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1 2-1 40-40 おまえもか!


 シンガポールチャンギ国際空港



「眠いよー! 勝手に瞼が閉じるよー! 眠いよー!」


「環希、静かにしなさい」



 そうは言っても、子供は眠たいと機嫌が悪くなってグズる生き物なのだ。



「ママはもう少し、子供の人権ってヤツに配慮するべきだね!」


「人権って大袈裟な……」


「ママ、いまの時間って何時何分なのか、わかってんの? 夜中の三時半だよ?」



 この時間帯は普段では、まだ子供は寝ている時間なんですから!

 きっとママは、チケットの安さに目が眩んで、飛行機の発着時間には無頓着だったに違いない。


 ママはお金持ってるクセしてケチなんだから!


 いや? ケチだからお金が貯まったといった方が無難なのかな?

 でも、ママの場合は、節約して貯めたというよりも、テニスの賞金とスポンサー料で稼いだのだから、当て嵌まらないよなぁ。


 それはそうと、マイルを貯めるなら、デルタじゃなくて日系でも良かったじゃん。日系の航空会社は、デルタと同じアライアンスには加盟してないんだぞ。

 日本発着便は圧倒的に、日系の航空会社が加盟しているアライアンスが多数を占めているのだから。


 これだったら、どうせ成田発着ならば、乗り継ぎ便でもLCCのビジネスクラスのほうが良かったよ。

 まあ、私も、プレエコ? ラッキー! とか思っていたのだから、あまりママだけを責められないのですがね。


 飛行機代に悩んだり考えたりしないで、乗れる身分に早くなりたいぜ。

 でも、そんなお大臣クラスの身分は、ランキングトップ50位以内に入ってからなんだろうなぁ。100位では、まだ少し心許ない気がするしね。


 頑張らないと!



「コーチ、あたしも眠いです……」


「わたしもです……」


「すみません、私が悪うございました。ごめんなさい。これからは、時間帯も気にして飛行機を選びます」



 これからも海外に行く機会はますます増えるのだから、これからは飛行機に乗る時には、チケットの値段だけを見るのではなくて、ちゃんと発着時間も見るように、ちゃんとママを監視しなければいけませんね。


 それにしても、眠い……

 飛行機に乗り込んだら、さっさと寝てしまおう。



「ほら、環希ちゃん、ピアノがあるわよ。ママ撮ってあげるから聴かせて欲しいなぁ」



 なぬっ! 空港にピアノですと!?

 これはなにがなんでも弾かねばなるまい。


 ストリートピアノは、動画でも人気が出やすいからね。

 しかし、いまの時間は夜中で、周りにはほとんど人がいなかったよ……


 でも、ピアノがあるなら、弾かねばピアニストとは名乗れまい。



「しょ、しょうがないなー。一曲だけなんだからね!」



 Q なぜピアノを弾くのですか?

 A そこに、ピアノがあるから。


 うん、理由なんてこんなもんだ。






 ※※※※※※






「そういえば、優梨愛ちゃんは今年のRSKどうすんの?」



 ひと眠りして、ふと目が覚めて座席前面のモニターを見たら、沖縄近海を飛行中でした。

 成田までは、あと二時間弱といったところでしょうか?


 それで、みんなも起きていたので、これからの予定を、テニスのスケジュールを聞いてみたのです。



「どうするって言われても、うーん……」



 優梨愛ちゃんが悩んでいる理由には、見当が付いているのだよ。



「兵庫ジュニアトーナメントと日程が被るから悩んでいると?」


「そういうこと。いまさら国内の大会の関東予選から出場するのもね」



 まあ、そうなるよね。ITFジュニアサーキットで、海外の年上の選手相手にも勝ってポイントを獲得しちゃうと、実績についで自信も付くし、どうしても国内の大会を見る目は軽くなってしまうのだろうな。

 ましてや、全国大会の関東予選なのだから、なおさらなのかも知れない。


 つい先日まで、「緊張する、あたし勝てるかなぁ?」とかビビりながら言っていた、自身の姿を優梨愛ちゃんに見せてあげたいくらいだよ。

 ビデオで録画しておけば良かったぜ。


 SFまで勝ち進んだからなのか、自分に自信が持てるようになったのだろうなぁ。

 優梨愛ちゃんも、立派になったものです。


 しかし、関東予選に出場してくる選手は、ITFジュニアのG5だったら、ほとんどの選手がそこそこ通用する程度のレベルというのを、優梨愛ちゃんは見落としているよ。

 でも、あえて指摘するような無粋な真似はしないけどさ。


 私は空気の読める女を目指しているのですから!


