1 2-2 0-0 ごめんね?
真夏の日差しがギラギラと照り付ける猛暑の中、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
庭野環希が大阪より暑中お見舞い申し上げます。
今年もやってきました! 大阪、靭テニスセンター!
全日本ジュニアテニス選手権大会、12歳以下女子の部、決勝!
私は一回戦から順調にストレートで勝ち進んで決勝を迎えました。
まあ、私が小学生を相手にして、セットを落とすことなんてあり得ないのだから、当然の結果ではあるのですが。
この調子だと、来年は14才以下の部に出場しないと、周囲の人間が納得しそうにない気がしますね。
また来年も、12才以下の部に出場したら、弱い者いじめとか見做されてしまって、周囲の大人たちから怒られてしまいそうな気がするよ。
でも、来年の今の時期になっても、その時の私も、まだ11歳なんやで?
顰蹙を買うのを承知で、12才以下の部にも出ようと思えば出場できるのですよね。
しかし、適正年齢のカテゴリーに出場して顰蹙を買う可能性まで、考えなくてはならないとは……
公式戦無敗。強すぎるのも考えものということなのか。
まさか、強すぎるのが悩みの種になるとは。
「それにしても、暑い……」
なんなんだ、この暑さは? 去年はここまでの暑さではなかったはずだよね?
こういうのを、うだるような暑さと表現するのかな? でも、うだるようなというよりも、蒸し焼きにされるという表現の方が、この暑さには相応しい温度と湿度だよ。
というか、暑いの通り越して、これは完全に熱いになっているよ!
いくら、夏は暑いのが当たり前とはいっても、いくらなんでもこれは異常な暑さだよ。
は? 39.8℃?
人間の体温よりも熱いの? 馬鹿なの? アホなの? 死ぬの?
身体中の血液が煮えたぎっちゃってる気がするよ。
というか、本当に死んじゃうくらいの暑さだよ!
ハードコートの照り返しと湿度があるから、体感温度は50℃近くになっている気がするわー。
不快指数は、100%を優に超えて、120%とかになっているんじゃないの?
何もしないでも汗が噴き出してくる。というか、噴き出すを通り越して、汗が流れ落ちてるよ!
まるで、サウナに入っているのと同じような状態だよ。
こんなキチガイみたいな暑さだと、熱中症で誰か死ぬぞ。
さっきから、ひっきりなしに救急車のサイレンが、けたたましく鳴り響いていることだし、ぶっ倒れる人が続出しているんだろうなぁ。
その救急車のサイレンが、また耳障りに聴こえて癇に障り、余計に不快指数を跳ね上げさせている気がしますね。
もう既に、リストバンドが汗を限界まで吸い込んで、吸収できずに汗が流れ落ちているよ。
これでは、リストバンドの意味がないよ!
さすがに、こんな環境では、いくらテニスが好きだとはいえ、試合をしたくないよ。
もうこんなところには、一秒でも長くは居たくないぞ!
うん、サッサと終わらして涼もう。
大会関係者も、審判以外は誰も試合見てないでやんの。
きっと屋内でクーラーにあたって涼んでいるのでしょうね。
それなのに、選手にはこの炎天下で試合をさせるだなんて、完全に狂っているとしか思えん。
もう、この試合には、なんの意義も見い出せないわ。全日本ジュニアチャンピオンの肩書きもいらないから、リタイアしちゃおっかなぁ。
うん、ちょっとでもおかしいと感じて、ヤバいと思ったら、さっさとリタイアしちゃおう。
そう、唇が引き攣るとか、指先が震えるとかの症状が出る前に。
最悪、そんなヤバい症状が出てしまったら、直ぐにでもリタイアしますよ。
肩書きよりも、自分の命のほうが大事ですので。
でも、その前に、やれるところまでは、やってみせましょうかね。
30分で終わらせてやる!
モブ子ちゃん、ごめんね?
でもこれは、人間の生存本能なんだから、仕方がないのだよ。
そう言い訳をしておきましょう。
さっさと終わらして涼もう。
こんなクソ暑いところには、一秒でも居たくない!
まずは、相手のサービスからだから、私はレシーブからのスタート。
相手のサービスゲームは全部ブレイクして、ダブルベーグルで終わらせてやる。
それでは、戦闘開始!
※※※※※※
……ルーティーンなんてしなくていいから、さっさとサーブしようよ。
こんな炎天下の中で、チンタラと試合をしている暇はないのです。
まずは、デュースサイドからのスタート。
「おりゃ!」
私の右サイド側にきたサーブを両手フォアハンドでコントロールしながら、相手アドサイドのラインを狙う。
「ラブ15」
ダウンザラインでのリターンエースが決まった。
今度は、私のアドサイドのサイドライン際にきたサーブを、バックハンドで角度を付けたリターンを相手に返す。
「とりゃ!」
私のリターンは、相手サイドライン手前で急激に落ちて、ボールが跳ねた。
「ラブ30」
これで、二本連続でのリターンエース。
「……」
頼むから、フォルトだけは勘弁してください。
「ラブ40」
だから、ダブルフォルトは……
残り一本ブレイクすれば、ラブゲームブレイクの完了だ。
相手はファーストサーブをフォルトして、コントロールを重視した球速が遅めのセカンドサーブを入れてきた。そんなにスピードが遅かったら、回り込んでからのフォアでも打ち返せちゃいますよ?
「どりゃ!」
私は六時半から八時の方向へと、時計回りで弧を描くように回り込んでから、相手デュースサイドのライン際を狙ってリターンした。
サーブを打ち終えた相手は、一歩動いたところで追うのを諦めた。
「ゲーム、庭野」
最後の締めは、フォアハンドから繰り出したダウンザラインでのリターンエース!
どやっ!
さっさと終わらして、クーラーがある部屋で涼もう。
こんなクソ暑いところには、一秒でも居たくない!
さて、お次は、私のサービスゲームですね。
全部ファーストサーブでサービスエースを取るつもりで、相手コートに叩き込んでやる。
では、行きますよっと!
「とぉ!」
「15ラブ」
まずは、センターライン狙いで、サービスエース一本目!
「てぃ!」
「30ラブ」
続いて、相手バック側サイドに逃げるスライスサーブで二本目!
「でぃ!」
「40ラブ」
さらに、相手フォア側だけど、角度を付けてワイドに打ち込む。
これで、三本連続でのサービスエース!
「どっせい!」
「ゲーム、庭野」
最後は、相手がサイドを気にしたところで、またセンターにズドン!
どやーっ!
四連続サービスエースで、ラブゲームキープだぜぃ!
あ、相手の子、これは心が折れたな。
※※※※※※
「ゲームセット! 2-0、庭野! 6-0、6-0!」
「ナイスゲームでした!」
「な、いす…げーむ……」
ごめんね?
この試合の恨みつらみは、この暑さと大会主催者に言ってね!
それにしても、疲れた……
試合で疲れたのではなくて、暑さで体力を全部持っていかれて、消耗した感じがするよ。
こんな気象条件で試合をするぐらいなら、朝早くか夕方以降に試合時間をずらして欲しいと切に願います。
いくら鍛えているとはいえ、スポーツ選手だって人間なんやで?
しかし、いくらなんでも30分で試合を終わらせるのは、さすがに無理がありましたね。
40分弱は掛かってしまったよ。
試合描写を書く才能が欲しい…