表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/246

119話 万国の労働者よ、団結せよ!

作者以外、誰得な飛行機のお話…


 ラウンジでお腹一杯ご馳走になってから、飛行機に乗り込みました。

 あとは、クアラルンプールまでの七時間を寝るだけですので、夜の九時半とかに出発する便は楽でいいと思います。


 まあ、深夜に出発の便とかは勘弁してもらいたいですけど……


 私がビジネス・スイートの席に座って離陸前の人心地をついていると、CAさんがご用向きにやって来ました。



「お食事はいかがなさいますか?」


「ラウンジで食べてきたから、到着前の軽食のみでお願いします」



 いくら機内食がタダだからといって、私が毎度毎度、機内食を食べていると思ったら大間違いであります。

 まあ、ラウンジで少しばかし食べ過ぎたともいうのですがね。



「承りました」



 さすがは日本発着の便ですね。日本語での応対が出来ると、それだけで随分楽な気持にさせてくれます。

 でも、べつに英語をしゃべるのが億劫とか疲れるとかそんな事はないのですけど、これは気分的な問題なのかな?


 それにしても、A380の元ファーストクラスだけあって、一人当たりの空間も広く取られているから、飛行機の中としては寝心地も良さそうですね。

 ネットカフェの個室みたいな感じはしますけど。


 ……そう思ってしまったら、ファーストクラスなのに途端にしょぼく感じられてきてしまったよ。

 飛行機の中ではプライベートジェットを除いて、ほぼ一番高級な座席なのだ!


 うん、自己暗示完了です。


 それで、クアラルンプールまで七時間とはいっても、実際に寝れる時間は六時間弱程度のはずなので、多少寝不足気味になるのが心配ですけど、まあ、なんとかなるでしょう。

 だから、安定飛行に入ったらサッサと寝るでござるよ。




 ※※※※※※




 まだ夜も明けきらぬ早朝四時に、クアラルンプールに到着しました。日本時間でいったら朝の五時ですね。まだちょっと眠いです。

 ここクアラルンプールで五時間のトランジット待機となります。


 ラウンジでラクサとかいう東南アジアのラーメンみたいなのを食べていれば、すぐにでも時間は過ぎるでしょう。

 あまりスパイシーじゃなければいいなぁ。




 ※※※※※※




 ずずぅ~ちゅるちゅる。ずずぅ~。



「ふむ? ふむふむ……」



 ずずぅ~ちゅるちゅる。ずずぅ~。


 これは、なんと言えばいいのかな? ラーメンのようでいて、ラーメンではないですねコレは。

 見た目はラーメンに近いのにラーメンじゃないだなんて、なんか不思議な感じがしますね。


 でも、米粉を使った麺とは違うんだよね。普通に小麦粉を練った麺みたいです。そして肝心の辛さは、あまり辛くなくて私でも十分に美味しく感じられます。

 台湾ラーメンや担々麵ぐらいの辛さでしょうか?



「ふぅ、ごちそうさまでした」



 うん、これはこれでありですね。このラクサは当たりでしたよ。


 機内とラウンジで朝食を二度食べたようなものなので、またもやお腹一杯になってしまいました。

 旅の移動途中では、どうしても食べてばかりになってしまうのがネックだと思います。


 機内で出される昼食は軽めにとって、お腹を調整しなくては太ってしまいそうな気がしますね。


 ロンドンまでは13時間以上の長時間のフライトになりますので、ロンドン行きの便でも、ゆったりとお昼寝でもしましょうかね。

 あのネットカフェの個室みたいな感じがする、A380のビジネス・スイートの座席は、想像以上に居心地が良かったですし。


 あの狭さは、押し入れかクローゼットに潜り込んでいる感覚に近いのかも知れません。

 だからきっと落ち着くのでしょうね。


 閉所恐怖症の人は知らん。




 ※※※※※※




 ところがぎっちょん!


