186話 庭野家の朝の日常その2
今日、12月8日は環希の誕生日です。平行世界では9歳になったのかな?
設定年代を繰り下げて5歳かも知れないけど。
自宅の周囲を三周する約3kmのランニングも終わって、敬礼してくる純ちゃんとお別れしてから、家に戻ってシャワーをサッと浴びたら、朝食の時間です。
「いただきまーす」
「はい、いただきます」
今日のメニューは、相変わらず我が家の朝食の定番である、じゃこと紫蘇入りの納豆にベーコンエッグの目玉は二つになります。
私って納豆好きなんだよね。特に小粒納豆がお気に入りです。
豆の粒が大きい納豆はイマイチ好かん。
あと、当然ながら、アンモニア臭がキツいのも苦手かな?
といいますか、アンモニア臭がキツい納豆って、最近でもスーパーに売っているのでしょうか?
普段ウチでは、臭わないおかめの小粒しか買わないから、もしかしたら私が知らないだけで、探したら普通に売っているのかも知れませんね。
でも、アンモニア臭い納豆が売れるのかといえば微妙だよなぁ。
どちらの納豆を手に取るのかといえば、酔狂な人を除いて普通の人ならば、臭いがキツくない納豆の方を手に取るのが普通だもんね。
ということは、淘汰された可能性のほうが高いのかな?
サラダもワンパターンだけど、レタスと千切りキャベツにキュウリ、トマトとブロッコリーのサラダで、これに昨夜の残りのポテトサラダが付きました。
千切りキャベツは、ちゃんとスライサーを使ってトンカツ屋さんのキャベツみたいに、ふわっふわのシャキシャキです。
副菜の春菊の胡麻和えと、きんぴらごぼうも食卓に上っていますね。
サイドメニューで胡瓜の浅漬けと、きゅうりの酢の物タコとワカメ入りもあります。
我が家は相変わらず、キュウリ好きの家系のようで安心しました。
キュウリにはカリウムが豊富に含まれていて、そのカリウムは足が攣るのを予防してくれるのだから、キュウリはありがたい野菜なのです。
しかし、カリウムだけじゃないけど、栄養素も摂取しすぎると毒になるので、なにごとも程々がちょうどよい塩梅なんですけどね。
私はまだ食事の栄養管理とかはしてないのだけど、そのうち栄養管理も必要になってくるのかな?
まあ、それも私が勝てなくなったとか、停滞してから考えても遅くはないのかも知れません。
その行為が必要だと自分が納得しなければ、何事も続かないですしね。
それで、味噌汁は合わせ味噌で、今日の具の中身は大根の細切りと豆腐に、これまた細切りのおあげさんでした。
というか、我が家の味噌汁の八割以上は合わせ味噌にしています。
ごく偶に、赤味噌や白味噌の味噌汁も食卓に上りますけど、その場合はお婆ちゃんの気分転換なのかな?
もしかしたら、おかずの内容に合わせて味噌を変えているのかも知れないけど。
あ、あと、シジミの味噌汁の場合は絶対に赤だしになります。
シジミの成分は疲労回復に良いとか聞きますし、我が家でも月に三、四回はシジミの味噌汁が出ます。
なんにせよ、最低でも一日一回は味噌汁を飲まないことには、恥ずかしくて日本人は名乗れないでしょう。
まあ、日本人であれば別に味噌汁を飲まなくても、堂々と日本人を名乗っても構わないんだけどさ。
それでも、味噌汁は日本人の心の故郷だと思いますね。
私の場合は、一日に最低二回は飲みたいですし、日本にいる時は二回飲んでいる日が多いような感じがしますね。
海外に遠征している場合でも、ちゃんと一日一回は最低でも飲んでますよ。
まあ、大抵の場合はフリーズドライの味噌汁になっちゃいますけど。
「環希、これに目を通しておいてちょうだい」
私が味噌汁に熱い思いを馳せながら、リアルの味噌汁を啜っていると、ママがプリントを渡してきました。
なんじゃらほい?
「ご飯のあとでも別にいいんでしょ?」
「ええ、ドバイまでの間の練習スケジュールを組んでみたから、それで大丈夫そうなのか確認してみて、なにか他の希望があったら言ってちょうだい」
そう言われてしまうと食事中だとしても、ついついプリントを見たくなってしまうじゃないですか。
私も大概テニス馬鹿なのを自覚させられるよ。
ふむふむ……
なになに……?
トレーナー?
