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178話 全豪オープン試合後の記者会見その2

サッカーW杯ドイツ戦、まさか日本が勝てるとは思わなんだ…

すまん、日本代表の実力を過小評価してたわw


『次のシュタイナーとの一戦に勝てれば、そのまま優勝まで突っ走っちゃうんじゃないかな?』



 つまり、クリスは私が育てた!


 ブックメーカーに1万ドル賭けてもいいくらいだよ。

 というか、お爺ちゃんに頼んで本当に賭けておいてもらおうかな?


 どうせ、お爺ちゃんは私に10万ドルぐらい賭けていたはずだから、その穴埋めをしてあげないとね。

 でも、これからも今回のように私が負けることはあるのだから、賭けるにしても金額を減らすように、お爺ちゃんに言っておいたほうが無難でしょうね。



『まだシュタイナーと決まったわけではありませんよ?』


『そうでしたね。相手選手に失礼でしたね。発言を取り消します』



 発言を訂正してお詫び申し上げますだったら、不祥事を起こした政治家の答弁みたいになるから止めておきました。

 まあそれでも、シュタイナーの対戦相手が予選を勝ち上がってきた150位ぐらいの選手なのだから、アクシデントでもない限りは、R128でシュタイナーが負けることはありえないでしょう。



『試合後にクリスと握手を交わした時、クリスは笑ってましたけど、ニワノ選手は何を伝えたのでしょうか?』


『女同士の秘密ですと言いたいところですけど、ありきたりに優勝目指して頑張ってと応援しただけです』


『本当ですか? それだけで、クリスがあんなにも笑うとは思えないのですが?』



 そこに突っ込まないで、流してくれたらいいのに。

 使えねーな。



『う~ん、そうですねぇ。これは私の口から言うよりも、もっと詳しい内容を知りたかったら、クリスにでも聞いてみてください』


『ああ、なるほど。だから、女性同士の秘密ということでしたか』


『クリスが優勝したら、たぶん教えてくれると思いますよ?』


『優勝までお預けですか?』


『たぶんですけど』



 私との対戦が実質的には決勝戦だったとか、自分の口から言えるわけないじゃないですかー。

 微妙に空気が読めてないと自覚しているたまきちゃんですけど、さすがにそれぐらいは、私にも分かりますってば。



『次の質問に移りますけど、初めてグランドスラムの舞台でプレーした感想を教えてください』


『そうですね、私はまだプロツアーの経験が浅いので、なんとも言えないところもありますけど、それでもやはり、グランドスラムは特別な雰囲気があると感じました』


『特別な雰囲気ですか?』


『歴史と伝統とでも言い換えればいいのかな?』



 こういう言葉は、大人にウケが良いんだよね。

 グランドスラム四大会の主催者も、きっと喜んでくれるに違いありません。


 たまきちゃんは本音を仮面の下に隠して、笑顔で優等生を演じるのだから。

 ……たぶんだけど。


 まあ、冗談はさておき、私自身もグランドスラムは特別だと思っていますので、リスペクトする存在なんですよね。



『緊張はしましたか?』


『特に緊張するとかはありませんでしたけど、観客の熱気は凄かったですね』


『プレーをしたマーガレット・コート・アリーナはどうでしたか?』


『観客席の角度が浅いので、プレーしていても開放感があって気に入りました』



 観客席が垂直に近いと圧迫感が半端ないんですよね。

 まあ、それでも苦手とかまでの感覚ではないのが救いですけど。


 あと、私の場合は、室内コートってあまり好きではありません。

 個人的な感想を言わせてもらえれば、テニスって屋外でするスポーツだと、私は思っていますので。


 雨が降ったりして開閉式の屋根が閉まって、疑似的に室内コートになるのは、まあ、なんとなく許容範囲なんですけどね。

 もしかしたら、天井の高さとかが心理的に関係しているのかも知れません。



『最後のタイブレークの時に、37-38のセカンドサーブの場面でアンダーサーブで打つのを宣告しましたけど、あれはどうして宣言したのでしょうか?』


『どうしてって言われてもなぁ。逆に私が黙ってアンダーサーブを入れたら、どうなると思います?』


『おそらくは、観客からのブーイングが鳴りやまないでしょうね』


『そういうことです。仮にそれで私がクリスに勝てたとしてもファンは納得しないでしょうし、私も罵られるのは嫌ですよ』


『わかりました』



 つまり、自己保身ということですな。



『まあ、2ブレイクダウンとか負けている状態であれば、戦術として黙ってアンダーサーブを使うのも、それはそれでアリだとは思います』


『互角の試合展開や勝っている場合では、アンダーサーブを使うなということですね?』


『ジュニア時代に勝っている場面で何度か使って、怒られたことがあるんですよね』


『フェアプレーの精神に反する行為ということですね?』


『まあ、アンダーサーブは騙し討ちみたいなモノですからねぇ』



 でも、ドロップショットは怒られないんだよね。

 ちょっと不思議な感じもしますけど。



『どうして、あの場面でアンダーサーブを選択したのでしょうか?』


『あー、あの時はもう体力の限界で普通にオーバーハンドでサーブしたら、ダブルフォルトになると思ったんですよね』


『ダブルフォルトになれば、そこでゲームセットでしたね』


『だから記者さんも、悪くない選択だったと思いませんか?』



 まあ、結局のところ負けはしましたけど、アンダーサーブで7ポイント粘れたのは収穫だったと思います。



『アンダーサーブで42-40まで粘りましたから、そうですね』


『私ってママのマドカ・ニワノに似て、諦めが悪いんですよ』


『『『あはは~』』』



 うん、やっぱ庭野まどかは諦めの悪い、しぶとくて強情で執念深い蛇みたいな女だと、みんなから思われていたみたいだということが、この度の調査結果で判明しました。

 うん、ママを怒らせないように気を付けねば。



『他に質問はございませんか? 時間も迫ってますので、なければこれで終了とさせていただきます』



 主催者であるTAの人かな? イベント会社の人かも知れないけど、ともかく進行役の人が会見の終了を宣言しようとしたら、おもむろに手を挙げた記者がいました。

 空気を読んで終わりにしてくれよ…… 私はヘトヘトに疲れているんだぞ。



『もしかしたら、これは答えにくい質問かもしれないですけど、よろしいでしょうか?』



 そういうのは、できたら勘弁して欲しいかな?



