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212話 庭野環希 ズムズム独占インタビュー

いきなり環希ちゃん負けてたでござるの巻


「庭野選手、インディアンウェルズ準優勝おめでとうございます」


「いやいや、負けたのだから、ちっともおめでたくはないですよ」



 インディアンウェルズ大会の決勝戦が終わったその日の夜、ズムズムのインタビューを受けているところです。

 明日の朝には、次の大会の開催地であるマイアミに向かって移動します。


 そう、私は決勝でシュタイナー選手に6-4、5-7、4-6の逆転で負けちゃったんですよね。


 ママの予想したとおりの結果になっちゃったので、ちょっとだけムカつきましたけど。

 まあ、ママのコーチとしての選手を見る眼、これが確かだったのだと思い知らされたともいいます。


 普段はポンコツのクセして、テニスに関してだけは有能なんだから!

 まったく、ぷんすかぷんであります!


 しかし、マンダトリー1000大会で準優勝したことによって、650ポイントを貰うことができ、ドバイ500までに稼いだポイントである910Pと合わせて1560Pとなり、ランキングも63位から一気に27位まで順位を上げることができたのです。


 そして、インディアンウェルズ大会の準優勝の賞金は、約105万ドルになります。

 これにスポンサーからのボーナスである、100万ドルも加わりますので、合計で205万ドルを稼いだことになります。


 いやー、シュタイナーに負けたことは悔しかったけど、稼ぎだけをみたら笑いが止まりません。

 もっとも、優勝していれば合計で、400万ドル貰えてたんだけどね。ちくせう。


 それにしても、もうランキング27位ですか。

 あっさりと、グランドスラムでシードが貰える順位に入れちゃいましたね。


 うん、順調すぎて怖いぐらいですよ。

 昨年のスペインでの出来事みたいに、好事魔多しなんてことにはならないよね?



「しかし、庭野選手の14歳という年齢で、マンダトリー大会であるインディアンウェルズでの準優勝は率直に言って、凄いことなのでは?」


「うーん、まあ確かに私ぐらいの年齢でいったら、WTA1000クラスの大会で決勝に残った選手は、過去に数人いたかいないかという感じだから、凄いのかな?」



 その数人いるはずの選手は、その後いずれもテニスの歴史に名を残している名選手に成長しています。

 つまり、私もそんな名選手の仲間入りする資格を手に入れたということになるのかな?


 まあ、14,5歳という若い頃から、ツアーの大きな大会の決勝まで勝ち上がれる選手というのは、元から才能に溢れている素質のある選手ばかりなんですけどね。

 本来であれば、ジュニアの大会に出場しているような年齢で、大人のプロを相手にして活躍できるジュニア選手というのは、ある意味において異常なのだから。



「ええ、だから庭野選手はご自分の実績をもっと誇っても良いと思います」


「私ってすぐに天狗になっちゃいますので、あまり煽てないでください」


「ふふ、謙虚に生きたいということですか?」


「調子に乗って色々とやらかした前科がありますので……」



 思い出したら、う゛っ、頭がっ!?



「あはは、過去の出来事は時効ということで」


「あはは、私としても忘れてくれると助かります」



 記憶を抹消してくれないと、君が泣いて許しを請うたとしても、記憶が消えてなくなるまで、君を叩くのを止めない!



「話を戻しますけど、インディアンウェルズの大会は惜しくも準優勝という結果に終わってしまいましたが、大会を振り返ってみていかがでしたか?」


「そうですね、決勝までは自分のプレーがそこそこできていたと思います」


「ということは、決勝では自分が思うようなプレーができなかったと?」


「まあ、負けちゃいましたから、そうなりますね」



 自分の思い描く理想のプレーができていれば、シュタイナーにも勝っていただろうしね。



「その決勝のシュタイナー戦は、どうでしたか?」


「第2セットでマッチポイントを何度も握ったのに、そこで決めきれなかったのが敗因でしょうねぇ」


「やはり、あそこがターニングポイントでしたか」


「そうですね、あの場面をシュタイナーに凌がれてブレイクを許してしまったことで、試合の流れを完全にシュタイナーに持っていかれちゃいましたから」


「庭野選手にマッチポイントを握られても、シュタイナーは冷静でしたね」



 第2セットの5-3からの第9ゲームを40-15から連続で返されて、そこから6度のアドバンテージでも決めきれずに、最後は私が根負けしちゃって結局ブレイクされちゃったんだよなぁ。

