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207話 わたしのテニスのお師匠さん

萌香の一人称


 オーストラリア キャンベラ




「萌香さん、お昼を食べに行きましょうよ」


「もうちょっと待って」



 もう少しでたまきちゃんが勝てそうな感じの、いいところなんだからさ。



「なにを見ているんです?」


「ズムズムオンデマンドだよ」


「もしかして、また環希の試合を見ているんですか?」


「せいかーい」


「前から思っていましたけど、萌香さんは環希のことが好きすぎますよね」



 たまきちゃんは、わたしにとってのヒーローで、たまきちゃんのファン一号は、わたしのはずだからね!

 わたしがここまでテニスが上手くなれたのも、半分はたまきちゃんのおかげだと思っているので、わたしのテニスのお師匠さんは、たまきちゃんだと勝手に思っているほどです。


 たまきちゃんも冗談で、萌香は私が育てた! とか、ツイッターで呟いてましたけど、それって半分は正解なんだよ。


 まあ、たまきちゃんの方が、わたしより4つも年下ではあるんだけどさ。

 あと、少しだけまどかコーチに申し訳なく思ったりもしています。


 でも、お師匠さんとコーチは別と考えればいいのか?

 それと、たまきちゃんを生んだのは、まどかコーチなのだから、まどかコーチはお師匠さんのお師匠さんになるのかな?



「小さい頃から知っている近所の女の子が、グランドスラムの元女王で元世界ランキング一位のウィンストンと試合してんだよ? これを見ないほうが無理な話ってもんだよ」


「そういえば、環希はまたウィンストンとの試合でしたか」


「だから、たまきちゃんを応援したくなるに決まってるじゃない」


「でも、あたしは自分のことで精一杯で、自分の大会期間中は環希の試合を見る余裕はないかなぁ」



 でも、優梨愛ちゃんも夜にアーカイブで、たまきちゃんの試合をちゃんとチェックしているのを知ってるよ!



「たまきちゃんのプレーを見ているのって楽しいからねー」


「まあ、それは否定しませんけど。でも、あの子と対戦すると自分の思い通りのプレーができないので、イライラさせられますけどね」


「優梨愛ちゃんのその気持ちは分かるよ」



 だけど、たまきちゃんのプレーを見ていると、色々と参考になって自分の勉強にもなるしね。

 まあ、わたしがたまきちゃんの真似をしたとしても、劣化バージョンにしかならないのだけれども。



「それで、試合はどんな感じなんです? 環希、勝ってます?」


「ファーストセットをベーグルで取って、セカンドセットもあと1ゲームで、たまきちゃんの勝ちなんだけど、なんか中断してるね」


「おー、あのウィンストンを相手にして、ベーグル焼いちゃいましたか!」


「凄すぎだよねー」



 たまきちゃんのレベルは、わたしたちとはちょっと次元の違う強さだと思います。

 それでも、昨年のローハンプトンのダブルスでは、わたしと優梨愛ちゃんのペアで、たまきちゃんを相手に勝ったんだけどね!


 ダブルスの醍醐味は、弱者でもペアでコンビネーションを駆使すれば、シングルスの強者に勝てるということです。

 これが、ダブルスの面白さでもあると思いますね!



「相変わらずの環希で安心しました。それにしても、インディアンウェルズって雨ほとんど降らないはずのに、中断とは珍しいですね」


「あー、雨で中断じゃなくてね…… ウィンストンが主審とケンカしているんだよ」


「うへー、あのオバサンって全然メンタルが成長しませんよね」


「脳ミソの欠陥を疑ったほうが良いレベルだと思うよー」



 子供の癇癪じゃないんだから、いい年をした大人がしても良い態度ではないよね?

