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149話 正当なる権利

相変わらずサブタイに悩む…


 庭野環希@tamakiniwano - 38分

 ハイヤーがお出迎えなう!

 □ 6    ↱↲ 598    ♡ 712    ⇧




 ※※※※※※




「それじゃあ、いってきまーす!」


「気を付けていってらっしゃい」


「しっかりやってくるんじゃぞ。百合ちゃん頼んだよ」


「お任せください」


「お土産楽しみに待っててねー!」


「中東のお土産って何があるのかしら?」



 そうえいば、中東の名産品って全然知らないなぁ。

 ナツメグ? ナツメヤシ? 名前だけ似ているだけの気がしないでもない。



「ナツメヤシとかかの?」


「デーツは美容やアンチエイジングの効果があるとか言われていますね」


「百合子、たくさん買ってきて!」


「たまちゃん、おばあちゃんの分もお願いするわ」


「りょーかいしました」



 ママとおばあちゃんの気迫が鬼気迫る勢いだったのが少し怖かったよ。

 女性にとって美容と若さというのは、永遠のテーマということなのでしょう。


 でも、デーツならば日本のスーパーにも売ってまっせ。




 ※※※※※※




 庭野環希@tamakiniwano - 1分

 羽田なう!

 □ 11    ↱↲ 779    ♡ 953    ⇧




 ※※※※※※




 時刻は夜の10時を過ぎたあたり。場所は羽田空港国際線ターミナル制限エリア。

 飛行機に搭乗する時間まで、まだ二時間ぐらいありますね。



「環希ちゃん、乞」


「さあ、乞食するぞー!」


「……ちっ!」



 今回は正当なる権利を行使して、鶴さんのラウンジにお邪魔しております。

 目指すのはもちろん、鶴さん謹製のオリジナルビーフカレーであります!


 これを食べずに日本を離れるなど、とんでもない! そう思わせる何かが、鶴さんのビーフカレーにはある気がしますね。


 そう、今日はこれからドバイに向けて飛び立つのであります。

 私も三日前に、14歳の誕生日を迎えました。つまり、ようやく私もプロサーキットの出場資格を手に入れたのであります!


 なんで、テニスのシーズンオフにドバイかといいますと、十月のジュニアマスターズの大会が終わって、日本に帰国した直後に一本の電話が掛かってきたところまで、話は遡ります。




 ※※※※※※




「環希、あなたプロサーキットはどうしたい?」


「どうとは、どういう意味で? どの大会から参加するのかってこと?」



 私としては、正月に香港で開催される25k大会から地道にスタートしようと思っていたんだけど、ママの口ぶりからするとどうやら違う感じがしますね。



「そう、さっきドバイから電話が掛かってきて、十二月の10万ドル大会のワイルドカードあげるから出てみないかって話をもらったのよ」


「100kかぁ。新人の私にとっては、ポイント的に美味しいよね」


「優勝したら140ポイント、いや、プラスエイチだから150ポイントね」


「ワイルドカードで出るって先方さんに伝えといて」



 プロサーキットのポイントを持っていない私は普通では、いきなり100k大会に出場することは出来ないのだから、こういうチャンスを貰えた時に積極的に活用しないとね!



