番外編というかチラシの裏というかボツになった話
本編には関係ない話なので、読まなくても大丈夫です。
人によっては、読んでいて不快な思いをするかも知れません。
まあ、思春期特有のアレみたいなモノです。
※ 番外編 ボツにした話その1
「ファイナルアンサー」
「うん、ギルティ」
「だそうです。母親から有罪判決を下された、小学四年生の庭野環希さん。いまのお気持ちをお聞かせ下さい」
「感無量であります」
「それって日本語として合ってるの?」
「さあ? それよりも、ママに裏切られた気分だよ」
「環希にとってはママが法律です」
でた! 伝家の宝刀、家庭内のルール!
「子供は親の所有物だったとは知らなかった。ビックリだよ」
「あたしは、STCに通わされてたし、なんとなく分かるかも」
そういえば、優梨愛ちゃんは経験者だったね。おばさんは済まなそうにしているけど、言うべきことは言わないとね!
「ね? 子供に決定権なんてないでしょ? つまり、人権侵害ということです」
「た、環希、よこよこ」
ん? 優梨愛ちゃんの目が泳いで、なにを訴えているの?
よこよこ? なんで、横浜横須賀道路が関係あるのかな?
「ふーん、へー、ほー。環希ちゃんは、ママを訴えるんだぁ」
横は横でも、隣の席の横だったよ!
「滅相もないであります!」
「こんなにも、娘を愛しているママを訴えるんだぁ。ふーん、そっかぁ」
「訴えないであります!」
半目のママがこんなにも怖かっただなんて……
「ママも環希ちゃんとの付き合い方を考えないとなぁ」
「今のままでお願いします!」
「簀巻きにして、コートに放り出しっちゃおうかなぁ」
「それは、勘弁してください。というか、ママそれって虐待だよ」
本当にやられたら、お爺ちゃんに言い付けてやるんだから。
「躾けの一貫です」
「いや、私怨が入ってるし虐待だから」
「まあ、冗談よ冗談。環希がバカなことばかり言っているから、ちょっと乗ってあげただけじゃない」
まあ、私も遊んでいただけなんだけどさ♪
『まもなく新横浜、新横浜に到着いたします。お出口は左側、横浜線、地下鉄線はお乗り換えです』
ようやく着いたどー。
※ 番外編 ボツにした話その2
「そういえば、環希はRSK出るの?」
「RSK? 出ないよ」
まだ、新幹線に揺られている庭野環希です。左手に富士山が見えてきましたので、新横浜まではあと30分ぐらいでしょうか?
「出ないの? またなんでさ」
「ぶっちゃけ、岡山まで行くのが面倒くさいのが半分」
「あとの半分は?」
「RSKって、ワールドジュニアのアジアオセアニア予選の選手選考会でしょ?」
「そうだね。三人選ばれるね」
「代表選考会なのに、なんでオムニでやるのかが理解できない」
「ハードやクレーのコートが少ないからでしょ?」
予選はタイのバンコクで開催され、そのサーフェイスはハードコートなのだ。
本番はハードコートで試合をするのに、ハードコートでの適性を見極めなくてどうするのだと、小一時間問い詰めたい。
それに予選を勝ち上がって本戦に出場したら、本戦は欧州のチェコで開催され、そのサーフェイスはクレーコートなのだ。
本番はクレーなんだけど、これまた本戦の選考会はハードコートで行われるんだよなぁ。まあ、こっちはクレーで開催しないとはいえ、ハードで行われるのだから、まだマシといえばマシな方だとは思うけど。
「環希、それは大人の事情ってヤツなのよ」
「うん。ママ、それは私でも知っているよ。しかし、頭では理解できても感情の面では、納得できないんだよ」
「なんか、環希が知的なことを言っている気がして、あたしには理解できないよ」
「優梨愛ちゃん、この娘が言っていることは、ただの愚痴よ」
「なるほど、愚痴でしたか……」
「だから、真に受けないで笑って聞き流しときなさい」
「わかりました」
「あと、参加費が高い」
「たしか、8100円だったかな?」
「日本のテニスの参加費は高すぎると思うんだよね」
「確かに高いよね」
「ITFサーキットよりも高いだなんて、狂っているとしか思えないよ」
「うそ? ITFの大会の方が安いの?」
「そうなんだよ。なのに日本では、今回の場合では、関東予選、本戦とで合計で、1万5千円もするんだよ」
「その高い参加料を払うのは、ママなんだけど?」
「とりあえず、ママは黙ってて」
「生意気になっちゃって、本当にもう……」
