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1 2-1 40-30 迂闊だな


「ニワノさん、お元気でしたか?」


「あら? リーさん! お久しぶりです。ええ、おかげさまで元気でやっております」


「しかし、相変わらずお若いですね」


「嫌ですわ、こんなオバさんを捕まえて。私もあと二年で四十の大台なんですから」


「しかし、此処、シンガポールで貴女の顔を見れるとは幸運です」


「今回は、子供達の引率で来ましたの」


「引率? ニワノさんはジュニアのコーチを始めたのですか?」


「ええ、私の娘と、あと二人ばかりの小所帯ではありますけど」


「そういえば、娘さんは日本の小学生チャンピオンでしたな」


「娘のこと、ご存知でしたのね」


「さすがは、マドカ・ニワノのDNAだと、少しばかりシンガポールでも話題になりましたよ」


「それは光栄なことです」


「しかし、娘さんはまだ、ITFのジュニアサーキットに参加できる年齢には達してないですよね?」


「今大会に出場しているのは、娘以外の二人ですよ」


「なるほど、そうでしたか。その二人が大会を盛り上げてくれる事を期待しましょう」






 む? ママと話し込んでいる、油ギッシュなアジア版カーネルおじさんは誰だ?

 前世の記憶的に、どこかで見た覚えがあるけど、はっきりとは思い出せないな。


 まあ、あの二人のビジネスライクの距離感ならば、ママが取って食われる心配もなさそうだから、放置でもいいか。

 それよりも、優梨愛ちゃんと萌香ちゃんの応援をしなければ。



「二人とも、全日本ジュニアの準決勝とか決勝と思って戦えば、きっと想像よりも楽に勝てるはずだから、リラックスして頑張ろう!」


「アンタは出場しないから、気楽に言ってくれちゃって」


「でも、たまきちゃんの言うとおりの気がするから、なんとかなりそうかな?」



 うんうん、何事も為せば成るの精神だよ。






 ※※※※※※






「二人とも予選を戦ってみてどうだった?」


「思っていたよりも、相手が弱かったです」


「コーチが言っていたとおりでした」



 優梨愛ちゃんと萌香ちゃんは、無事に予選を通過することができました。

 それも、二人ともベーグルというオマケまで付けて。



「あなたたちは弱くない。今大会でも十分に戦えるわよ」


「「はい!」」


「それを理解したことが、予選での収穫だったわね」



 優梨愛ちゃんは、地元シンガポールの15才の選手を相手に、6-1、6-0の完勝。

 萌香ちゃんは、インドネシアの16才の選手相手に、6-0、6-0のダブルベーグルで圧勝しました。


 いくら予選だったとはいえ、ここまで相手を圧倒して勝利するとは思ってもいませんでしたので、私も少し驚きました。

 でもまあ、G5の予選ならば、日本のジュニアでも上位の実力がある二人に掛かったら、こんなものなのかも知れませんね。


 しかしこれで、予選を突破したことで落ち着けたと思いますし、この一勝で少しは海外の舞台でもやれるという自信も付いたことだろう。

 だから、本戦の前に予選を経験したことは良い経験だったのかも知れません。


 案外、いい線まで勝ち上がれる気がしてきたぞ。






 ※※※※※※






 シンガポールITFジュニアチャンピオンシップも、セミファイナルに差し掛かりました。

 本戦でも優梨愛ちゃんと萌香ちゃんは、アジアやオーストラリアの年上のジュニア選手を相手に奮戦して、ここまで順調に勝ち進んできました。


 萌香ちゃんは、R16で日本人選手との対戦があったりもしましたが。

 そう、この大会には二人以外にも、日本人の選手が5人出場しているのだ。おそらくみんな、夏休みを利用しての海外遠征なんでしょうね。

 考えることは、どこも似たり寄ったりということでしたか。


 約一名だけ、国籍は日本人だけど、英語圏の名前の選手をドローで見掛けて、一瞬、頭に?が浮かびましたけど、ハーフでした。

 お母さんが日本人で、どうやら海外在住の子みたいですね。

 テニスの日本人ジュニア選手の中には、ハーフの子もそこそこいるのです。


 他の競技でもそうですけど、ハーフやクォーターの日本人選手の活躍って結構多い気がしますね。

 ハーフとかの場合だと、もしかしたら運動能力に秀でる傾向が強いのかも知れません。


 あと、テニスの場合だと、もう片方の外国人の親がテニスが盛んな国の出身で、テニス好きだったりして、子供にテニスをさせ始めたとかでしょうか?

 テニスというスポーツは、元々、白人の上流階級に人気があるスポーツなのですよ。


 だから、トップレベルのプロの選手になると、スポンサーと高額の契約を結べたりもするのです。

 高級車や高級時計とかの需要は、お金を持っている富裕層以外には、ほとんど需要はありませんよね?


