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218話 あの後ろ姿は見覚えがあるぞ


 庭野環希@tamakiniwano - 3月20日

 マイアミの日本食レストランに行ってきました♪

 ひさしぶりにちゃんとした日本食を食べれたので幸せなひと時でした(*´ω`*)


 和食パワーでマイアミオープンを頑張るぞ!


 センシティブな内容が含まれている可能性のあるメディアで

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 □ 124    ↱↲ 3.8万    ♡ 22.5万    ⇧




 ※※※※※※




 マイアミ キー・ビスケーン島 クランドン・パーク・テニスセンター




「おんや? あの後ろ姿は見覚えがあるぞ」



 私がマイアミオープンの試合会場にある練習コートに行くと、隣のコートに先客がいました。

 180cm近くはあるだろう背の高いスラっとしたファッションモデルのような体形で、透き通るような白い肌に、プラチナブロンドのポニーテールが揺れています。


 そう、アナスタシア・トハチェフスカヤを発見したのです。

 というか、アナスタシアは髪形を変えたのね。似合ってるじゃん。


 でも、なんで此処に居るのでしょうかね?



『アナスタシアじゃん。ひさしぶりだねー、元気にしてた?』


『タマキ、ひさしぶりね。昨年のペキン以来だから五ヶ月ぶりぐらいかしら?』



 アナスタシアが北京と言ったのは、ジュニアマスターズのことです。

 つまり、ジュニア選手のファイナルズですね。



『みんなで一緒にチャイナドレスを着て写真撮ったよねー。アナスタシアも似合ってたよ』


『私としてはコスプレさせられた気分だったけど、まあ、チャイナドレスも案外悪くはなかったわね』



 うむ、アレはいいモノだったよ。眼福かな。

 それに、ちょっと照れてモジモジしながら、チャイナドレス姿をした自分を思い出しているアナスタシアちゃんも可愛いですね!


 眼福かな。



『それで、アナスタシアはこんなトコでなにやってんの?』


『なにやってんのとは、タマキも失礼な言い方ね』


『でも、ITFの25kや40kとかを回ってポイント貯めなくてもいいの?』


『私もマイアミオープンに出場するから、此処にいるのよ』



 なんですと?


 アナスタシアもマイアミオープンに出場しているとは知らなかったよ。

 フロリダはアナスタシアの拠点だし、誰かのヒッティングパートナーとして呼ばれたから、この場所にいるモノだとばかり思ってたわ。



『あれ? もう出場できるランキングまで上げてきたの? 随分と早いね』


『そうであれば良かったけど、今回はワイルドカードでの出場よ』


『ああ、なるほどねー』



 ということは、アナスタシアのランキングは本来であれば、WTAマンダトリー1000大会であるマイアミオープンには出場できない、もっと下のランキングということでしたか。



『というか、タマキはドローぐらいちゃんと確認しなさいよ』


『私がどの山に入ったのかと、シード選手ぐらいしかチェックしないからなぁ』


『タマキらしいわね』



 本戦に出場する96人全員を把握するのは、さすがに面倒なんだよ。

 それに、私はボトムハーフでアナスタシアはトップハーフだから、ドローも反対の山ということで余計にアナスタシアを探し難いんだよね。



『まあ、私もあと50ポイントぐらい稼げれば、グランドスラムの予選には入れそうだから、ここまで順調ではあるんだけどね』


『今のアナスタシアのランキングって何位なの?』


『先週の時点で273位だったかな?』



 そら、ワイルドカードでしかマイアミオープンに出場できませんわな。



『おー、ローランギャロスの予選に間に合いそうな順位じゃん!』


『そうね、1月のベロビーチの60kで優勝できたことが、ポイント的にもかなり大きかったわ』


『え? アナスタシアってもう60kでも優勝を経験してたんだ』



 ちっとも知らなかったよ。そら、ランキングも273位まで上がってくるわな。

 さすがにアナスタシアは、私が認めただけの実力の片鱗をみせたということなのでしょう。


 五年後とか将来的には、グランドスラムの決勝でアナスタシアと対戦している可能性も、あり得る未来なのかも知れません。

 まあ、私がボコってあげるんだけどね!



