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154話 当て馬って、なんだっけ?

前回に引き続き萌香視点で、香港行きの飛行機の中でダラダラと、だべってますw

あと、感想で萌香のポイントでどれだけ稼げているのか気になるとのことでしたので、ポイントのあとに金額を入れて話も少し付け加えてみましたので、よろしければ前話もご覧ください。



「格差社会をまざまざと見せつけられた気がしません?」


「飛行機の座席もそうだけど、わたしたちが出場するITF25k大会と、たまきちゃんが出るWTA250大会との差もあるよー」


「まあ、今回の環希の場合は、オークランドのワイルドカードを貰えたからなんだけどね」



 ワイルドカードかぁ。わたしもオークランドか深圳のワイルドカードを申請すればよかったかな?

 1月の第1週目は、ブリスベンで開催されるWTA500とオークランドWTA250に深圳WTA250と3ヶ所で同時に開催されるから、選手がバラけて集まりが悪くなるのだから、ワイルドカードの申請が通る可能性もワンチャンあったかも知れない。


 でも、自国開催でもないのだから、わたしの461位というランキングでは却下されるのがオチだったろうね。


 どっちやねん!


 よしんば、わたしのワイルドカード申請が通ったとしても、ランキング600位台の優梨愛ちゃんは絶対に無理なはずだから、優梨愛ちゃんとダブルスのペアが組めなくなるという問題も生じていたのか。

 ジュニアといえども、グランドスラム4大会その全てでファイナリストに成れた、わたしとダブルスでペアを組む優梨愛ちゃんとの相性は抜群なのだから、優梨愛ちゃんとペアを組めなくなるのは塩梅が悪いですね。


 でも、優梨愛ちゃんには学校という問題がありましたね。

 今回の遠征でも優梨愛ちゃんは、香港の2週連続での大会が終わったら、一度日本に帰国して高校に通学する予定になっているのだから。


 わたしは香港の次に、シンガポールの25kの出場を予定しているのです。

 優梨愛ちゃんとは、2月の京都60k大会で再合流の予定になっています。


 ちなみに、わたしの残りの高校生活は、京都60kの翌週にある卒業式に出席するだけです。



「オークランド250の賞金総額って50万ドルですよね?」


「わたしたちが出る香港25kは、そのまんま2万5千ドル大会だからね?」


「それは分かってますよ」


「たまきちゃんの場合、初戦で負けたとしても4400ドル貰えるしねー」



 そりゃあ、気楽にプレエコから2万円払ってビジネスにアップグレードできるよね。

 その前に、たまきちゃんはドバイ100kで優勝しているから、もう既に1万2千ドルを稼いでいたんだっけ。


 そりゃあ、気楽にプレエコから2万円払ってビジネスにアップグレードできるわ。

 逆に最初からビジネスクラスではないと考えれば、慎ましいとも言えるのかな?


 それと、たまきちゃんには、中東の石油王が経営する航空会社がスポンサーに付いたのでしたね。

 たまきちゃんは、「勝てば勝つほどボーナスが増える!」とか、鼻息も荒く言ってましたね。


 つまり、インセンティブの歩合が大きいということなのでしょう。

 いくら、たまきちゃんが有名とはいっても、プロのテニス選手としての実績は皆無に等しいのだから、ベースの金額は低く抑えられたんだろうね。


 でも、日本人なのに日系の航空会社がスポンサーじゃないのか……



「25kの優勝賞金よりも高いですね……」


「優勝すれば、8万ドルだよー」


「25kと比べて、20倍の差か~」



 賞金でいったら圧倒的にシングルスの方が上なんだけど、勝ち上がるのが厳しいのも、またシングルスの方が上なのだ。

 その点、優梨愛ちゃんと組んだダブルスの方が、勝ち上がれる確率は高いであろう。



「上を見て嘆くよりも、上を目指して這い上がる努力をする方が建設的だよ」



 でもこれからは、シングルスとダブルス。どっちに比重を置いてサーキットを回るのか、ちょっと考えないといけないのかも知れませんね。



「それは坂巻の言うとおりだな」


「プロが実力の世界だとは、あたしも理解しています」



 わたしもプロテニスプレイヤーになったからには、自分の限界まではシングルスで上を目指してみたいですしね。

 そう、グランドスラムでのシングルス本戦出場は、テニス選手だったら誰もが目指す場所なのだから。



「まあ、あの娘は、ちょっくらテニスの歴史に名を刻み込んでくるとか、ほざいていたけど」


「それって、WTA初出場で初優勝するつもりってことですか?」


「そういうことだわ」


「たまきちゃんらしいですね。でも、有言実行しちゃいそうな気がしますよー」


「500のブリスベンや同じ250でも賞金の高い深圳に比べたら、オークランド250は出場する選手の面子が一枚落ちるから、可能性はあるわね」



 ブリスベンの賞金総額は200万ドルなんだよね。さすがに、WTA500なだけのことはあって高いですね。

 だから、トップ50の選手のうち7~8割はブリスベンの500大会に参加していると思います。


 また深圳の場合は、WTA250でも、75万ドル大会になっています。

 チャイナマネーなのか? そうなのか?


