217話 パパ活!
「──これから、サナダさんをパパって呼ぶことに決めたわ!」
たまきちゃん、パパ活に精を出すの巻でござる。
でも、パパ活で精を出すのは、パパの方でしたか?
そう、ドピュ的な精の意味において……
つまり、パパ活女子というのは、パパからお金も精も搾り取る、小悪魔的な存在だったんだよ!
ええ、けして、パパ活を売春とか非合法な言葉で呼んではいけません。
たまきちゃんとの約束だぞ☆
日本の法律とは、刑法よりも都道府県の青少年なんちゃら条例の方が優先されるらしいですからね。
きっと女子中高生には良い時代なんだろうね。たぶん。
いや? パパ活に精を出さないと、物質的に豊かな生活が送れないのだとしたら、それは不幸な時代が正解なのかな?
というか、私も現役の女子中学生だったよ。
しかも、パパ活に精を出している真っ最中でしたよ……
もっとも、サナダさんって遺伝子的には、私の本当の父親なんだから、パパ活なのかどうか微妙な気もしますね。
それはそうと、援助交際という言葉はドコに消えたんだ?
パパ活という、おためごかし誤魔化しの言葉遊び、まやかしで消えてしまいましたかそうですか。
まあ、パパ活には健全な?デートだけのパパ活も含まれていますので、色々な面で都合がよいのでしょう。
そして、人類の歴史上、おそらく最古の職業を取り締まるのは、お上でも無理だと悟ったのかも知れません。
つまり、人間の根源に根差しているモノを、後付けの倫理では縛れないということですな。
需要と供給、経済の原理原則だもんね。
まあ、取り締まるのであれば、女衒みたいな行為をしている輩を、もっときっちり取り締まってもらいたいとは思いますが。
他人のふんどしで相撲を取るとか、他人の上前をはねる行為とかって嫌いやねん。
だけど、そんなのが大手を振ってまかり通っているのが、いまの世の中なんだよね。
汗水たらして働くのが馬鹿らしくなる社会というのは、そのうち衰退するんでないかい?
もっとも、私も上前をはねる側の人間なのがなんともはや……
話が脱線しましたね。
「そんな目を$マークにしてパパと呼ばれても、ちっとも嬉しくないんだが?」
「いや、お金は大事だよ?」
そう、世の中の一定数の女性がパパ活に精を出すぐらいには、お金というモノは人間が文明社会で生きていく上で重要なモノなのですから。
「まあ、金持ちとはいっても、下から数えた方が早いビリオネアなんだけどな」
「セブンビリオンは真ん中よりも上ではないでしょうか?」
セブンビリオン? えーと…… 70億ドル!?
資産70億ドルで、中の中か中の上ぐらいのお金持ちランキングとか、アメリカの金持ちって半端なくエグいわ……
日本だったら、おそらくトップ10に入れる資産なんだよ?
もっとも、世界トップクラスのビリオネアというのは、資産3000億ドルとかある桁違いの大富豪だから、70億ドル程度では霞んでしまうのだろうなぁ。
3000億ドルとか、日本の国家予算の1/3ぐらいの金額になるんだよ?
アメリカでも連邦予算の1/10近くにはなるのではないでしょうか?
小国だったら、売国奴が国ごと身売りしちゃいそうな金額だと思います。
つまり、上には上がいるということですね。
「それを言ったら、アソーさんの実家も似たようなモノだろーが」
「ほら、私は実家から半分勘当されているようなものなので」
「俺も似たようなモノだぞ」
「そうでしたね」
そういえば、麻生さんは麻生製薬のご令嬢でしたね。
もっとも、麻生さんはご令嬢って呼ぶ歳ではないと思うけど……
まあ、麻生さんが怖いから、口には出さないけどさ。
私は空気の読める子なんですよ。
「ちなみに、マイケルのお財布の紐は、両親とお姉さんにしっかりと握られています」
「つまり……?」
「マイケルが自由に使えるお金はないということですね。過去にやらかしてもいますし」
あー、そういうことね。サナダさん自身がお金持ちというわけではないということでしたか。
ちっ、使えねーな。
というか、私の周りにいるお金持ちの息子娘って、やらかすのがデフォなの?
「やっぱ、サナダさんをパパって呼ぶのやめることにするわ」
「手のひら返しはやっ!」
手のひらとは返すモノなんだから、べつにいいんだよ!
「というかなんで、アソーさんが知ってるんだよ」
「エミリーに教えてもらいましたが?」
「そういえば、アソーさんと姉貴は繋がっていたんだったな」
なるほど、サナダさんのお姉さんの名前は、エミリーさんというのね。
というか、エミリーさんは私の伯母さんになるのか。会ったことないけど。
もしかしたら、私が赤ちゃんの時には会っているのかな?
でも、私の記憶にはないから、ノーカウントということで。
「定期的にレポートを送るのもお願いされていますよ」
「怖っ! 勘弁してくれ……」
「ダメですよ。マイケルの監視の意味合いもあるのだから」
「オー、ジーザス……」
「過去にやらかした、マイケルの自業自得ですね」
うん、さすがにそれはサナダさんに同情するかな?
まあ、やらかしているみたいだから、ほんのちょっぴりだけですけど。
「あ、そうだ、将来的にシュレジンガーの資産の半分、35億ドル分ぐらいはタマキの相続分だから、ちゃんと覚えておけよ」
「えっ?」
なん…です…と!?
それってつまり、私がシュレジンガーリゾートの共同オーナーに将来なるということなのか? そうなのか?
オーナー…… 良い響きですね。
そうかぁ、小江戸温泉リゾートもオーナー特権で泊まり放題なのかぁ。
35億ドルもあれば、ビジネスジェット機もプライベートジェットとして、気軽に保有できちゃうのかぁ。
ぐへ、ぐへへ……
パパ活たまきちゃん復活しちゃうぞ☆
「やっぱ、サナダさんをパパって呼ぶことにするわ」
「手のひら返しはやっ! 目が$マークに戻ってるし!」
「ふふっ、環希ちゃんらしいですね」
手のひらとは返すモノなんだから、べつにいいんだよ!
それに、お金に貴賤はないんだよ! 文句あるか?
ないよね?
ええ、35億ドルを目の前にしたら、私のちっぽけなプライドなんか、ゴミ箱にポイっですよ。
プライドでは腹は膨れないのだよ、腹は。
俗物、即物、大いに結構! オーチンハラショー!
というか、尻尾を振らないでいられる人間は、一定以上の資産を有している豊かな人だけのような気がしますね。
あれ?
つまり、サナダさんを振ったママは、プライドが高いということになるのか?
もしくは、足るを知るなのか身の程を知っていて、自分を弁えているのかも知れませんね。
だけど、ママのことだから感情的になって、というのもありそうですね……
うん、こっちが限りなく正解に近いんだろうなぁ。
それにしても、ママに種付けしたサナダさんに感謝する日が来ることになるとは、思いもしなかったよ。
まあ、私がこの世に生まれてくる切っ掛けというだけでも、一応は感謝しているんだけどね。
「私たちとは住む世界が違う話みたいで、全然ついてけませんよぉ」
「そうでござるな。少しばかり裕福な程度の庶民が一番でござるよ」
それって、そのまんま純ちゃん自身のことだよね?
まだ私も、うさみんと純ちゃんたちと同じ側だよ?
でも、よくよく考えたら、純ちゃんって勝ち組だよなぁ。