 なんと、クアラルンプール~ロンドンはA380ではなくて、A350での運航だったのですよ。

 A350にはビジネス・スイートが四席しか設定されていません。


 私たちは五人の集団ですので、必然的に一人はビジネス・スイートに座ることができません。

 今回は麻生さんも何故かビジネス・スイートを辞退しなかったので、子供たち三人で二つの座席を争う椅子取りゲームとなったのです。


 ママが「百合子は私の隣ね」とか、強権を発動させたからなのでしょう。


 だから、優梨愛ちゃんと萌香ちゃんと私の三人でジャンケンをして、勝った二人がビジネス・スイートの権利を手に入れられるのです。

 ええ、もちろんお約束のごとく、私が負けましたとも。ちくせう。


 天上天下唯我独尊のママのおかげで、私が割を食らうだなんて……


 座席の指定? そんなもん同じ集団であったら、座席の指定なんてあってないようなものなんですよ。

 他人同士であったとしても、外の景色を見たいから窓側の席を譲れだとか、知り合いがそっちに座っているからといって、エコノミーの乗客なのにプレエコの席を譲れだとか、そんな無茶苦茶な話も偶にあるらしいですしね。


 そんなのトラブルの元にしかならないような気がするのですけど?


 でも、同じ集団で身内でもある私の我儘は、許される我儘なのだから大丈夫でしょう。



「ママ、私もビジネス・スイートに乗りたーい」


「ビジネス・スイートが四席しかないのだから、こればっかりは仕方ないでしょ? それに、ジャンケンで負けたのは環希なんだし」


「普通、選手に良い思いをさせて気持ち良く試合に臨ませるのが、コーチの務めなんじゃないの?」


「ビジネスクラスでも十分に良い席じゃないのよ。環希も知っているだろうけど、普通のジュニア選手は大抵の子がエコノミーでの移動なのよ」



 それはママの言うとおりであって、反論のしようがないではありませんか。

 ジュニア選手に限らずプロの選手であったとしても、ランキング下位の選手でドサ廻りをしている選手の場合とかでは、LCCを使ったりもしていますもんね。


 仮にレガシーキャリアを利用する場合にしても、格安の航空券を比較検索サイトで目を皿のようにして探したりとかしているはずなんですよね。

 だから、最低でもプレミアムエコノミーで移動している私が、他の選手よりも恵まれているとは一応理解はしているのですよ。



「それは知っているけどさぁ」


「環希は十分に恵まれた環境なんだから、あまり贅沢は言わないの。それに飛行機代を出してるのは、環希じゃなくて私なんだから」



 もう既に私だって、コメックスとの契約料や動画の広告収入とかで、ビジネスクラスに乗れるぐらいは自分で稼いでいるはずなのに、おかしいですね?

 それなのに、毎月のお小遣いも私は三万円しか貰ってませんし、残りのお金はドコに消えてしまったのでしょうかね?


 お財布をママに握られているからこうなるんだな。

 これは、ママからお財布の主導権を奪わなければいけませんね。


 庭野家の賃上げ闘争の始まりです! 春闘とも言えるでしょう。

 万国の労働者よ、団結せよ! 資本家の横暴を許してはならない!


 私の心の中で、戦いのゴングが鳴り響いたのであった。


 まあ、中学二年生で月に三万円のお小遣いは、かなり多いとは自分でも思いますけれども。

 でも、よくよく考えたら私の場合は、お小遣いって半分以上が余っちゃうんですよね。


 だがしかし、お小遣いと飛行機のチケットは別問題なのだから、ママに抗議をしても大丈夫でしょう。



「ウィンブルドンの主役は私なのに、なんか納得がいかない……」


「環希ちゃんは、BAの後ろ向きの席に乗ってロンドンまで行きたいのかな? そうお母さんには聞こえたんだけど?」


「後ろ向きの席は勘弁してください!」



 鬼がいた! ここに鬼がいたよ!

 まさか自分の母親が鬼ババアだったとは……



「それなら、分かっているわよね?」


「はい、ビジネスで満足であります!」


「よろしい」



 ちくせう。今に見ていろ。見返してやるんだから!


 それにしても、後ろ向きの席なんて誰得なんでしょうかね?

 歴史と伝統に彩られた、英国面の気がしないでもありません。


 まあ、後ろ向きの座席に座った場合には、飛行機が墜落した時に数%ぐらい生存率が上がりそうな気もしますけど、その程度は誤差の範囲でしたか。

 でも、事故に遭う確率でいったら、飛行機は車よりも安全な乗り物なんだぞ!


 そう、事故に遭った時に、限りなく死ぬ可能性が高いのを気にしなければね。

 しかし、そんなのは運次第ですので、いちいち気にしてたらそれこそ飛行機なんか乗れませんしね。



そういえば、全日空も後ろ向きを採用したんだっけ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