「わかったわ。それと、来年はジュニアの大会をどうしたいのかというのもあるのよ」


「いまさらジュニアの大会と言われてもねー」


「ジュニアの試合に出るつもりはないというわけね?」


「プロにならないで、ジュニアとの二足の草鞋のままだと、プロの大会で優勝したとしても賞金が全額は貰えなくなっちゃうじゃん」


「環希、あなたって存外お金に五月蝿いわね」


「ママの娘ですから」



 ジュニア選手が貰える賞金は最大でも、4,000ドルぐらいまでが上限になってしまうのですよ。

 つまり、25k大会の優勝賞金ぐらいまでなら、アマチュア選手でも遠征費と日当で貰えるというわけですな。



「はぁ~まったく…… それよりも、もう既に優勝することが前提なの?」


「インターナショナル程度だったら、ドローの面子次第では今すぐにでも優勝できる自信はあるよ!」


「現役のプロ選手には聞かせられない言葉だわ……」


「言ってしまえば、ラケットで張り倒される自覚はあるよ」


「分かっているのなら、口は慎みなさい。外では絶対に!」


「あいあいさー」


「特にSNS! 今度やらかしたらスマホ没収するわよ!」


「いえすまむ! 肝に銘じておきます!」


「それで、来年プロサーキット一本に絞ったら、環希は出場制限に泣かされるわよ」



 そっか、その心配があったのでしたか。



「14歳だと年間8大会までだっけ?」


「そういうこと。まあ、いきなり活躍すれば例外として、プラス4大会とか加算してくれるかも知れないけど」



 WTA/ITFのプロサーキットには、17才までは年間で出場できる大会に制限があるのです。

 14才→8大会、15才→10大会、16才→13大会、17才→17大会と、こんな感じになります。


 これは、十代の少女はまだ身体が出来上がってないので、過密日程のツアーで無理をさせたくないのと、燃え尽き症候群を防ぐためだとかなんとか聞きましたね。

 しかし、14才の8大会までは、あまりにも少なすぎる……



「そういえば、過去にも何人か例外を認められた選手がいたね」


「そうね、その例外で出場制限を緩和されて、その年のうちにインターナショナルを優勝した子もいたわね」


「それって、ガルフウェイだっけ? 特例の期待に見事に応えてみせたってことだね」


「よく知ってたわね。その後、彼女は世界ランキング一位にも輝いたのだから、例外が認められるのは特別な存在だけよ」


「つまり、私も最初の8大会の中で、才能と実績を見せつければいいんでしょ?」


「まあ、そういうことになるわね」



 ランキングが低い選手は、ワイルドカードを貰えた大会で確実にポイントを稼いでランキングを上げないと、自分が出場したいと思った大会でも、ランキング上位の選手で出場枠が埋まってしまい、弾かれて出場できなくなってしまうのです。

 そもそも私は、プロサーキットのポイント0のノーランキングなのだから、ドバイのワイルドカードの話は私にとって渡りに船とも言える話なのである。



「100kってどれぐらいのレベルの選手が出場するの?」


「シーズンオフだから普段はWTAに出場しているような、50位ぐらいの選手も出てくるはずよ」


「ランキング50位の選手がITFの大会ねぇ」



 オフシーズンの小銭稼ぎなのか? それとも弱い者いじめのポイント稼ぎなのかな?

 まあ、女子は男子に比べたらランキングによる実力差が小さいみたいだから、50位の選手であったとしても、いとも簡単に200位台の選手にコロッと負けたりもするのですがね。


 つまり、私にも優勝するチャンスが十分にあるということであります。



「ウィンブルドンの時に、ヒッティングパートナーをした相手より格下の選手ばかりよ」


「それなら、私がプロの大会初出場で初優勝も狙えそうだね!」


「ドバイの主催者としても、環希にその可能性があるからワイルドカードを出すのよ」


「あはっ、話題作りの客寄せパンダでしたか」



 アラブのお金持ちは、そういうの好きそうだもんね。

 いや? この手の話は、アラブのお金持ちに限ったことではないのかな?


 興行を生業にしている人は、話題を作るのに敏感というのが正解なのかも知れませんね。



「プロは客寄せパンダを演じられてナンボだわ」


「それはママの言うとおりだよね」



 さすがは、ダブルスの女王だった庭野まどかですね。プロフェッショナルというモノをよく分かってらっしゃる。




 ※※※※※※




 そんなことがありまして、私が初めてプロサーキットに出場する大会は、ドバイのITF100k大会となったわけなのでした。


 それで今回の大会は、+H。つまり、ホスピタリティが付く大会ですので、ドバイまでの交通費と宿泊費は主催者持ちであります。

 もっとも、私の場合は主催者の側から、「ワイルドカードあげるから、大会に出てみない?」そう言ってきましたので、たとえホスピタリティが付かない大会であったとしても、飛行機のチケットぐらい送って寄越したとは思いますが。


 なんといっても、アラブのお金持ちが主催者ですしね!


 それで、私の手元にあるEチケットを印刷したの控えには、なぜかファーストクラスの文字が……

 ただのホスピタリティが付く大会で、ファーストクラスのチケットを寄越すはずはありません。


 それに、ホスピタリティが付く大会の場合、普通は既定の航空運賃分のお金を大会会場で後から貰う仕組みになっているのです。

 これはアラブのお金持ちを相手に、接待テニスでもさせられるのかな?


 私は佐賀で経験しているから、こういうことには詳しいのですよ。


ボクは○○には詳しいんだ。(死亡フラグ


実際にジュニア選手がプロの大会で最大どれだけ手当てが貰えるのかまでは知りません。

この平行世界では、こうということでw

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― 新着の感想 ―
[気になる点] テニスにうといのですが、ワイルドカードって主催者推薦枠か、本戦出場権のどれかがあってるのですか?
[良い点] やった!!プロタマキンだ!!
[一言] ようやくテニスに戻ってきましたね
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