『体重とスリーサイズ以外のことでしたら』


『『『はははは~』』』



 お約束ネタだから、当然ウケましたね。



『体重とスリーサイズはダメなんですか? それは残念です』


『記者さんの後ろに、メルボルン警察のお巡りさんが……』


『え?』



 おまわりさん、この人です!



『罪状はセクシャルハラスメントか児童福祉法違反でしょうか?』


『『『あっはっはっは~』』』



 笑ってくれるのだから、記者さんもノリが良いですね。

 冗談だよとの意味も込めて、サービスでウィンクしておきましょう。


 あざとい?


 女の子は、あざといぐらいがちょうど良いんだよ!



『それで、真面目な話に戻るとしまして、質問に関してですけど、私が話せる範囲であれば話しますよ』


『それでは、お言葉に甘えまして…… 最初のほうで選手の記者会見拒否の話題が少し出ましたけど、これについてニワノ選手はどう思われますか?』


『う~ん…… センシティブで微妙な質問ですね』



 こういう、どちらか一方の肩を持つような発言をさせられそうになるのは、できればスルーしたい問題なんですよね。

 あちらを立てればこちらが立たず。これになりそうな気配がプンプンと漂ってますもんね。


 まあ、一応でいいのなら答えるてあげるけどさ。



『はい、センシティブな質問内容ですので、答え難いのであれば無理に答えてもらわなくても結構です』


『あくまでも、私の個人的な意見でも良いですか?』



 というか、私の口から出る言葉で、個人的じゃない意見ってあるのだろうか?

 そっちのほうが微妙ですよね?


 全部、個人の感想。これに収斂されるような気がしますね。



『それで構いません』


『プロにとっての記者会見というのは、ドーピング検査と一緒ですよ』


『ドーピング検査と同じですか? もう少し噛み砕いてお願いします』



 この記者さんは分かっていて、鈍い人でも理解できるようにと追加の説明を求めてくるあたり、根は優しい人なんだろうなぁ。

 もし、記者さん本人が分かってないから、自分のために嚙み砕いて説明しろと言っているのであれば、記者失格クラスの読解力のなさでビビるけど。


 あーでも、たとえ言葉を操るプロの記者だとしても、言葉を額面通りにしか受け取れない人がいたとしても、それはそれで別におかしくはないのかな?

 まあ、それでも、読解力の低い人は入社試験で落とされそうな気もしますね。


 フリーランスの記者のことまでは知らん。



『基本的に記者会見というのは、プロ選手にとっての義務だとは思うんですよ』


『ああ、ニワノ選手は最初にも、そう述べてましたね。義務だから、それでドーピング検査と同列に並べたのですね』



 ファンも選手の試合前や試合後の気持ちを知りたいだろうし、そのファンの知りたいという要望に応えるのも、プロの仕事に含まれているはずであります。


 マスコミが映像を流したり記事を書いてくれて、それが人の目に留まってくれなければ、ファンというのは増えないのだから。

 ファンが増えないと、スポンサーとの契約料の金額も増えませんしね。


 つまり、アスリートとマスメディアというのは、お互いに持ちつ持たれつの関係なんだと思います。



『基本的には、ですよ』


『では、例外もありえると?』



 物事には何事も例外は付き物でっせ。

 まあ、それでも私は、融通の利かない杓子定規も結構好きなんですけどね。


 公平性を担保するには、杓子定規が一番だと思いますので。



『豆腐メンタルな人の場合だと、記者会見でメンタルにダメージを受けるから拒否するんですよね?』


『トーフメンタル?』


『ああ、日本の食べ物である豆腐のことです。トーフ知ってますか?』



 トーフはジャパニーズソウルフードの代表的な品の一つでっせ。

 あ、そう考えていたら、冷ややっこが食べたくなってきたよ。


 ポンポン減った……



『そのトーフなら知っています』


『ほら、豆腐って柔らかいから直ぐグチャグチャになるでしょ? だから、メンタルがクソ雑魚ナメクジな人のことを、豆腐メンタルと呼ぶのです』


『ちょっ、放送禁止用語が混ざってますよ!』



 うん? 禁止用語?

 それって、つまり言葉狩りでしょうか?


 まったくもって、世知辛い世の中になったものだぜ。

 ふぁっきん!



また記者会見が終わらなかった…

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― 新着の感想 ―
[一言] 「『試合後のインタビューは義務だ』と試合に負けて号泣している対戦相手をインタビューの場に引きずり出したくせに、自分は『鬱気味だから』と言ってインタビューを拒否する選手がいたじゃないですか。そ…
[一言] クソ雑魚ナメクジメンタルって英語でなんて表現してるんだろう? チキンハートの強化版ですかね。 メンタルファッ○ー?
[良い点] 糞雑魚蛞蝓は禁止用語だった?(漢字に逃げる読者) 全豪の共同記者会見だから英語のせいかな?
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