 そして、賞金よりも確実にポイントを積み重ねたいトップ100の中堅選手が、オークランドの250大会に出場するということが多いのでしょうね。

 まあ、トップ50の選手でも数人はオークランドに出場しているとは思うけど、これもポイントを稼ぐためでしょう。


 あと、ドローを見たかぎりでは、大会の目玉として、一人だけトップ10選手をアピアランス・フィーを付けて呼んでいるみたいですね。

 わたしも活躍して、アピアランス・フィーを貰えるような選手になりたいものです。


 でも、たまきちゃんがオークランド250大会で優勝するにあたっての最大の障壁は、このトップ10選手になるんだろうな。

 まあ、対戦する前に途中で負ける可能性も十分にあるんだけどさ。



「ワイルドカードといえば、たまきちゃんは全豪オープンもワイルドカードで本戦に出場予定だもんね」


「あたしたちにもダブルスのワイルドカード出して欲しかったです」



 わたしと優梨愛ちゃんがオーストラリア人だったら、おそらくワイルドカードを貰えただろうね。



「環希はジュニアで実質無敗だったから、主催者もワイルドカードで招待したんだろう」


「たまきちゃんのネームバリューは、もう既にワールドクラスですからねー」



 元ダブルスの女王であったまどかコーチの娘で、ジュニア無敗の肩書きは伊達ではないからね。



「でも、環希ってプロデビューしたてだし、ノーランキングの癖に生意気って思われてそうですよね」


「あはは、やっかみ半分でそう思っている人も多そうだね」



 まあ、やっかまれるのも、たまきちゃんの人気がある証拠だとは思うけど。



「全豪オープンって一回戦で負けたとしても、12万ドル貰えるんですよね?」


「12万ドルは12万ドルでも、オーストラリアドルでだけどね」



 ちなみに、全豪オープンシングルスの優勝賞金は400万豪ドルになります。

 一時期、優勝賞金を下げて、予選敗退者やR128やR64敗退者に賞金を振り分けて増額していたのだけど、「優勝者へのリスペクトが足りないんじゃね?」とかの声もあってなのか、優勝賞金も増額されるようになりました。


 だから、優勝賞金を元に戻したが正解なのかな?



「オーストラリアドルって、いくらぐらいでしたっけ?」



 優梨愛ちゃんの言葉に、わたしはスマホに豪ドル円と入力することにした。



「80円ぐらいだね」


「それでも、日本円で960万なんだから凄いですよ」


「あなたたちもシングルスでグランドスラム本戦に出場できるトップ100入りを目指しなさい」



 プロのテニス選手で安定的に食べていけるラインというのが、グランドスラム本戦にダイレクトで出場が可能なトップ100とか言われているのです。

 もっとも、100位以下の選手が食べていけないという訳ではないけど。



「グランドスラム4大会の全てで本戦に出場できたら、それだけで4千万近くの収入ですね」


「そうなるわね。100位内をキープできれば収入が安定するから」



 それでも、グランドスラムの予選にすら出場できない、ランキング200位以下の選手の経済的事情は厳しいモノがあると思います。

 でも日本人選手の場合は、仮にランキングが200位以下であったとしても、かなり恵まれている部類に入るんだろうなぁ。


 わたしもプロデビューするにあたって、湘南銀行がメインスポンサーに付いてくれたもんね。

 まあ、わたしの場合は、お父さんが湘南銀行の支店長という、将来の幹部候補だったのも大きかったとは思うけど。


 縁故コネ、万歳!


 もっとも、わたしと優梨愛ちゃんの場合は、ダブルスとはいえジュニア時代の実績があったのも、スポンサーが付くのにあたって、かなり良い影響を与えてくれていたはずだけどね。



「それにしても、環希の二週連続で本戦のワイルドカードとかズルい気がしないでもない」



 正確に言えば、オークランドの翌週に、シドニーとタスマニアのホバートで大会があって、全豪オープンは翌々週なんだけど、些細なことでしたか。



「でも、あの娘の歳では、ワイルドカードは年に三回までという制限もあるのよ」



 へー、そうだったんだ。18歳である私の場合だと、ワイルドカードで出場できる大会は年に6大会までだったはずでしたね。

 まあ、その6回のワイルドカードうち、本戦ワイルドカードは3回までという制限はあるけどね。


 つまり、ワイルドカードとはいっても、最低3回は予選ワイルドカードということになります。



「じゃあ、ワイルドカードで出場した試合で結果を残せなかったら?」


「あなたたちと同じように、25k大会とかのITFサーキットをドサ廻りね」


「そこは公平なんですね」



 だから、ワイルドカードで貰ったチャンスを確実にモノにして、ポイントを積み重ねないと後々に響いてきて厳しくなるんですよね。



「依怙贔屓にも限度を設けなければ、他の選手の不平不満が溜まるから節度は大切よ」


「それもそうでしたね」


「それとね、全豪オープンでの環希は当て馬よ」



 当て馬? ……当て馬って、なんだっけ?

 確か種付けしたいのに種付けさせてもらえない、可哀想なお馬さんのことだったよね?



飛行機の中から出られなかった…


不定期更新なのじゃ

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― 新着の感想 ―
[良い点] トップ10選手との対戦で環希の全力が見れるのか楽しみ まだ事実上公式無敗ですからねえ やっと底が見えるかしら・・・
[良い点] 以前、ずっと読んでいました 2年9ヵ月振りの復活、嬉しいです! [一言] 無理せず、作者様のマイペースでお書き下さい
[気になる点] エ○レーツがスポンサーなら、欧州へはドバイ経由になるのかな? ウクライナ問題がある世界だと直行便と距離的に大差なくて、環希ちゃん的に良かったかもね。
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