど損をする。 ……なんだか、税金と似ているような気がしないでもない。

 そら、金持ちが税金を下げろというわけだわ。


 え? 稼いでいるのだから、ケチ臭いこと言うな?


 ケチはママからの遺伝なんだよぉぉ!

 それに、根は小市民なんだしさ。


 ちなみに、グランドスラムとかの高額な賞金の大会で、一発屋の如く活躍してQFやSFに進出した場合は、ランキングが多少低くても、獲得した賞金は多かったりもするのですが。

 でもこれは、あまり平均には当て嵌まらないケースでしたね。


 つまり、トップ100位からの10%返済義務というのは、実に的確なラインで線を引いている気がしないでもない。

 でもこれって、篤志家事業と言えるのかな?


 しかし、ファンドはハイリスクローリターンの投資をしているのと同じわけですから、その志の高さには敬意を払ってしかるべきでしょう。

 将来の日本テニス界のために、半分お金をドブに捨てる覚悟で、ファンドをやっているようなモノだと思いますしね。


 それで、自分が将来において、確実に稼げる選手になると確信していてなおかつ、10%の返済義務が嫌ならば、ファンドを利用しなければいいだけの話ではあるのだ。



「そうでしょ? 彼女なら、二年で楽にペイできる額だわ」



 二年でペイするとなると、年間獲得賞金が100万ドル以上のプレイヤーということを想定しているのかな?

 なるほど、優梨愛ちゃんも随分とママに高く評価されているみたいで、なによりだと思います。



「あとの三年は、逆に優梨愛ちゃんの持ち出しになると?」


「そういうことね」



 もしかしたら、優梨愛ちゃんのフロリダ行きを、ママが自分で指導したいがために、あの手この手で言い包めて妨害したのかも知れないと、思わず邪推しそうになります。

「こうこうこうでこうだから、結局は娘さんが損をする事になります」とかなんとか、ママなら平気で言いそうな気がして、自分の母親ながら少し怖いです。


 結論。ママはやっぱり、ケチだった。


 まあ、あくまでも、私の想像でしかないのですがね。



「あん? 環希、あんた変にゃこと考えてにゃーか?」


「滅相もございません!」



 母上様、なぜゆえ語尾が名古屋弁になっているのですか?



「あん? たまきちゃちゃんと聞いてりゅにょきゃ?」



 ちゃんと聞いてまんがな。



「もしかして、ママ酔ってる?」


「ちつれいな、酔ってないれふ!」



 結論。ママは酔っ払うと絡む性質だったらしい。


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