「そもそも、いくらジュニアとはいえ、国を代表して戦う国際大会の代表を決める試合で、参加費を取ること自体が、そもそもおかしいと思うんだよ」
「あー、そう言われてみれば、そうかも知れない」
「それは、環希の言い分にも、確かに一理あるわね」
「そうでしょ? あと、半端な100円」
「ワンコイン制度のこと?」
「そう、そのワンコイン制度も理解できない」
「ワンコイン制度ってテニスだけなのかな?」
「だぶんそうだと思う」
「なんで、他の競技団体には普及しなかったんだろうね?」
「他の競技では必要ないからなんだと思う」
「ナショナルトレセンがテニスだけ差別して、特別に高い使用料とかを徴収していないのであれば、ワンコイン制度は意味不明なんだよ」
「そんなことありえるのかな?」
「普通に考えたらあり得ないし、そんなことがあったら、おかしいって声を上げるのが普通なんだよ」
「そうだよねー」
「発想がせせこましくて、さもしいんだよ。だから、普通は恥ずかしくて出来ないんだよ」
「な、なるほど。あまりよく分からないけど……」
「そもそも、協会が弱い選手から強制的に徴収するシステム自体、発想が貧困なんだよ」
「うわー、この子ってば、あからさまな協会批判しちゃったよ。あたしは無関係だからね。それに、アンタは強い選手でしょーが!」
「優梨愛ちゃん、選手が自発的にしなければ、つまりボトムアップでなければ、優秀な人材も選手も育たないんだよ」
「うおっほん!」
「なんか、咳払いが聴こえたような?」
「どうやら、協会の役員も同じ車両に乗り合わせていたみたいね」
「だから、厚顔無恥もここに極まるってヤツなんだよ」
「環希、あなたの言っていることって、テニス協会の批判なのかナショナルトレセンの批判なのか、なんだか中身がごっちゃになってない?」
「ママ、これは青年の主張なんだよ」
「つまり、青臭くて理想論ばかりの空虚な主張ってコトね」
「青年は理想を論じるものなんだよ」
「環希ちゃん、今日限りでアンタの友達やめるわ。あたしゃ他人だよ」
「優梨愛ちゃん、こんな娘でごめんなさいね……」
「その役員の新幹線代は、グリーン車代は、どこから出ているの?」
「協会の経費からだろうね」
「あなたの分はママから出ているのよ。ナマ言ってんじゃないのよ」
「その協会の経費は、どこから出ているの?」
「なんか、環希ちゃんの目が据わっていて怖いんですけど?」
「環希、言いたいことは分かるけど、口を慎みなさい。それ以上は、ママ本当に怒るわよ」
「そうやって、臭い物に蓋をして表面だけ取り繕って、空虚で無味乾燥な言葉だけを垂れ流しているのが、今の社会なんだよ」
「黙りなさい! そんな小賢しい言葉ばかり、いったい何処で覚えてくるのよ」
「優梨愛ちゃん、これが言論の封殺ってヤツなんだよ」
「あはは、私にはよく分からないかなぁ……」
「そうやって、長い物に巻かれた先にあるのは、大衆の家畜化なんだよ」
「環希、いい加減にしなさい!」
「そうして、大多数のサイレントマジョリティが生まれるんだ。物言わぬ大衆を良いことに、あれこれと私腹を肥やす輩が蔓延っているのが、今の世の中なんだよ」
「ママ、本当に怒るわよ!」
「ママ、これは青年の主張ってヤツなんだよ」
「環希は、もう中二病とかいうのに罹ってしまったの?」
「これは大人が失った、清き正しい心の叫びなんだよ」
「時と場所を弁えて、お喋りしなさいと言っているのよ。ここは公共の場なのよ?」
「政治家も公共の場で主張しているじゃん」
「あーいえばこういう、口答えばかりして! 反抗期なの?」
「子供はね、社会を映す鏡なんだよ」
「いい加減にしなさい!」
パンッ
「ぶったね? 親にもぶたれたことないのに!」
「たったいま、打たれたでしょ!」
「優梨愛ちゃん、これが、人権侵害というヤツなんだよ」
「ノーコメントで……」
「大人は子供に対して都合が悪くなると、怒れば解決すると思っているんだよ」
「なんで、こんな娘に育ってしまったのかしら? ママ、泣きたい……」
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「という、夢を見たんだよ。いやー、やけにリアルだったわ」
「アンタ、女優になれるわ……」
うん、環希が暴走してしまったので、ボツになりましたw