 同じプロのテニス選手として、こっちまで恥ずかしくなってしまいますよ。



「萌香さん、それはさすがに言いすぎですよ……」


「本人を前にして言わなければ大丈夫だよ」



 人の悪口なんて、そんなモノですしね。



「それよりも、早くお昼ご飯食べに行きましょうよ」


「試合も中断しちゃってるし、そうしよっか」



 お腹も空いたことだし、わたしも午後から試合があるのだから、あとは夜にでもアーカイブで確認すればいいか。

 もう、たまきちゃんの勝ちは揺るがないだろうしね。



 わたしと優梨愛ちゃんの二人は、オーストラリアの首都であるキャンベラに来ています。

 当然ながら、まどかコーチも一緒です。


 キャンベラは計画された人工都市なので、街並みが洗練されていて綺麗な街だと思います。

 もっとも、ゴチャゴチャとした雑多な街が好きな人には、いささか味気ない街並みに感じるみたいなのですけど、わたしはゴチャゴチャしている街よりも好きですね。


 キャンベラまでの飛行機は、まどかコーチが有言実行で約束通りに、エコノミークラスとの差額分を負担してくれましたので、経由地であるゴールドコーストまでの便はビジネスクラスになりました。

 まあ、LCCのビジネスクラスなんだけどね。


 そして、LCCのビジネスクラスの機内食はといいますと……

 うん、まあその、なんだ。なんと言えばいいのかな?


 ショボかったじゃなくて、ノーコメントでお願いします。


 それでも、フルサービスキャリアのエコノミーの機内食と同程度と考えたら、上出来の部類なのかな?

 LCCは色々なサービスのコストを抑えた結果として、運賃も安く設定してあるのだから、文句を言ったら罰が当たりそうですもんね。


 まあ、まどかコーチはダラダラと文句を言ってましたけど。


 シートはフルフラットじゃなくて、リクライニングするだけだったのが、なんとなくお尻の座りが悪く感じで、もにょもにょとしました。

 まどかコーチも、「これはビジネスクラスじゃない! 精々プレエコだ!」とか、文句を言ってましたけど、その通りだと思いました。


 すいません、飛行機を選んだのわたしです。

 正直に言って、このビジネスクラスは失敗だったと、わたしもそう思います。


 あと、まどかコーチが、「成田は遠い」とか、ぶつくさとボヤいていましたので、今度オーストラリアに来る時には、羽田発の便も候補に入れてみましょうか?

 わたしが負担する金額は4万円程度増えるだけで、ちゃんとしたビジネスクラスに搭乗できると考えたら、デメリットよりもメリットの方が大きい感じがしますしね。


 今度、優梨愛ちゃんとも相談してみましょう。



 それで、なんでオーストラリアに遠征することになったのかといいますと……


 今年は三月の上旬に日本でのITFサーキットの大会の開催がなかったので、まどかコーチとも相談した結果、キャンベラで二週連続で開催されるクレーの60k大会に出場することにしました。

 まだまだクレーコートでの経験が少ないので、上のカデゴリーでも通用するように今からクレーの経験を積んでおくことは、多少なりともわたしたちの血と肉になることでしょう。


 そして、オーストラリアはヨーロッパから遠いので、クレーコーター揃いのヨーロッパの選手が、ほとんど出場してないということは、ポイントを稼ぐチャンスでもあるんだよね。

 その事実に、わたしは今日行われる準々決勝まで勝ち上がってこれたのだから。


 ちょうど一年前に地元横浜で稼いだ6ポイントが失効になったけど、それを差し引いてお釣りがくるポイントを稼げましたので、上々の結果だと思います。

 今日の試合に勝てれば、ローランギャロスかウィンブルドンの予選に、なんとか滑り込めれる可能性も出てきそうですしね!


 シンガポールの25k大会を二週連続で優勝するまでは、今年のウィンブルドンに出場できる可能性が芽生えてくるだなんて、まったく想像もできなかったよ。

 わたしも出世したもんだ。


 まあ、捕らぬタヌキのなんとやらにならないように、地道にコツコツと目の前の一勝を目指すことにしましょう。


 ちなみに、優梨愛ちゃんは予選を突破したまでは良かったけど、本戦は二回戦のR16で負けちゃいました。

 今週の残りは、わたしと一緒のダブルスで頑張ろう!


 現状、ダブルスのほうがグランドスラムでも好成績を残せそうですしね。



うーん… サーキットカレンダーどうすんべ?


コロナ以前と以後とでは、コロナにロシアとウクライナの戦争や中国での問題とかもあって、ツアーのカレンダーが大幅に変わっちゃったんだよなぁ。

なお、この物語の世界線では、上記の問題は起ってない平和な世界です。


2019年のカレンダーを基準にアレンジしよっかな? →アレンジしました。

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