 つまり、テニスは富裕層に人気がある → 人気選手が宣伝している → ステータスで富裕層が欲しくなる。こういう図式ですね。


 それ以外にも、グランドスラムとかで活躍して人気が出れば、純粋?に、スポーツ用品メーカーとも、高額のスポンサー契約を結ぶことが可能になるのです。

 これは、あの選手が使っているから、僕も私も同じタイプの物を使いたいという、ファン心理で売り上げを見込んでのことでしょう。


 話がそれた。


 ここまで順調に勝ち進んだ二人は、ドローの関係で準決勝において、日本人同士での対戦をすることとなったのです。これは、潰し合いともいいますね。

 それで、もう既にゲームは終盤、大詰めを迎えています。






「くっ、しぶといわね」


「萌香さんこそ、そろそろ諦めて下さい」


「わたしは往生際が悪いのよ」


「それは同じく、あたしもです」



 お互いが目と目で火花を散らしながら、ラリーの応酬の最中に、目でこんな会話がされている気がしますね。



「これでどうだ!」


「くうっ」



 萌香ちゃんがリターンしたボールは、優梨愛ちゃんのバックハンド側のベースライン深くを抉った。

 優梨愛ちゃんは体勢を崩しながらも、辛うじてリターンできたけど、そのリターンはロブ気味になってしまい、相手コートに戻ったボールは浅くて甘かった。


 萌香ちゃんからしてみれば、これは、ややチャンスボールと言えるだろう。

 逆に、優梨愛ちゃんからしてみれば、リターンを自分でコントロールできなかった、ただ単に返球しただけの死んだ球である。


 その浅めのチャンスボールに対して、萌香ちゃんが前に出てくる。

 優梨愛ちゃんは体勢を立て直して、必死にレシーブの態勢を整えようとする。


 あっ、優梨愛ちゃん、ソレに対して迂闊に前に出たら……



「これで、とどめだ!」


「くっ」



 あーあ…… まあ、そうなるよねぇ。


 優梨愛ちゃんがドロップショットを警戒したのか、やや前に出てきたところで、彼女のバックハンド側の脇を抜ける、萌香ちゃんの強烈なパッシングショットが決まったのだった。




「よっしゃぁー!」



 これで、優梨愛ちゃんは、ジ・エンドである。


 優梨愛ちゃんがボレーで返せなかったのは、コート中央に斜めで走り込んでいたからで、そこに萌香ちゃんが、優梨愛ちゃんのバックハンド側にリターンしたものだから、優梨愛ちゃんは咄嗟には反応できなかったのだ。

 図にしてみますと、↙萌香リターン。↗優梨愛進行方向。


 ↙

 ↗


 こんな感じですね。やや斜め右前方に走り込んでいる優梨愛ちゃんに対して、萌香ちゃんもやや斜め右側(優梨愛ちゃんから見たら、斜め左下方向)に、リターンを打ち込んだのだから、優梨愛ちゃんが対処できないのも無理はない。

 ベクトル的に反対側に作用する力には、対処するのは難しいのである。


 ちょっと分かり難かったかな?



「ゲーム、サカマキ! 2セットトゥ1、6-4、5-7、7-6!」


「くっ、負けた……」


「ナイスゲームだったね、優梨愛ちゃん」


「萌香さんナイスゲームでした。決勝も頑張ってください」


「頑張るけど、今日のダメージでヤバい気がするよー」


「たしかに、疲れましたね」



 これが、年の功…二年の経験の差なのか、萌香ちゃんが、6-4、5-7、7-6(8)というフルセットの、最後はタイブレークという接戦の末に、優梨愛ちゃんを降して、決勝へと駒を進めたのです。

 試合時間も二時間半近くに及んだ大激戦でした。


 しかし、萌香ちゃんもこの激戦の疲労が抜けきれなかったのか、優梨愛ちゃんに勝って満足してしまったのかは謎ですが、決勝では、タイの選手にストレート負けを喫してしまったのでした。

 でもこれで、萌香ちゃんは準優勝で18ポイント、優梨愛ちゃんもSF進出で9ポイントを獲得できましたので、ITFジュニアサーキット初参加にしては、二人とも上出来の成績を残せたと思います。


 二人は帰国して全中が終わったら、ビーンズドームで開催されるG4の大会に参加するのかな?

 でもそうなったら、優梨愛ちゃんはRSKの関東予選とバッティングすることになるな。優梨愛ちゃんはどちらを選ぶのだろう?


試合描写が難しいよー

端折りすぎるとテニス小説?ってなりそうだし

一球一球書くと単調になりやすい上にクドイし、というか無理。むーん…

そうだ! サーキットで各地を巡る旅小説にしよう!(錯乱

でも、いままでも似たようなモノだったかもw

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