表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/246

1 2-2 0-0 ごめんね?


 真夏の日差しがギラギラと照り付ける猛暑の中、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

 庭野環希が大阪より暑中お見舞い申し上げます。


 今年もやってきました! 大阪、靭テニスセンター!

 全日本ジュニアテニス選手権大会、12歳以下女子の部、決勝!


 私は一回戦から順調にストレートで勝ち進んで決勝を迎えました。

 まあ、私が小学生を相手にして、セットを落とすことなんてあり得ないのだから、当然の結果ではあるのですが。


 この調子だと、来年は14才以下の部に出場しないと、周囲の人間が納得しそうにない気がしますね。

 また来年も、12才以下の部に出場したら、弱い者いじめとか見做されてしまって、周囲の大人たちから怒られてしまいそうな気がするよ。


 でも、来年の今の時期になっても、その時の私も、まだ11歳なんやで?


 顰蹙を買うのを承知で、12才以下の部にも出ようと思えば出場できるのですよね。

 しかし、適正年齢のカテゴリーに出場して顰蹙を買う可能性まで、考えなくてはならないとは……


 公式戦無敗。強すぎるのも考えものということなのか。

 まさか、強すぎるのが悩みの種になるとは。



「それにしても、暑い……」



 なんなんだ、この暑さは? 去年はここまでの暑さではなかったはずだよね?

 こういうのを、うだるような暑さと表現するのかな? でも、うだるようなというよりも、蒸し焼きにされるという表現の方が、この暑さには相応しい温度と湿度だよ。


 というか、暑いの通り越して、これは完全に熱いになっているよ!

 いくら、夏は暑いのが当たり前とはいっても、いくらなんでもこれは異常な暑さだよ。


 は? 39.8℃?


 人間の体温よりも熱いの? 馬鹿なの? アホなの? 死ぬの?

 身体中の血液が煮えたぎっちゃってる気がするよ。


 というか、本当に死んじゃうくらいの暑さだよ!

 ハードコートの照り返しと湿度があるから、体感温度は50℃近くになっている気がするわー。


 不快指数は、100%を優に超えて、120%とかになっているんじゃないの?


 何もしないでも汗が噴き出してくる。というか、噴き出すを通り越して、汗が流れ落ちてるよ!

 まるで、サウナに入っているのと同じような状態だよ。


 こんなキチガイみたいな暑さだと、熱中症で誰か死ぬぞ。


 さっきから、ひっきりなしに救急車のサイレンが、けたたましく鳴り響いていることだし、ぶっ倒れる人が続出しているんだろうなぁ。

 その救急車のサイレンが、また耳障りに聴こえて癇に障り、余計に不快指数を跳ね上げさせている気がしますね。


 もう既に、リストバンドが汗を限界まで吸い込んで、吸収できずに汗が流れ落ちているよ。

 これでは、リストバンドの意味がないよ!


 さすがに、こんな環境では、いくらテニスが好きだとはいえ、試合をしたくないよ。


 もうこんなところには、一秒でも長くは居たくないぞ!

 うん、サッサと終わらして涼もう。


 大会関係者も、審判以外は誰も試合見てないでやんの。

 きっと屋内でクーラーにあたって涼んでいるのでしょうね。


 それなのに、選手にはこの炎天下で試合をさせるだなんて、完全に狂っているとしか思えん。

 もう、この試合には、なんの意義も見い出せないわ。全日本ジュニアチャンピオンの肩書きもいらないから、リタイアしちゃおっかなぁ。


 うん、ちょっとでもおかしいと感じて、ヤバいと思ったら、さっさとリタイアしちゃおう。

 そう、唇が引き攣るとか、指先が震えるとかの症状が出る前に。


 最悪、そんなヤバい症状が出てしまったら、直ぐにでもリタイアしますよ。

 肩書きよりも、自分の命のほうが大事ですので。


 でも、その前に、やれるところまでは、やってみせましょうかね。

 30分で終わらせてやる!


 モブ子ちゃん、ごめんね?


 でもこれは、人間の生存本能なんだから、仕方がないのだよ。

 そう言い訳をしておきましょう。


 さっさと終わらして涼もう。

 こんなクソ暑いところには、一秒でも居たくない!


 まずは、相手のサービスからだから、私はレシーブからのスタート。

 相手のサービスゲームは全部ブレイクして、ダブルベーグルで終わらせてやる。


 それでは、戦闘開始!






 ※※※※※※






 ……ルーティーンなんてしなくていいから、さっさとサーブしようよ。

 こんな炎天下の中で、チンタラと試合をしている暇はないのです。


 まずは、デュースサイドからのスタート。


「おりゃ!」


 私の右サイド側にきたサーブを両手フォアハンドでコントロールしながら、相手アドサイドのラインを狙う。


「ラブ15」


 ダウンザラインでのリターンエースが決まった。



 今度は、私のアドサイドのサイドライン際にきたサーブを、バックハンドで角度を付けたリターンを相手に返す。


「とりゃ!」


 私のリターンは、相手サイドライン手前で急激に落ちて、ボールが跳ねた。


「ラブ30」


 これで、二本連続でのリターンエース。



「……」


 頼むから、フォルトだけは勘弁してください。


「ラブ40」


 だから、ダブルフォルトは……



 残り一本ブレイクすれば、ラブゲームブレイクの完了だ。

 相手はファーストサーブをフォルトして、コントロールを重視した球速が遅めのセカンドサーブを入れてきた。そんなにスピードが遅かったら、回り込んでからのフォアでも打ち返せちゃいますよ?


「どりゃ!」


 私は六時半から八時の方向へと、時計回りで弧を描くように回り込んでから、相手デュースサイドのライン際を狙ってリターンした。

 サーブを打ち終えた相手は、一歩動いたところで追うのを諦めた。


「ゲーム、庭野」


 最後の締めは、フォアハンドから繰り出したダウンザラインでのリターンエース!


 どやっ!


 さっさと終わらして、クーラーがある部屋で涼もう。

 こんなクソ暑いところには、一秒でも居たくない!


 さて、お次は、私のサービスゲームですね。

 全部ファーストサーブでサービスエースを取るつもりで、相手コートに叩き込んでやる。


 では、行きますよっと!



「とぉ!」


「15ラブ」



 まずは、センターライン狙いで、サービスエース一本目!



「てぃ!」


「30ラブ」



 続いて、相手バック側サイドに逃げるスライスサーブで二本目!



「でぃ!」


「40ラブ」



 さらに、相手フォア側だけど、角度を付けてワイドに打ち込む。

 これで、三本連続でのサービスエース!



「どっせい!」


「ゲーム、庭野」



 最後は、相手がサイドを気にしたところで、またセンターにズドン!


 どやーっ!


 四連続サービスエースで、ラブゲームキープだぜぃ!


 あ、相手の子、これは心が折れたな。






 ※※※※※※






「ゲームセット! 2-0、庭野! 6-0、6-0!」


「ナイスゲームでした!」


「な、いす…げーむ……」



 ごめんね?


 この試合の恨みつらみは、この暑さと大会主催者に言ってね!


 それにしても、疲れた……


 試合で疲れたのではなくて、暑さで体力を全部持っていかれて、消耗した感じがするよ。

 こんな気象条件で試合をするぐらいなら、朝早くか夕方以降に試合時間をずらして欲しいと切に願います。


 いくら鍛えているとはいえ、スポーツ選手だって人間なんやで?


 しかし、いくらなんでも30分で試合を終わらせるのは、さすがに無理がありましたね。

 40分弱は掛かってしまったよ。


試合描写を書く才能が欲しい…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