 ……ん? 私はいま、なんて…思った?



「わたしも、優梨愛ちゃんの言いたいこと分かるわー。G5だったとはいえ、ITFジュニアで準優勝しちゃうと、関東予選とかって思っちゃうなぁ」



 ブルタース…じゃなくて、萌香ちゃん、おまえもか!



「それに、わたしも中牟田杯の関東予選と兵庫の二週目が被るんだよね」


「萌香ちゃんも日程が被っているの?」


「SFまで勝ち進んだらね」



 なるほど。もう既に萌香ちゃんは、兵庫国際ジュニアトーナメントに出場する気満々ということでしたか。

 そりゃあ、関東ジュニアランキングのポイントを貯めるよりも、ITFジュニアランキングのポイントを貯める方が、価値があるし良いに決まってるわな。



「二人は兵庫ジュニアトーナメントに集中しなさい」


「コーチ、いいのですか?」



 それで、先程から話題に上っている、兵庫国際ジュニアトーナメントは、当然ながら、ITFジュニアサーキットの大会でして、大会のグレードはG4。

 九月の一週目と二週目の、二週連続で、二回開催される大会なのである。G4だから、二人が昨日まで出場していた、シンガポールの大会よりもワンランク上の大会になります。



「兵庫の大会で好成績を上げれば、世界スーパージュニアにも出場するチャンスが生まれるわよ」



 そういえば、兵庫ジュニアトーナメントで活躍すれば、スーパージュニアのワイルドカードが貰えたような気もしたな。私の勘違いかもしれないけど。

 でも、ポイントは正直で嘘を吐かないのだから、兵庫の二週で好成績を上げれば、結果としておのずとポイントも増えて、スーパージュニアの予選に滑り込むことは可能なのかもしれない。



「スーパージュニアですか? さすがにまだ厳しい気がするのですけど?」


「スーパージュニアは、たとえ出れたとしても予選で敗退しそうだよね……」


「そうだな、厳しいだろうね。しかし、今は経験を積むことが大事なのよ」



 経験か、この秋は日本国内にいても、経験を積めるチャンスではあるんだよね。そう、秋には日本で開催されるITFジュニアの大会が数多くあるのだ。

 それに出場すれば、経験も積めて腕も磨けるという寸法なのだ。


 まあ、グレードの低い大会には、あまり海外からの有力なジュニア選手は来日しないから、日本人ジュニア同士での対戦が多くなって、あまり国内大会と変わり映えしなかったりもするのですが。

 そこは、ご愛嬌ってことで。当然ながら、GAの世界スーパージュニアは除く。


 でも、萌香ちゃんと優梨愛ちゃんは、まだ中三と中一なのだから、たとえ対戦相手が日本人ジュニアだとしても、年上のジュニア選手と戦うことは意義があるのだ。

 一番年上のジュニア選手は、高校三年生なのだから、優梨愛ちゃんよりも5歳も年上になるのです。そんな年上のジュニアと対戦すれば、年下の選手は得る物が大きいであろう。



「そういえば、スーパージュニアの翌週には、名古屋でジャパンオープンジュニアもあったね」


「環希の言うとおりね。大阪、名古屋と秋に大きな大会が控えているのだから、その前に兵庫で二週行われる大会はポイントを貯めるチャンスなのよ」


「なるほど、コーチの言うとおりですね」


「兵庫の二週で最低でも、20ポイントか30ポイントは上積みしたいなー」


「萌香ちゃんは、優勝して60ポイントげっちゅだぜ!とかは言わないんだね?」


「わたしは、たまきちゃんと違って謙虚に生きてますから」


「あはは、確かに環希は謙虚とは程遠い存在だよね」



 二人とも失礼な。私だってそこまで、悪役令嬢みたいな傲慢な振る舞いはしてないはずだよ。……してないよね?

 ちょっとムカついたから、今度、二人と対戦して勝ったら、「おーほほほ」とか高笑いしてやろうかしら?


相変わらずサブタイに悩む…


a 眠いよー!

b 子供の人権に配慮しよう

c ママを監視しよう

d いまさら

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