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1 1-0 40-40 Team Madoka


「二学期からは、私もチームマドカでお世話になるから!」


「は?」


「『は?』とは、なによ? アンタ、私が一緒では不満なわけ?」


「不満などあり得ません!」



 優梨愛ちゃんと毎日練習ができるということは、それだけママ以外との練習時間が増えるので、私にとっても願ったり叶ったりの話なのだ。

 べつに、ママとの練習が嫌って訳ではないからね?


 色々な人と練習した方が、色々と為になるということです。だから、いままでもママの伝手で入れ代わり立ち代わり、色々な人とも練習していたのですよ。

 練習相手がみんな年上の人ばかりだったのは、主に私のレベルのせいなんだけどね。だから、優梨愛ちゃんは初めて同世代の練習パートナーということだ。


 つまりこれって、優梨愛ちゃんがママに認められたということなのか。

 もしかしたら、本格的にダブルスのパートナーとしてというのもあるのかも知れない。


 庭野まどかというテニスプレイヤーは、シングルスでも一流の選手だったけど、ダブルスでは超が付くほどの一流の選手だったのだ。

 つまり、ママのホームグラウンドはダブルスということです。


 だから、私には見えなくて、ママには優梨愛ちゃんのダブルスの適性なんかが、ちゃんと見えているのかも知れない。

 つまり、私は前世ではダブルスは、あまり得意じゃなかったんだよなぁ。ということでして。


 ダブルスはコートの面積が広がるから、シングルスに戻った時に感覚が狂うので、サイドラインを越えてアウトのリターンを打ちやすくなってしまうのだ。これは、前世の私の場合なんだけどね。


 でも、私と似たような経験をして、プレーに苦労した経験がある選手も中にはいるよね?

 いなかったら、泣いてやる。


 ようするに、前世の私は不器用だったのであろう。

 しかし、今世では意外と器用なのだ。だからもしかしたら、この心配は杞憂なのかも知れないけど。


 でも、ダブルスって賞金が安すぎるし……


 ダブルスの賞金ってシングルスの1/6とかの賞金なんだよ?

 その安い賞金をさらに折半する訳だから、実質的にはシングルスの1/12位の賞金になってしまうのだ。


 仮に、シングルスの優勝賞金が10万ドルの大会があったとしよう。その場合のダブルスの優勝賞金は、1万6千ドル程度なのである。これの半分だから、8千ドルが一人の選手の取り分となる。


 これを、女子のWTAツアーの賞金に当て嵌めてみると、インターナショナル大会(男子のATP250に相当する)の賞金よりは多く、プレミアの賞金よりちょっと少ない程度なのだ。

 つまり、女子ツアーのダブルスで優勝しても、その程度の賞金しかもらえませんよ。ということである。


 大会によって多少は上下するけど、良くても1/4程度だと思っておいて下さい。

 まあそれでも、ママぐらいダブルスで強ければ稼げるのだけどね。


 そうでなくては、ママが日本人歴代一位の賞金ランキングに、十数年も居座り続ける事などできはしない。

 もう既に小坂なおみには、あっさりと抜かれたけどさ。でもそれは、活躍した年代が違うし、賞金額も違うから仕方ないよね。


 それに、ママとか極一部の例外選手を除いて、ダブルスというのは、シングルスで落ち目になった選手が戦う場でもあるのだ。

 私は落ち目もなにも、まだプロのコートにすら立てない、小学生なんだから、そんな先の事まで心配しても仕方ないのかも知れないけどさ。


 しかし、誰がなんと言おうが、テニスとはシングルスあってこその、ダブルスなのだ!

