124話 先入観を持たないで
ウィンブルドンも終わって、夏休みに入りました。
テニスは全米オープンまで、北米でのハードコートのシーズンに突入ということになります。
なんか前にも似たような出だしがあったような気もするけど、私の語彙が貧弱なんだよ!
文句あるか? ないよね?
それで、今日は自宅の近所にある、ララポートにお邪魔しているのです。
まあ、近所とはいっても、ララポートの最寄り駅は鴨居駅ですから、小机駅から電車で一駅は離れているのですがね。
個人的には、ろぴあの方が好きだったりもするのですけど。だって、ろぴあってお安いですし、私の家からの距離もろぴあの方が近いんですよね。
それでも、ろぴあまで2km近くは離れているけどさ。
といいますか、横浜以外のララポートだったら、ろぴあもララポートに入っていたりするのですけどね。
横浜では、ララポートとろぴあはライバル関係で、他の場所では協力関係とかちょっと面白い感じがします。
そうか、ララポートというのは大家さんであって、出店する店子のライバルが近所にあっても、あまり大家には関係ないのかも知れませんね。
それで話を戻しますと、小机という場所は、北に鶴見川があって南は小机駅を挟んで山ですし、発展の余地が限られている土地なんですよね。
東も新横浜が直ぐ側なのに、鳥山川が邪魔をしていて新横浜と分断されているから、新横浜の発展が小机まで波及してこないのですよ。
西側は第三京浜が邪魔をしていますしね。オマケに水没危険地帯だし……
なんでこんな話をしているのかといいますと、小机は新横浜や鶴見川の対岸に比べると非常に寂れているのです!
小机って買い物や飲食ができる店が少ないんですよね……
だから、わざわざ鶴見川の対岸にある、ろぴあやララポートに買い出しに行かなくてはならないのですから。
一応都会であるはずの横浜で、買い物に行くのに2kmや3kmも歩かなければ大きなスーパーがない場所など、小机ぐらいじゃないでしょうかね?
もしかしたら、他にも小机と同じように買い物難民が発生している場所もあるのかも知れないけどさ。
でも、小机って駅前にコンビニすらないのですよね……
いまどき、田舎の駅前にもコンビニぐらいはあるぞ! 21世紀なのに信じられません。
小机だけ昭和の時代に取り残されているのでしょうかね?
庭野家で店長でも雇ってコンビニを開業させたいと思えるほど、小机は不便を感じさせられるよ。
コンビニを開店したら、サッカーの試合開催日やイベント開催日には、繁盛しそうな気がしますしね。
でも、コンビニの店長はなかなか休みが取れないとかも聞きますし、ブラックっぽいから私自身がするのは、ごめんこうむるでござる!
まあ、私はテニス選手なんだし、コンビニ開業は半分冗談なんですけどね!
でも、コンビニかスーパーが欲しいのは本当なんや……
あと、ふらっと立ち寄れて気軽に食べれる飲食店も。
小机は飲食店も少ないんや……
しかし、こんな辺鄙な場所で水没危険地帯の土地だからこそ、バブル期にも庭野家は地上げにも遭わずに、先祖代々の土地を保有し続けてこれたのでしょうけれども。
だけど、お爺ちゃん曰く、昔に比べたら庭野家が所有している土地も半分になったとか愚痴ってはいましたが。
ということは、バブル期に土地の一部を高値で売り抜いたのでしょうかね?
それか、固定資産税と相続税の支払いのために、土地を徐々に切り売りでもしたのかな?
つまり、小机駅の北側の大部分の土地は元々庭野家のモノだったみたいなのです。
いったい昔は、何ヘクタールの土地を所有していたのでしょうかね? 少し気になります。
横浜線じゃなくて話が脱線してしまった。
そう今日は、ララポートにお邪魔しているのです。
それで、なぜか私の目の前にグランドピアノがあるんスよ。このピアノは、なんなのでしょうかね?
まあ、庭野環希ピアノリサイタルなんですけどね!
こうして、ピアノでも演奏を頼まれるぐらいには、私も有名になったんだなぁって、しみじみ思わされますよね。
私はローランギャロスとウィンブルドンのジュニアチャンピオンだし、ピアノ動画でもあのフラッシュモブの動画は、再生数がもうすぐ一億に手が届く勢いですし、それにつられて他のピアノ動画の再生数も軒並み上昇しているのです。
いまでは、私の動画で再生数が五十万回以下の動画を探す方が大変という具合なんですよね。
チャンネル登録者も百万人の大台をあっさりと突破しちゃいまして、百五十万人に届く勢いなのだから、ここ数か月間でのテニスの活躍と合わさって、私の知名度の上昇はうなぎのぼりといっても過言ではないでしょう。
いま流行りの庭野環希、トレンド、乗るしかないこのビッグウェーブに! こんな感じで、私は客寄せパンダには持ってこいの人物だったのでしょう。
まあ、私を呼ぶ動機はなんでもいいですけどね。私も「客寄せパンダバッチこい!」ってな具合で気合十分であります。
九月の初めに開催される全米オープンジュニアまでは、私の予定の中にはテニスの大きな大会は組まれていませんので、こうして私も快くピアノの演奏を了承したというわけなのであります。
まあ、八月の後半に全米オープンジュニアの前哨戦であるG1大会が、一応あるにはあるけどさ。
でも、全仏オープンジュニアの後に首長さんを表敬訪問した時とは、状況が違いますしね。今は夏休みで学校もお休みですけど、あの時は平日だったのですよ。
それと、今回は出演料が貰えます。前回はスマイルゼロ円でした。
この違いは、天と地との差ほどあると思います。
まあ今回の演奏は、半分は私の気分転換と息抜きも兼ねてはいるのですけど。
だけど、私のピアノを誰かに聴いてもらって、たとえ少しだとしても私の音色で誰かに感動を与えられるのって、とても素敵なことだと思います。
私の場合は人前でピアノを弾くのにも、べつに緊張もしませんしね。
ミスタッチをしても気にしない適当な性格ともいいますがね!
まあ、そのミスタッチも滅多にしませんけど。
ちなみに、ウィンブルドンで優勝して帰国した今回は表敬訪問の要請はありませんでした。
さすがに、一月前に訪問しているのだから、向こうも遠慮したのかも知れませんね。
もしかしたら、私のネームバリューが想像以上に上がりすぎてしまったので、腰が引けてしまったのかも知れないけど。
『会場のみなさま、大変長らくお待たせいたしました。只今より庭野環希さんによるピアノの演奏を行います。曲名は……』
曲名は聴いてからのお楽しみのほうが良さげに思えるけどなぁ。
演奏者って時には、先入観を持たないで聴いてもらいたい時もあるんですよね。私の場合は特にそう思います。
曲名を先に知ってしまうと、どうしても先入観や固定されたイメージで曲を聴いてしまいがちになる気がしますしね。
それはそうと、一つ気合を入れて演奏することにしますか!
相変わらずサブタイに悩む…