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2 0-3 0-0 全仏オープンジュニア決勝その1


「そういえばイレーヌ、あなたハンガリーのG2大会でタマキ・ニワノと対戦してたよね?」


「ダブルスではタマキと組んで優勝もしているよ」


「シングルスで対戦した時のことを聞きたいのよ」


「シングルスかぁ。シングルスはQFで対戦して、6-3、6-0で完敗だったね」


「ベーグルを食らった結果は知ってたけど、対戦してみての印象は?」


「タマキの印象? タマキは可愛かったよ!」


「顔の良し悪しを聞いてるんじゃないわよ!」


「プレーは顔に似合わず、えげつないプレーだったよ」


「えげつなかったとかじゃなくて、もっと具体的に正直に白状しなさい」


「具体的にと言われても、とにかくやり難かったというのが正直なところかな」


「やり難かった?」


「やり難くて私がイライラしたところで、変則的な軌道でサーブやリターンが来るから、こっちとしてはお手上げって感じだったわ」


「変則的ねぇ」


「だから、よく分からないうちに気づいたら追い込まれて、負けていたって感じなんだよね……」


「ふーん…… じゃあ私とニワノを比べたら、どっちが強い? 私とニワノの両方と対戦したことのあるイレーヌの感覚で構わないから」


「じゃあ、正直に言うわよ。イザベルよりもタマキのほうが確実に強いよ」


「言うじゃないのよ……」


「正直に白状しろと言われたので」






 ※※※※※※






 ついにやってきました、全仏オープンジュニア、ローラン・ギャロス決勝!


 決勝の相手はランキング二位で今年の全豪オープンジュニアのチャンピオンでもある、地元フランスのイザベル・ダラディエ選手です。

 いくら全豪の覇者とはいえ、準決勝での萌香ちゃんとの対戦を見る限りは、私が勝てない相手ではなさそうですね。


 しかし、油断大敵ともいいますし、私は挑戦者の立場なのですから、気を引き締めて行きましょう。


 それにしても、お客さんが大勢入りましたね。ほぼ満員とか、さすがは地元選手が決勝に出場しているだけのことはあります。


 コート・スザンヌ・ランラン……


 ランランってフランス人は変わった苗字があると思いました。小並感。


 でも、これだけ大きなコートでプレーするのは今世では初めてのことですし、ワクワクしますね!

 前世では、有明のセンターコートに立ったことはありますけど、コート・ランランは、有明のセンターコートと同じくらいの規模のコートだと思います。


 しかし、スタッド・ローラン・ギャロスでは、ランランですらセンターコートではないのですよね。

 センターコートはランランに比べて1.5倍の収容人数の規模を誇る、フィリップ・シャトリエがローラン・ギャロスのセンターコートなのです。


 さて、この決勝の舞台は完全にアウェーですし、今日は悪役に徹しましょうか!

 今日の私は、悪役令嬢たまきちゃん路線であります。


 もっとも、負けるつもりなど微塵もありませんので、ごめんあそばせ。




 ※※※※※※




『ヘッド。 ……レシーブで』



 コイントスに相手が勝ってレシーブを選びましたので、私のサービスゲームからの試合開始になります。



 まず最初は、デュースサイドに立ってのサーブからですね。


「とぅ」


 私は相手の正面を狙ったボディサーブを打ち込んだ。

 相手のイザベルちゃんは、自分の身体を引いてフォアハンドでのレシーブを選択したようですね。


「15ラブ」


 相手のレシーブがネットに突き刺さった。

 ボディ狙いのサーブは相手のレシーブが窮屈になりやすいので、リターンの選択肢を狭めさせるという意味において、ボディサーブは有効打足りえるのですよ。


 さて、お次はアドサイドからのサーブになります。


「てぃ」


 私はサウスポーにスイッチしてから、センターラインを目掛けてサーブを打ち放った。


「フォルト!」



 む? センターラインを見ているラインパーソンから、フォルトのコールですと?


 観客席からも、ブーイングがチラホラと聞こえますね。

 でも、私の対戦相手が有利になったほうが、地元フランスの観客にとって喜ばしいのでは?


 今日この場は、私にとっては完全にアウェーの場所なんだし、私は地元選手であるイザベルちゃんに対するヒール役のはずですしね。


 それはそうと今のサーブは、ちゃんとインに入っているはずなんだけどなぁ。


 チャレンジ!


 ……ローラン・ギャロスには、チャレンジの制度はなかったよ。


 仕方がないので、主審にお伺いを立ててみましょうかね?

 っと、その前に、私がお伺いを立てる前に主審が自ら確認に行きましたか。


 なかなか公正で働き者の主審みたいで助かりました。



「レット! ネクストリドゥ、ファーストサーブ、ワンモア」



 やっぱ私の予想したとおりに、ちゃんと入ってましたね。

 しかし、さすがにサービスエースの追認とまで、そこまでは甘くありませんでしたか。


 今日の線審はシビアそうだから、インに2cmぐらい甘めに入れたほうが良さそうな気がしますね。

 審判の判定に異議を申し立てて、何度も何度も打ち直すとかやり直すのも、それはそれで面倒だしリズムも崩れそうですしね。


 私は基本的に審判の判定に対して、滅多なことでは異議申し立てはしないのですよ。

 仮に異議を申し立てたとしても、判定が覆ることなんてほぼありません。私は経験ないですし。良くても、一つ前の場面からのやり直しじゃないでしょうか?


 そんなことは時間の無駄ですし、審判の心証も悪くなります。オマケにリズムも崩れて、良いことなんてなさそうな気がしますので。

 ホークアイでも採用されていれば、また別なんでしょうけれども。


 今大会みたいにクレーコートの場合は、ボールの跡が付くのでハードコートよりは、異議を唱えても大丈夫なんですけどね。


 それでは仕切り直して、もう一度ファーストサーブを打ちましょうか!


 さっきのでセンターライン狙いはケチが付いたので、今度はサイド狙いでサーブを打ちます。

 私の左腕から繰り出したサーブは、サイドライン手前で急激に落ちて、ライン上でバウンドして跳ねた。


「30ラブ」


 私命名のスライスピンサーブが決まった瞬間である。


 次はデュースサイドからだけど、まだ左を続けてみますよっと!

 今度は左からのボディサーブで、相手の身体正面を狙います。


 イザベルちゃんはバックハンドを選択して、リターンを返してきた。

 しかしリターンしたボールは、サーブを放ったと同時に前方へと走り出していた、私の罠に掛かってしまったのですよねー。


「40ラブ」


 私は最後に、ちょこんとボールを軽く相手コートに入れるだけでよかった。

 当然だけど、イザベルちゃんはボールには追いつけません。


 勢いはないけど、一応はサーブ&ボレーですな。


 あと1ポイントで、サービスゲームのキープとなります。


 最後のサーブは、先程のやり直しとばかりにセンターラインを狙って、ズドン!


「ゲーム、ニワノ」



 よっしゃ! ラブゲームでキープだぜぃ!


次は8/30金曜日!

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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろいです たまきちゃんの無双好きです [気になる点] 全仏オープンだから審判はフランス語使うと思う 結構細部までこだわって書いてた印象あったので、逆に気になってしまいました [一言]…
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