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237話 少しは見直したか?


「──俺も来週には、日本に行く予定にしているんだが?」


「え? ナニをしに日本へ来るの?」



 日本の可愛いお姉ちゃんをナンパするために来るのでしょうかね?

 サナダさんだったら、その可能性も捨てきれませんし。


 そういえば、昔の話なんだけど、


『日本の女は尻軽のビッチで直ぐやれるから、日本に行ってナンパしてやりまくるぜ!』


 とか、SNSに投稿したアメリカ人かカナダ人が日本のイミグレで入国拒否されたとか、ニュースになっていたような気がしましたね。


 公然と日本女性を、尻軽のビッチ呼ばわりするような人物を日本に入国させるのは、受け入れ難い好ましからざる人物ということで、空港から出さずにそのまま送り返されたのかな?

 たぶん、外交官のペルソナ・ノン・グラータみたいなモノだったのでしょう。


 サナダさんも十分に気を付けてくださいね?


 だけど、尻軽のビッチやイエローキャブと呼ばれるのには、それなりの理由もあるんですよね。

 ほら、火のない所に煙は立たぬとか、昔の偉い人も言っていたでしょ?


 まあ、一部の少数の人が行った事例で、その人が所属している国や団体の好悪が印象付けられるというのは、古今東西よくある話なんだけど、その他大勢の関係ない人達まで同じ印象を持たれるのは、なんか納得がいかなくてもにょもにょとしますね。

 しかし、人間という生き物は、認知バイアスや集団バイアスからは逃れられない、そういった程度の生き物なのかも知れません。


 なるほど、だから差別やイジメがなくならないのだな。

 一つ勉強になって賢くなったよ。


 もっとも、私も独断と偏見と屁理屈が大好きなんですけどね!



「ナニをしにって、タマキの練習に付き合う以外にないだろーが」


「そうだったの?」


「なんだ、タマキは知らなかったのか?」



 そんな話は知らんがな。



「うん、サナダさんが日本に来るだなんて聞いてないよ」


「すみません、環希ちゃんに伝え忘れていました」



 なるほど、犯人は麻生さんでしたか……


 完璧な秘書に見える麻生さんでも、うっかり忘れることもあるんだね。

 人間らしくて、ちょっと安心しました。


 もっとも、頻繫にうっかり忘れられたりするのも、それはそれで困りますが。

 まあ、麻生さんなら大丈夫でしょ。


 私のほうが麻生さんの報告を聞き流して、話を忘れていることが多いですしね。



「まあ、サナダさんが来てくれるというのであれば、クレーコートシーズンに向けての練習も捗るから歓迎なんだけど、たぶんママには会えないよ?」


「なん…だと!?」


「来週は大阪で25kがあるから、ママはそっちに行っちゃうんだよね」


「マドカさんに会えないんだったら、日本に行くのやっぱヤメよっかなぁ~」



 頭の後ろで腕を組んで、明後日の方向を向いて拗ねた振りをするだなんて、サナダさんは大人げないですね。

 四十手前の大人の男性がする態度とは、とても思えません。



「どうやら、マイケルは責任という言葉を知らないみたいですね」


「アソーさん、冗談だってば」



 サナダさんが言うと冗談には聞こえないと思えるのは、きっと本人の信用の問題なんだろうね。

 まあ、口に出してまで指摘するような野暮な真似はしないけどさ。



「というか、サナダさんってクレー得意だったっけ?」


「クレーはそこまで得意ではなかったけど、チリとスウェーデンの250で優勝しているよ」


「チリはドバイとアカプルコ500が開催されている週と同時開催ですし、スウェーデンの250はウィンブルドンの翌週で、有力選手の出場は少ない大会ですね」


「つまり、裏開催じゃん!」



 ランキング30位以上の選手が出場しているのかどうか、かなり怪しい感じがしますね。

 優勝賞金と同額か、それ以上のアピアランスフィーを出さないと、有力選手は出場してくれなさそうな気がするよ。



「スウェーデンの大会が開催される週は、他でも250が二大会ありますし、クロアチアオープンの方がレベルが高いですから、完全に空き巣狙いですね」


「そうとも言うのかも知れんが、それでも優勝は優勝だ」


「それはそうなんだけどさぁ」



 まあ、裏開催であろうと空き家狙いであろうと、クレーのATP250で優勝したという実績は事実だわな。

 でも、なんとなく釈然としないモノを感じるのは、私が捻くれているからなのかな?



「私が自分で言っておいてなんですが、マイケル以外の過去に優勝した選手に対して失礼でしたね」


「俺はいいのかよ!」


「なにか問題でも?」


「い、いえ、ナニモ……」



 うわー、麻生さん強いですね。

 それに比べて、サナダさん弱っ!



「それよりも、クレーのATP500以上の大会でのサナダさんの成績はどうだったの?」


「ATP500は、リオ・オープンでファイナルまで進出しているし、バルセロナとハンブルクではセミファイナルまで進出したこともあるぞ」


「クレーの500で決勝進出は凄いじゃん!」


「ふはははは、少しは見直したか?」



 トップ20の選手があまり出場しないATP250と、トップ選手の大半が出場するATP500とでは、一勝の重み価値が違うんですよね。

 まあ、その価値の違いがポイントの違いにも表れているんだけどさ。



「でも、サナダさんのキャリアハイって38位だったよね? 成績の割にはランキングが低すぎない?」


「それらが全部、同じ年で達成した成績だったら、マイケルもトップ20に入れたのでしょうね」


「まあ、ドロー運とか巡り合わせが悪かったんだよ」



 それはあるのかもね。ドローの組み合わせって、とっても重要ですから。

 ほら、私のマイアミオープンでも、有力選手の大半は反対の山に入ってお互いに潰し合ってくれたから、私が楽できたというのも優勝する上で大きかったと思いますし。



「マスターズ1000のマドリッドやローマは?」


「モ、モンテカルロなら、クォーターファイナルまで進出したことあるよ!」



 なぜ、突然、不審者みたいに挙動不審になっているのでしょうか?

 それに、答えを若干はぐらかされたような感じがしますね。



「モンテカルロはベテランのトップ選手は休むじゃん」


「そうですね、モンテカルロは家主不在の年が多いと思います」


「それに、英語圏の人は、なんでもかんでも単語の後ろにファイナルって付ければ、箔が付くとでも思っているのかな?」



 まあ、クォーターファイナルって響きは格好良いとは思うけどさ。



「日本語だって、準決勝、準々決勝って言うじゃねーか!」


「まあ、そうなんだけどさ。それで、マドリッドとローマにローランギャロスでの成績は?」


「マドリッドとローマはR16が最高で、ローランギャロスはR32が最高成績だよ」



 なるほど、最低でもクォーターファイナルって言えない成績だから、口ごもったということでしたか。

 サナダさんは娘の私に対して、ええかっこしいを見せたかったのですね?


 子供相手に見栄を張りたがるだなんて、サナダさんも精神年齢は子供ですね!



「サナダさんのクレーでの実績は分かりました。それでは、また来週からお願いしますね」


「ああ、タマキが充実したクレーコートシーズンを送れるように、俺も頑張るよ」



 私のクレーの実力がどれくらいなのか、私自身でもちゃんと把握してないんですよね。

 だから、クレーコーターを相手にして、どこまで通用するのかは、かなり未知数だと思います。


 ハードコートのように、そう簡単には勝たせてもらえなさそうな気がしますね。



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