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1 1-1 0-0 使えねーな


「しかし、お嬢様学校ということは、学費もお高いのでは?」


「里田さんの心配はもっともですけど、それには及びません」


「そっか、特待生だったら学費免除ってことでしょ?」



 私立に通う生徒にも授業料の補助は出ているけど、公立の学校で掛かる費用レベルしか出なかった気がするので、当然だけど私立の場合は足が出るのです。

 授業料の他にも、施設使用料やら修繕積立金やら何々の寄付金やらを要求してくるのが、私立なのです。まあ、学校経営も商売ですので、仕方ないのですがね。



「正解。里田さん、環希が言ったとおりです」


「なるほど、それなら安心です。しかし、特待生ともなると、学校の部活動で活躍しなければならないとか、色々とあるのでは?」



 あー、おばさんの懸念はもっともだよね。


 スポーツ特待生というのは、入学時の条件にもよるのだろうけど、その部活動で活躍できなかったりしたら、肩身が狭い思いをしそうだよね。

 怪我をしてスポーツそれ自体を断念することになった場合とか、下手をしたら一般生徒に降格させられる可能性もあるのかも知れない。


 一般生徒に降格したら、最悪の場合では、学費やら寮費を払えなくなって退学とかもあるのかな?

 山手女学院は横浜市内だから通学できる場所にあるけど、都会から地方の学校に特待生として入学した場合は、寮生活は必須だもんね。


 スポーツ特待生の家庭がみんな裕福とは限らないのだし、特待生として勧誘するのであれば、成績の良し悪しに係わらず卒業までの三年間は、ちゃんと学校が面倒をみてあげるのが道理だとは思うけど。

 もっとも、本当のところは、どういう条件になっているのか分からないので、私の想像でしかないのだけれども。


 私立というのは学校経営なのだから、生徒を集めて入学金と授業料を納めてもらって、はじめて学校を運営できるのだ。

 その中で、スポーツ特待生というのは、その部活動において全国大会などで活躍して、学校名をアピールして世間に広め認知度を高める、いわゆる広告塔の役目を担っているのです。


 ほら、地方の私立高校が、都会からスポーツ特待生で野球留学する選手を集めて、甲子園に出場するとかよくありますよね?

 甲子園に出場すれば、地元での知名度は抜群になりますので、地元の一般の生徒を集めやすくなるのです。


 つまり、スポーツ特待生とは言葉は悪いけど、一般生徒=お客さんを集客する、客寄せパンダみたいなモノですね。


 もっとも、山手女学院の場合は、自分の学校をピーアールしなくても、勝手に生徒が集まってくるのだから、無理をしてスポーツ特待生をかき集める必要性は皆無だったよ。

 だから、このケースには当て嵌まらないから、大丈夫そうだけどね。


 そう考えると、人口の少ない地方での、私学経営というのは大変なんだろうなぁ。



「テニスの場合は、最低でも個人戦には出場する必要が出てくるでしょう」


「優梨愛ちゃんの実力ならば、一年生でも中学の全国大会に出れそうだし大丈夫なんじゃない?」


「頑張ったら二年生には勝てるだろうけど、三年生は厳しいと思うわー」


「でも、優梨愛ちゃんは昨年のRSKにも、五年生ながら出場したんでしょ?」



 RSKとは、U-13全国選抜ジュニアテニス大会のことで、この大会だけは何故かスポンサーの名前が、そのまま通称でも使われているのだ。

 まあ、言いやすいからなのだろうけど。あと、主催と後援の違いだったかも?


 ちなみに、中牟田杯は競馬の有馬記念みたいに、その業界における個人の貢献に対して、敬意を表する目的で付けられたモノですね。



「それはまあ、そうなんだけどさ」


「いけるいける、優梨愛ちゃんなら大丈夫だよ!」


「アンタは、中一から中三に掛けての成長力を見落としているよ」



 成長力かぁ。優梨愛ちゃんが五年生の時に中一だった子に勝てたとしても、優梨愛ちゃんが中一になった時に中三になっている同じ相手に、また勝てるのか?ということか。

 うーん、優梨愛ちゃんの実力ならば、なんとかなると思うんだけどな。



「優梨愛ちゃんなら、一年でも県予選は突破して最低でも関東は行けるだろうな」



 ん? ママの言い方だと、それって関東予選で負けるってコト?



「ママも一年生で全国は厳しいと思うの?」


「ドローしだいだろうな。関東の枠は毎年14~16枠だから、可能性は十分あるわよ」



 ほうほう、関東は16枠近くもあるのか。全中の場合は、地域枠と前年度実績枠だっけ? 枠に多少の変動があるのは、前年度の関東枠から出場した選手の実績に左右されるからだね。

 しかし、これだけ枠があれば、優梨愛ちゃんなら大丈夫じゃね?



「関東でベスト16なら、期待できそうじゃない?」


「うん、なんとかなる気がしてきた」



 一年生からの活躍を期待しているよ!



「さっき個人戦と仰いましたが、娘は団体戦には出なくてもよろしいのですか?」



 あー、中学と高校の全国大会には、団体戦があったんだ。まあ、私たちにはあまり関係のない話のような気もするけどさ。



「テニスでプロを目指すジュニア選手と、学校の部活動とでは目指す目標が違いますから、相容れない場面も出てくるでしょう」


「それが、団体戦だと?」


「はい。団体戦だと部活動として練習をしなければいけませんから」


「そっか、優梨愛ちゃんは二学期からは、うちで練習するんだもんね」



 テニスのジュニア選手は、スクールで練習しているのだから、部活でテニスの練習はできないよね。



「コーチ、それって中学では私はテニス部に所属しないということですか?」


「うーん、優梨愛ちゃんはテニス部に入りたいの? 仮に入ったとしたら、学校での部活練習とウチとの練習が重なるわよ」


「そういえば、そうでしたね」



 部活とテニススクールを掛け持ちしている子もいるとは思うけど、ランキングの上位の選手は、部活で練習はしてないだろうなぁ。

 でもそれだと、テニス部じゃなくても、全国中学校テニス選手権に出場できるということか?



「ママ、全中ってテニス部に所属してなくても出れるの?」


「私はテニス部だったし、団体戦にも出場したから、個人戦のみに出場する選手がテニス部に所属していないと出場できないのか、詳しいことは分からないわ」



 ママ、使えねーな。テニスコーチだったら知っておくべき常識じゃないの?



「環希、なにか言った?」


「いえ、なにも言てません!」


「噛んでるよ」



 魔王まどかの第六感、恐るべし!



「でも、少なくとも、U-14の大会で活躍していて、全中の個人戦でも上位に入った選手が、部活で練習しているとは思えないわね」


「あー、そうだよね。ほとんどスクール生のはずだよね」


「今度、詳しく聞いておくわ」


「でも、中学校って、ほとんどの学校が部活は強制参加のはずだよね?」



 そういえば、そんな気もするな。それで、休日も練習や試合で部活動をするから、休日なのに教師が休めなくて部活の顧問をやりたがらないとかが、問題にもなっていた記憶がしますね。

 そう考えると、教師っていつ休んでいるのでしょうね?


 それはそうと、優梨愛ちゃんの所属する部を考えてあげなくっちゃ!



「それだったら、優梨愛ちゃんは帰宅部だね!」


「帰宅部って…… 幽霊部員でも良いという部って、どんな部があるんだろ?」


「卓球部…とか?」


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