230話 マイアミオープン決勝
WTAマンダトリー1000 マイアミオープン 決勝
「とぅ」
「ゲーム、ニワノ! フォゥゲームストゥツゥ!」
よっしゃ! ラブゲームでキープだぜぃ!
私が放ったアドサイドからのサーブは、サイドラインの手前で跳ねて斜めに逃げて行き、相手は一歩も動くことなく、その逃げて行ったボールを見送ることしかできませんでした。
「ニューボールプリーズ」
マイアミオープンも順調に勝ち上がって、無事に決勝まで駒を進めることができました。
いやー、ここまで順調に事が運んでいると、どこかに落とし穴がありそうな気がして、逆に怖いですね。
マンダトリー1000大会で連続しての決勝進出とか、出来すぎだよね?
しかし、変なフラグが立ちそうだから、あまりネガティブに考えるのは止めにしておきましょう。
私が己の実力を発揮したから、それに対して勝利という結果が後から付いてきたのだと、そう素直に受け取っておきましょう。
それで、二回戦のR64は、イギリスのクレア・スチュワート選手を相手に、6-3、6-2のストレートで勝つことができました。
スチュワート…… ご先祖は執事だったのかな?
三回戦のR32は、ニュージーランドのオークランド250の決勝で対戦した、地元アメリカのステファニー・キングストン選手との再戦となりました。
そのキングストン選手を相手にして、6-4、6-1と危なげなく勝利して、四回戦に進出。
四回戦のR16は、ランキング23位のフランスのリュシール・デュパンという選手が相手でした。
そのデュパン選手を相手に、6-1、6-1のダブルポッキーで圧勝して、QFのベスト8へと駒を進めました。
そして、準々決勝で対戦したのは、イタリアのサラ・ベルナルディ選手との今年に入ってから三度目の対戦となりました。
なんとなく、ベルナルディと対戦する回数が多い気がしますね。
そして、ベルナルディとの三度目の対戦も、私が6-3、6-3と完勝することができました!
ハードコートだったら、もうベルナルディ選手に負ける気がしませんね。
まあ、ベルナルディの得意なサーフェイスはクレーコートなのだから、クレーで対戦したらまた違うのかも知れないけど。
そして、セミファイナル準決勝で対戦したのは、私が勝ち上がってくるだろうと予想していた、チェコのポ、ポス…ポスピシロヴァ選手じゃなくて、ポはポでもポーランドのマヤ・ポニャトフスカ選手でした。
そのポニャトフスカ選手はノーシードから勝ち上がってきた、ランキング40位台の選手だったので、6-1、6-0と虐殺しちゃいました。てへっ。
まあ、ベスト8でポスピシロヴァ選手と死闘を演じていたので、ポニャトフスカ選手にはもう余力が残っていなかったんだろうなぁ。
私がベスト8でポニャトフスカ選手と対戦していたら、こんな圧倒的なスコアでは勝てなかったと思います。
それで、今日の決勝の相手は、クリスかシュタイナーになると予想していたんだけど、世界ランキング5位で地元アメリカのモジッチ選手が対戦相手でした。
ベスト8でクリスはモジッチに、シュタイナーはアレンスカヤに敗れて、二人とも不覚を取ってしまったんや……
しかし、テニスでは個々の勝敗の予想が外れるのは、テニスあるあるで、よくあることなんですよね。
それに、アレンスカヤもモジッチも実力のあるトップ10選手なのだから、クリスとシュタイナーが負けることもあるのでしょう。
それと、クリスは怪我からの復帰戦だったしね。
それで、モジッチがアメリカ人ということは、この決勝戦は完全にアウエーということになります。
でも、私もアメリカ国籍は一応持っているんやで?
まあ、私の場合は日本人でもあるし、日本の所属でプレーしているのだから、なんちゃってアメリカ人なんだけどさ。
もっとも、私が14歳という若さで大人顔負けの活躍をしているから、私に対する声援もかなり多かったりもするのですよね。
それに、私が庭野まどかの娘であるのもプラス要素だと思います。
あと、モジッチという名前が、アメリカ人には馴染みがないから、あまりモジッチがアメリカ人と思われてないとかもあるのかな?
