走って逃げて捕まって
ガタン、と揺れて気がついた。目を開けると、なにも見えなかった。……私、目隠しされてる?
手を動かしてみる。動かない。足も……やっぱり動かない。どころか、体自体動かせない。体を丸めた状態で狭い所に押し込められている。
なんで?どうして?
頭をフル回転させると、すぐに思い出した。
私は夜の繁華街を一人で歩いていた。行くあてはなくて、ただブラブラ、時間を潰すため、より遠くに行くため。でも十一時を回って、警察官とか補導員の姿が見えるようになったから見つからないように裏道に入った。大通りを歩いていたときでも自分がどこにいるかなんて分かってなかったけど、裏道に入ってもっと分からなくなった。けど道を聞ける人なんていなくて、完全に迷子になった。
そうこうしてる間に一時間が過ぎて、そろそろ寝る場所を見つけようと思ったとき、肩に手が置かれた。
見つかったと思った。
だから走った。けど、私を捕まえたのは警察でも補導員でもなかった。強引に地面に引きずり倒されて、変な匂いのする布を当てられて……気がついたら、こんなことになっていた。
これからどうなるんだろう。全く分からない。分からないけど、でも私の人生はここで終わる気がする。
もし警察に見つかったのならキャリーケースみたいな箱に詰められて運ばれるなんてことはないはずだし、なら私は、捕まっちゃいけない人に捕まったんだろう。
人身売買か、臓器売買か。この二択でだいたい合ってると思う。
あーあ。なんでこんなことになっちゃったんだろ。
間違ったことをしてきたとは思わないし、悪いことをしてきたとも思わない。バチがあたるようなことはなにもしてないはずなのに、どうして。
どうして、お父さんもお母さんもあんなに私にひどく当たるんだろう。
なんで、クラスのみんなはよってたかって私を嬲るんだろう。
何故、先生は、近所の人たちは、息を潜めて笑うんだろう。
……このまま死んで人生リセットボタンを押して、異世界転生でもして人生やり直せば、もうちょっとマシだったりするのかな。それに賭けてみるのも面白いかも知れない。賭けられる程価値のあるものなんて持ってないけど。
なんにせよ、もうどうしようもないんだから、寝よう。睡魔は、私の頼もしい味方だ。彼に意識を預けている間は
私の惨めな姿も酷い体も見なくて済む。明日の学校も昨日の傷も考えなくて済むし、思い出さなくて済む。
寝よう。寝てる間に全部全部、済ましてもらおう。