「ママ、私に専属のトレーナーが付く予定なの?」
「クリスとの試合を見て、トレーナーの必要性を実感したのよ」
「あー、なるほど。翌日は疲労と筋肉痛でまともに動けなかったからねー」
「そういうこと。ツアーを廻っていれば、これからも同じような場面も出てくるのだから、早めに対処しておいたほうが、環希の身体の負担も減るのよ」
仮に試合に勝ったとしても、その翌日も試合で、そのまた翌日も試合。さらにその翌日も試合というのが、テニスの大会なのです。
そう考えると、私の身体をマッサージしてケアしてくれる、トレーナーは必要になってくるでしょうね。
グランドスラムとインディアンウェルズにマイアミオープン以外の大会ですと、順調に勝ち進んだ場合には、一回戦から決勝まで、水曜日から日曜日まで5日連続で試合をすることになるもんね。
まあ、一回戦が火曜日の場合は一日休めるけど、それでも二回戦から決勝までの間は、4日間の連戦にはなりますので。
「そうだね。トレーナーさんの話は了解したよ」
あと、練習のスケジュールはといいますと……
うーん……
まあ、これでもいいかな?
ママが練習メニューを組んでくれたんだし、これで大丈夫でしょう。
でもなあ……
「サナダさんがいれば、もっと負荷を掛けた練習もできたんだけどね」
サナダさんとは、メルボルンで一旦お別れをしまして、2月のドバイで再度合流する予定になっています。
サナダさんの自宅があるフロリダには、ホノルルとダラス経由での帰宅になりました。
チケットのお値段は、2500ドルくらいだったかな?
LCCのビジネスとアメリカンのプレエコ&エコノミーだけど、ダラス~マイアミの短距離ぐらいは、エコノミーで我慢せい! まあ、私は嫌ですけど。
最初サナダさんは、7000ドルするチケットのプランを提示してきたのですけど、麻生さんに頭を叩かれてました。
たぶん、所要時間が一番短くて済む便のチケットだったのでしょう。
まあ、1万ドルの時と比べたら、3千ドルも安いチケットなんだから、サナダさんも少しは考えたみたいではあるのかな?
でも、検索して一番上に表示されたヤツだから、やっぱなにも考えてなさそうな気もしますね。
考える頭を持たせるように、教育の為にフィンランド経由の便にしたろか。
まあ、メルボルンからマイアミまで、60時間掛かるけどね!
マイル修行僧が喜びそうな苦行ですね。
どうせだったら、ビジネスクラスのチケットで金額が一番安かった便にすれば良かったのにとか思わなくもない。
マイアミまで、60時間掛かるけどね!
はい、それがフィンランド経由の便でした。
「あんなのでもマイケルは、キャリアハイで38位にまでは、行ったことあるからね。でも……」
「でも、の続きは? 嫌な予感はするけど」
「マイケルをウチに入れるのは嫌よ」
あー、なるほどね。百年の恋も冷めると、こうなるのか……
サナダさんは、ママに一体なにをやらかしたのでしょうね?
それでも、サナダさんを雇ったのだから、ママもサナダさんの顔も見たくない、そこまでは嫌ってないのでしょうね。
まあ、ビジネスと割り切っているのかも知れませんが。
「お爺ちゃんも、あの男はウマが合わんから好かんな」
「あなたの場合は、まどかを真田さんに取られそうになったからでしょ?」
「それだけで、ウマが合わない動機には十分じゃ」
お爺ちゃんも大概、親馬鹿だと思います。
「ふふ、ママってお爺ちゃんに愛されてるじゃん」
「子離れできない親馬鹿なだけよ」
「男親にとって娘を余所の男に取られるのは、きっと断腸の思いなんだよ」
「おおっ、さすがは我が孫娘じゃ! 環希がちゃんと理解してくれているとは、お爺ちゃん嬉しいよ」
まあ、娘を持つ父親のステレオタイプのテンプレみたいなモノだし、それぐらいは分かりますよ。
「というよりも、話がズレてるよ。サナダさんをウチに入れたくないのであれば、ビジネスホテルに宿泊させればいいだけじゃん」
「それもそっか、それなら一応考えてはみるけど、あの子も日本の冬と夏はたぶん来たがらないと思うわよ?」
「もしかして、冬が寒いのと夏は蒸し暑いから?」
「正解」
「軟弱な男だな」
温暖な気候のフロリダ育ちのサナダさんには、日本の冬の寒さはかなり堪えるのだろうね。
まあ、私も少し軟弱だとは思いますけど。
「おばあちゃん、ご飯おかわり!」
「たまちゃん、大盛りでいいのよね?」
「うん!」
朝食を食べている時の会話だけで一話が終わってしまった…
でも、こういった蛇足感のある、だらだらとした日常系が大好きな作者ですw
環希の誕生日だから、お祝いをしたまえ。
プレゼントはポイントでええで。