それで、今日の決勝戦ですけど、もう既に第1セットは6-4で私が取っています。
そして、第2セットもここまで4-2とワンブレイクアップとリードしている状況になります。
前回、インディアンウェルズの準決勝で対戦した時と比べたら、今日のモジッチには身体のキレがイマイチないように感じられますね。
フォルトやアンフォーストエラーも多いですしね。
これは、準々決勝と準決勝で、クリスとアレンスカヤを相手にフルセットまで戦った、その疲労の蓄積が微妙に影響しているのかも知れません。
二時間半近くの試合を連続してプレーするのは、結構しんどいですからね。
そら、女子が5セットマッチをやらないわけだよ。
その昔、一時期にせよ女子もファイナルズの決勝だけは、5セットマッチで開催していたみたいだけど、評判が悪くて3セットマッチに戻しているもんね。
そう考えると、男子のグランドスラムの5セットマッチでフルセットまで縺れる試合ばかりだと、身体へのダメージが凄いことになるんだろうなぁ。
フルセットを連続して戦った選手の次の試合の勝率って、かなり低そうな気がしますね。
三試合連続でフルセットを戦った場合は、次の試合ってほぼ負けているんでないかい?
つまり、グランドスラムで上位に進出するためには、如何にして3セットで試合を終わらせられるのか、それが鍵になってくるのだと思います。
というか、私は女子なのだから、男子テニスの話は畑違いでしたね。
※※※※※※
ズムズム実況
「ワイドにエースが決まり、このゲームを庭野がラブゲームでキープしました! ゲームカウント4-2と庭野がリードして、第2セットも終盤を迎えます」
「マイアミオープンの優勝まであと2ゲーム、庭野選手には勝ち急がずに落ち着いてプレーしてもらいたいですね」
「勝ちを急がずに、ですか?」
「はい、勝利が目前に迫ってきますと、どうしても色々なことが頭をよぎったりもするものですから」
「俗に言う、勝ちビビリの症状とかでしょうか?」
「そうですね、勝ちビビリも勝ちを急ぐあまり出てくる症状の一つだと思います。私も現役時代には何度も経験したものです」
「安達さんでも、そんな経験があるのですね」
「そりゃ私も人間ですから、内面が揺らぐ事もありますよ。特に大きな大会や強豪選手が相手の試合では、あと1ゲーム、あと1ポイントで決勝進出や優勝できるとかになった場合は、いつも心臓がバクバクしていましたね」
「現役時代、強心臓ぶりを発揮していた安達さんの知られざる一面が垣間見られた気がします」
「それだけ、テニスはメンタルの影響を受けるスポーツなんですよ」
「それは良く耳にする言葉で、私も数多くのテニスの試合を実況してきましたが、その経験を踏まえますと実際にそうなのでしょうね」
「もっとも、環希ちゃんには勝ちビビリも、あまり関係なさそうでしたね」
「安達さんと話しているうちに、庭野のリターンエースが決まっていました!」
「モジッチ選手の甘く入ったセカンドサーブを、庭野選手は見逃しませんでしたね。さすがです」
「今日の試合、モジッチがセカンドサーブでポイントを取る確率がかなり低いのが、サマリーからも見て取れます」
「モジッチ選手は、ダブルフォルトするのを覚悟して、セカンドファーストを入れていったほうが、もしかしたら良い結果に繋がっていたかも知れませんね」
「それは、なかなかハイリスクで難しい選択になりそうですね」
「セカンドファーストが成功する確率は低いかも知れませんね。しかし、どこかで勝負を仕掛けなければ、このままだとモジッチ選手はジリ貧ですよ」
「それだけ、日本の庭野が有利に試合を進めている証拠なのでしょう」
「そうなりますね。モジッチ選手はこのゲームを踏ん張れるかどうか、それがこの試合の勝負の分かれ目になるのではないでしょうか?」
ひさしぶりにテニスの試合をしている…のかな?