 ということで、母上様、シングルス優先でお願いします。



「なら、いいじゃん」


「でも、マジですか?」


「うん、本気と書いてマジです」


「古っ! 優梨愛ちゃんから昭和の加齢臭が漂ってきたよ。ちょっとショック……」



 チャンピオンだったかな? 前世の記憶的に漫画喫茶かどこかで読んだ記憶があるぞ。



「なんのネタなのか知らないけど、加齢臭とは失礼な!」


「昔のマンガだから、ごめんちゃい」


「ああ、そういうことね」


「それで、優梨愛ちゃんは、なんでうちに移籍してくるの? もちろん大歓迎ではあるのだけど」



 そう、なんでわざわざ、テニスの名門であるSTCを辞めてまでして、うちに来るのかが分からないのだ。

 テニスをする環境で言えば、STCは申し分ない環境なのです。ハードコートだし、おまけに、室内コートなんだから、雨の日にでも練習が出来るのだ。



「環希と一緒に練習がしたかった。これじゃダメかな?」


「いえ、光栄であります!」


「堅苦しい言い方だね」


「圧迫面接みたいだったから、なんとなく?」


「採用面接なんて受けたことないでしょうーが」



 そもそも、採用面接なんて受けたことなかった。今世では当然ないですし、前世でもなかったよ。



「まあ、アンタと一緒に練習がしたかったのも本当なんだけど、それだけではないんだよね」


「それ以外にもあると?」


「まず、第一に自宅から近い!」


「優梨愛ちゃんの家は、私の家から電車で二駅だもんね」



 そう、優梨愛ちゃんの住んでいる場所は、案外ご近所さんだったのである。世間というものは意外と狭いモノなんだなぁ。とか思ってみたりして。

 電車で二駅離れているというのは、子供にとっては隣の更に隣町というイメージかもしれないけど、大人に言わせてみれば、ご近所さんなのだ。



「STCには、行くのに電車とバスを三回も乗り継いで、一時間半近く掛かっていたから」


「あそこは藤沢だから、優梨愛ちゃんの家からだと、遠いよね」


「実際に遠かったんだよね。まだ行きはいいけど、帰りがつらい」


「寝過ごしてしまったとか、あったりして?」


「あったあった。気付いたら品川で焦ったよ~」


「それは泣ける。ご愁傷様でした」



 でも、湘南新宿ラインで籠原や小金井とかまで、行かなくて良かったね。

 小金井といっても、東京の国分寺の隣の小金井ではないよ? 栃木県下野市の小金井であります。



「だから移動するだけで、往復で三時間は時間がもったいないということだよ」


「まあ、私の家なら電車だけなら10分も掛からないから近いよね」


「有名テニススクールというだけで、お母さんが自宅からの距離も考えないで申し込んでしまったんだよ」



 それは、おそらく横浜と藤沢は隣接しているから、「お隣の市だから近所だわ!」とかいう、安易な発想もあったような気がしますね。

 人口も大阪よりも多いし、実は横浜は結構広いんだよ。



「親はどうしても、実績のある有名なテニススクールに入れたいって思うんだよ」


「でも、家に帰り着いたら、夜の十時半とかなんだよ。信じられる?」



 そうか、STCでは夜の九時まで練習していたのか。そういや、前にも優梨愛ちゃんに聞いたな。半分近く、眠い、疲れる、朝起きれない。とかの愚痴だったけど。

 私の場合は、夜は遅くても七時には切り上げてるからなぁ。その代わり学校から帰ってきたら、直ぐに練習始めているけど。


 そう考えると、自宅の庭で練習できる私って、やっぱ恵まれているんだよね。


 それに、私なんて夜は九時半には寝ていて夢の中なのだから、私がSTCに通っていたら、籠原か小金井まで行っちゃう自信があるぞ。

 宇都宮や高崎までは行かなくて助かるのかな? それも微妙ですね。



「小学生じゃなくて、サラリーマンかOLみたいな生活だわ」


「そうでしょ? いくらテニスをやっているジュニアが特殊な環境とはいえ、ちょっとありえないよねー」


「私ならば、一週間と持たないでスクール辞めてるよ。優梨愛ちゃんは我慢強いなぁ」



 初日の帰りに小金井まで行ってしまって、泣いて二日目で逃げ出してるかもね?

 まあ、中身は大人なんだから寝過ごした程度では、泣かないけどさ。



「環希ちゃん、慰めて」


「お~、よしよし」



 なでなで。


 まだ、私の方が5~6cmぐらい低いなぁ。

 私が142cmだから、優梨愛ちゃんは148cmぐらいかな?


 ついでに、くんかくんか。

 汗くせぇ。


 でもまあ、真夏でテニスの試合の後だから、それもそうだったか。

 ということは、私も汗臭いということだ。


サブタイを悩んだ…


a ジュニア選手はつらいよ

b 湘南新宿ライン

c 気が付けば籠原

d ダブルス選手はつらいよ


などなどw

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