『なに? タマキは私が60kで優勝したこと知らなかったの?』


『ごめん、ITFサーキットの試合は、優梨愛ちゃんと萌香ちゃんの結果しかチェックしてなかったからなぁ』



 アナスタシアとはラインやメールとかのやり取りもしてないから、私が知らなくても仕方ないんだよ。

 それに、アナスタシアはまだSNSもやってないみたいだし。



『ユリアとモエカ? ああ、サトダとサカマキの二人のことね』


『うん、私のママがコーチをしているし、二人は同じチームに所属しているからね』


『そういえば、サカマキは私よりも少し上のランキングに位置してたわね』


『うん、萌香ちゃんも頑張っているんだよ』



 でも、だからといって、優梨愛ちゃんが頑張ってないとは言ってないよ?



『まあ、1月は全豪オープンとかあって、ランキング100位台の選手もオセアニアに遠征していたから、60kに出場していた選手のランキングが低かったのも、私がベロビーチで優勝できた要因だとは思うけどね』



 グランドスラムが開催される月は、ランキング230~240位ぐらいまでの上位選手がこぞって不在になるもんね。

 だから、その間に他で開催される25kや60kの大会は、狙い目ということになります。


 萌香ちゃんも、全豪オープンでランキング150~200位前後の選手が不在だったから、それでシンガポール25kを優勝できたようなモノだと思いますので。


 グランドスラムの場合、たとえ予選の一回戦で負けたとしても、日本円で300万ぐらいは賞金が貰えるので、ITFサーキットのドサ廻りをしているランキング下位の選手にとって、グランドスラムは重要な稼ぎどころになります。

 それに比べてITFの25kは優勝しても、3,935ドルしか賞金が貰えないもんね。


 そら、グランドスラムの予選に出場できるなら、みんなグランドスラムの方に出場しますわな。

 ランキング下位の選手は貧乏暇なしで、みんな生活が掛かっているのだから。


 もっとも、予選カットラインのボーダーライン上の実力しかない選手は、グランドスラムで予選を突破して本戦に出場しないことには、ポイントの面で後々遅れを取ることになりかねません。

 グランドスラムが開催されている裏で、セコセコとドサ廻りでポイントを積み重ねた選手に、ランキングで追い抜かれてしまい、翌年のグランドスラムの予選には出場できなくなるとかの悲劇も、よくある話みたいですし。


 結局のところ、グランドスラムの本戦にダイレクトインできる実力を付けないと、プロの世界で生き残るのは厳しいということであります。



『相手関係を見極めて、相手が手薄そうな大会に出て着実にポイントを積み重ねるのも重要なことで、戦略の一つだと思うよ』


『あはっ、タマキは私のコーチと同じことを言うのね』



 名コーチ庭野環希と呼んでくれたまえ。



『でも、アナスタシアのランキングで、マイアミオープンみたいな大きな大会のワイルドカードを、よく出してもらえたよね』


『あー、たぶんそれはね、私がIEMに所属しているからだと思うよ』


『そっか、マイアミオープンはIEMが大会の運営をしているんだっけ?』


『そーゆーこと』



 アナスタシアがIEM一押しの期待の若手選手だから、将来の活躍を見越してのワイルドカードの発行ということなのかな?

 つまり、縁故ワイルドカードということですな。


 まあそれでも、アメリカで開催される大会で、ロシア人のアナスタシアがワイルドカードを貰えているのだから、文句を言ってくる人は少ないでしょう。

 ランキングの低いアメリカ人の選手だけに、ワイルドカードを乱発すれば、色々な方面からの反発は必至でしょうから、それを取り繕う調整の意味も兼ねて、アナスタシアが選ばれたような気もしますが。


 まあ、うがったモノの見方のような気がしないでもないけどね。


 IEMとは、インターナショナル・エンターテインメント・マネジメントの略で、国際的に色々なイベントの管理運営をしているマネジメント会社のことです。

 そして、世界中の多数のアスリートやアーティストとマネジメント契約を結んでいて、その影響力は絶大といっても過言ではない組織が、IEMなのであります。


 ちなみに、ママが現役時代にIEMに所属していた縁で、私にも所属しないかと声が掛かったけど、保留にしてあります。

 まあ、そのママのコネで昨年の夏には、IEMのテニスアカデミーで合宿をさせてもらえたのだから、IEMには感謝しているんだけどね。


 しかし、私がIEMに所属するかどうかは、また別の問題であります。

 もっとも、ママと麻生さんだけで、私のマネジメントが回らなくなったら、IEMに所属するのも一つの手だとは思います。


 長い物には巻かれろ、寄らば大樹の陰とかの格言もあることですしね。



ひさしぶりにアナスタシアが登場しましたw

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