 つまり、1ゲームの間に私はシュタイナーに、マッチポイントを8度も跳ね返されたということですな。


 ぐぬぬ……


 こんな体たらくでは、そら試合の流れはシュタイナーに持っていかれますわ。



「伊達で世界ランキング一位に君臨しているわけではないということでしょう」


「グランドスラムで7度の優勝という輝かしい実績を誇る、アーデルハイト・シュタイナーは、やはり強かったですか?」


「強かったですね。だから、そう簡単には勝たせてもらえないということです」



 今回のシュタイナーは全豪で対戦したクリス並みにしぶとかったですね。

 もっとも、今回は私がやや淡白だった面は否めないのですが。


 言い訳になるかも知れないけど、今日は私の体調があまり良くなかったんよ。

 まあ、ウォークオーバーやリタイアする程ではなかったけどさ。


 断じて電マを使ったオナニーのやりすぎで、体力を消耗したとかではありませんのであしからず。ないったらない!

 私は基本的に、テニスの大会期間中は自重しているんよ。


 スイッチのオンオフを切り替えているともいいます。



「しかし、庭野選手はドバイではシュタイナー選手に勝ってますよね?」


「ドバイの時は私に勢いがあったのと、初対戦でシュタイナー選手も手探りの状態だったから、私が勝てたのかも知れません」



 強いプレイヤーというのは、たとえその試合に負けたとしても何がダメだったのかを反省して、次に対戦する時には対策をしてきっちりと修正してこれるから、ランキング上位に居座っていることができるのだと思います。

 その証拠にシュタイナーは、緩急を自在に使い分けて私を翻弄してきたのだから。


 そして、時折混ぜてくるドロップショットにボディ狙いやフォアとバックのダウンザラインに、私は苦戦させられたのです。

 特にシュタイナーの外から巻いてくるダウンザラインは、圧巻の一言でした。


 この私が一歩動いただけで届かないと思い知らされ、追うのを諦めてしまいましたから。

 くっ、外から巻いてのダウンザラインは、私のお家芸で専売特許だと思ってたのに、シュタイナーにしてやられました。


 さすがにシュタイナーは百戦錬磨なだけあってか、オープンコートを作るのが上手いわ。

 私がスペースを作らされるだなんて、屈辱の極みですね。


 でも、けして私が手を抜いた怠慢なプレーをしたわけではないよ?

 ペース配分に気を遣って、体力を温存しただけなんだからね!



「そういえば、ちょうどドバイの決勝とは逆のような試合展開になりましたね」


「シュタイナーにドバイでの借りを返されちゃいましたので、少し悔しいですね」


「悔しいのは、少しだけでしょうか?」


「いや、本音を言えば結構というか無茶苦茶悔しいんですけど、泣いて喚いたところで私が負けたという事実は覆りませんので」



 覆水盆に返らずとも言います。ちょっと知的な言葉を使ってみた。



「ちゃんと現実を把握しているのですね」


「喚くよりも、負けた悔しさをバネにして、次に繋げたいと思います」


「なるほど、庭野選手はポジティブ思考なのですね」



 ポジティブ? そうなるのかな?



「あはっ、あまり深く考えてないだけのような気もしますけど」


「あはは、来週からはインディアンウェルズと同じく、マンダトリー1000大会のマイアミオープンが始まりますけど、マイアミオープンに向けての庭野選手の抱負をお聞かせください」


「そうですね、私にはまだプロとしての経験値が不足していますので、一戦一戦毎に勉強している最中になります。その勉強している中で自分の糧となるモノが多ければ、良い結果に繋がる可能性も高くなるのだと思います」



 なんとなく、優等生的な発言ができたんじゃないかな?



「なるほど、庭野選手がマイアミオープンでも活躍するのを期待しています。今日はお疲れのところ、どうもありがとうございました」


「こちらこそありがとうございました。あ、マイアミオープンもズムズムで放送しますので、みなさん見てください!」


「番組の宣伝、ありがとうございます。庭野選手がおっしゃったようにズムズムでは、マイアミオープンの試合をオンデマンドを含めたら全試合を放送しますので、是非ご覧になってください」


「以上、ズムズムからのお知らせでした」


「あはは、庭野選手はズムズムの回し者みたいですね」


「私も一応、関係者みたいなモノですから」


「そうでしたね」



 さて、優等生的な発言とは裏腹に、マイアミオープンでは優勝目指して頑張ることにしますか!



マンダトリーのことマダントリーってしょっちゅう間違えそうになる…

脳の言語分野がバグっているのかな?

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― 新着の感想 ―
[一言] マダン。。。テ? アレはなんだ?鳥だ!スーパ○マンだ!マンダトリー! って覚えるしか(適当)
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