1 1-1 15-0 関東ジュニアランキング
「そういえば、環希はRSK出るの?」
「RSK? 出ないよ」
まだ、新幹線に揺られている庭野環希です。左手に富士山が見えてきましたので、新横浜まではあと30分ぐらいでしょうか?
「出ないの? またなんでさ」
「予選と本戦とで平日を三日も四日も潰されたら、学校を休まないといけなくなるじゃん」
「本戦に出場すること前提なのね。まあ、アンタだったら、中学生相手でも簡単に勝つんだろうけど」
「まあ、天才テニス美少女、たまきちゃんだからね!」
実際に練習では、もう既に中学生を相手にして、試合形式の練習でも勝てたりしているのだから、U-13ならば私が出場したとしても勝てるだろうね。
これが、中学三年生が相手だと、私でも苦戦しそうな気もしますが。さすがに中三は高校生に近い実力を付けているからね。
西織は小学六年生の時点で、高校一年生に勝ったことあるみたいだけどさ。
やっぱ、テニスの天才は小学生時代から、天才だったんだね!
「この子、自分で美少女って言っちゃったよ……」
「優梨愛ちゃん、この娘はちょっとアレだから気にしないで」
「もう慣れました」
また、ママにアレ呼ばわりされたし。
「優梨愛ちゃん、学生の本分は学業にありだよ」
テニスの大会とは、土日祝日のみに行われている訳ではないのだ。県レベルの大会とかでは、複数の週を跨いだ土日祝日に分割して開催されてたりもして、学校の授業に配慮されていたりもするけどね。
これが、大会のグレードが上がれば、事情が変わってくるのです。その地方の県や全国から選手を集めて開催するのだから、一つの週に纏めて試合を行う必要が出てくるのです。
例えば、二週続けて東京から九州に行くとか非効率だもんね。経済的にも飛行機代とかの負担は、馬鹿にならない金額になりますしね。
だから、いくら土日を挟んで開催しているとはいえ、一日か二日は平日に被ってしまうのだ。
「そうっすネ……」
「心がこもってないよ」
「だって、いままでも平日にも試合があって、環希も出てたじゃない」
まあ、そんなこともあったかなぁ?
でも、U-12選抜ジュニアとか全小の関東予選に関東ジュニアとかだったんだから、仕方ないよね。
ランキングのポイントも貯めないといけなかったしさ。
ちなみに、私の一年間で貯めたランキングポイントはといいますと。
G4-A 川崎ジュニア 75P
G3-A U-12全国選抜神奈川予選 60P
G3-A 関東ジュニア神奈川予選 60P
G2 U-12全国選抜関東予選 185P
G3-A 春季神奈川県小学生テニス 60P
G1 U-12全国選抜ジュニア 250P
G2 全国小学生テニス関東予選 185P
G2 関東ジュニア 185P
G1 全国小学生テニス大会 250P
G1 全日本ジュニアU-12 250P
合計で、1560ポイントになります。
しかし、このポイント全部がランキング対象のポイントに、加算されないのが味噌なのですよ。
ランキングを決定するのは、各大会で獲得したポイントの上位の5大会分で計算するのです。
つまり、私の場合ですと、250×3+185×2=1120ポイント。
この、1120ポイントが私のランキング対象ポイントとなります。
残りのポイントは、残念ながらも対象から除外されてしまいます。
でも、12才以下のカデゴリーでは、堂々のランキング一位であります。やったね!
ちなみに、電卓で計算すると、M+とMRを使わないと間違った答えがでちゃうぞ☆
優梨愛ちゃんのポイントはといいますと、今回、全日本ジュニアで準優勝した200ポイントを、いままで5番目に多かったポイントと入れ替えます。
入れ替えたのを加算したポイントは、891ポイントで私に次いで堂々のランキング第二位であります。
つまり、民間のスクールが主催の、G4-BやG4-Cなんかの大会に毎週あちこちと出場して、そこでQFやベスト16とかに入ってコツコツとポイントを貯めた選手が、ランキング上位になるということはあり得ないのです。
だから、関東ジュニアのランキングというのは、一応は、健全なシステムではあるよね。
でも、ランキングを見ると、出場した大会の数が年間で、20を超えている選手がザラなんだよなぁ。多い子なんて、30越えてますし。みんな、ちゃんと勉強していますか? 少し心配になります。あと、少しは遊びましょう。
いくら数多くの大会に出場して、それなりの成績を残したとしても、ランキング対象ポイントは、ポイント上位5大会分だけですから。
まあ、ランキングポイントも欲しいだろうけど、主としては場数を踏ませて、経験値を蓄積させるのが目的なんだろうね。
「私は過去を振り返らない女なんだよ」
「あっそう」
「優梨愛ちゃんが冷たい!」
「環希がバカなこと言うからだよ」
「というか、無理して試合に出ても、これ以上はランキングもあがらないしね」
「でも、RSKは13才以下の大会だから、優勝すれば250ポイントじゃなくて、375ポイントもらえるんだよ?」
そういえば、そうだったね。関東ジュニアポイントというのは、年齢別大会で分かれていて、カデゴリーが上の大会に上がるにつれ、ポイントも増えていく仕組みなのだ。
でも、私にとっては、125ポイント程度の差は大した差にはならないかな。
ちなみに、テニスでは、13才以下のカテゴリーと17才以下のカテゴリーでの大会は少なくて、珍しい大会ですね。
ほとんどの場合は、12、14、16、18と偶数の年齢で区切られているしね。
「誤差の範囲でーす」
「余裕をかましやがって」
「私の代わりに優梨愛ちゃんが、中学一年生を倒して優勝してくれたまえ」
「でも、二人ばかりは確実に強いからなぁ。優勝は微妙だよ」
ほうほう、もしかしたら昨年は、そのうちの一人に負けたのかな?
「でも、相手が途中棄権や、W.Oとかがあるかも知れないでしょ?」
「でた! 他力本願!」
でも、テニスの試合では、棄権や出場辞退とかは、よくある話じゃないですか。
「運も実力のうちだよ。運が悪ければ、いくら強くても勝負には勝てないんだよ」
「なんか、妙な説得力があるのですけど」
まあ、転生=運が良いと考えたら、優梨愛ちゃんが言うとおりなんだろうね。
でも、これは言えないよなぁ。
「でも、環希なら中学生相手にも、十分通用するのにもったいないなぁ」
「まー、私ならば、サクッと勝てるだろうね」
「そうだろうねー。去年の私でもQFまで行けて、順位決定戦で6位に入れたんだから」
「それは初耳だよ」
RSKに出場したとは聞いていたけど、6位とは聞いてないよ。たぶん。
「言ってなかったっけ?」
「たぶん、聞いてない…はず」
あれ? 聞き逃していたのかな?
「ということは、私は自慢半分で環希に喋ったのに、アンタは聞き流していたということで、ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
条件反射で思わず口から出てしまったよ。
「うん、ギルティ」
優梨愛ちゃんとお喋りをしていたのに、ママから有罪判決を喰らってしまうとは!?
ママ、諮ったな!
「だそうです。母親から有罪判決を下された、小学四年生の庭野環希さん。いまのお気持ちをお聞かせ下さい」
「感無量であります」
こういう時には、定型文しか出てこないよね?
『まもなく新横浜、新横浜に到着いたします。お出口は左側、横浜線、地下鉄線はお乗り換えです』
ようやく着いたどー。
ようやく新幹線の中から抜け出せれたw
↑新横浜
優母
環マ
こんな感じで座ってました。座席を回転させてお喋りに夢中で五月蝿かった迷惑な乗客ですw