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第7話 村人と女帝

「里山」は人間と自然が共存して心の豊かさを育む日本の原風景だ。

なんて実状も知らずに観光か半分冷やかしでそんな事を言ってくる、それは悪い誤解でしかない、これを共存なんて言えるものか、俺たちは自然には従うしかないのだから


一・二年も放っておいたら田畑は野に帰るし、蜂の巣だ、鳥害だイナゴが出たなどと毎年毎年忙しい事この上ない。


勿論、側から見れば自由気ままなのかもしれないがやろうとすればする程しなければならない事は沢山あるんだ…あるんだけどな…


「何かしらタツヤ、私の顔に何か付いてるの?」


なんの因果応報を食らったら俺は国家転覆の首謀者と協力関係になっているのかは分からない。


だが、しっとりと湿気がまとわりつく様なこの場所で俺が始めなくてはならない事は分かっている。

「いいや、大した事じゃ無いんだが…」


フェヘールが俺を呼んだのは昼食を食べ終わった頃、今日は雨なのでする作業もほぼ無かった。


恐らく目の前の「元」女帝様は本業に専念していない俺を見てイデア( こっち)に 連れてきたのだろう。


「駄目よ。 大した事じゃ無くとも言いたい事ははっきり言えないなんて私達を話せるようにした創造主に失礼じゃない」


「創造主」なんてワードが飛び出す辺り、こっちにもどうやら「宗教」という概念位はあるらしい、服装は現代よりも着飾っているが技術の発展具合までは正直分析が出来ない。

蔵書らしいものがうず高く積んであるところを見ると紙は普及しているのは間違いない様だ。


「それじゃあ聞くが俺はここで何をすれば良いんだ? この部屋から空を眺めて適当な文句の合いの手を良いってのか?」

「まっさか、そんなわけないじゃない。あなたにただただ給仕係として呼んだらそれこそ払った対価にに合わないわ」

乾いた羊皮紙と格闘していたレイラは視線を此方に移す。


「簡単に言えば対価と報酬をもってあなた達の技術をふんだんに使用し、この世界で私をもう一度帝王にまでの仕上げてみなさい!!」


随分と自信有り気な口調だが現状として従者は俺とカラスが一匹、これはどこをどう逆さにって世界は逆転は考えられないだろう。

人が信じて止まない気宇壮大な謳い文句を彼女が広げられるなら別だが

「あのなぁレイラ、この世界の情報を何も知らない俺がこの場所の外へ出て見聞を広げて良いのか?」

「そうね、多分この城の敷地外へ出てから数日と持たずに目をつけれれてやられるわ」「嘘だろお前」


てっきり城内にも現政府側の兵隊ななんかが見張ってるのかと俺は勝手に思っていたので意外なのだがそれ、城の中は少なくとも敵勢力は…あ、居るわ、地下牢でいろいろ失敗をして超縛られている奴が。


「レイラにとっての「敵」は明確になっているのか?」「そうね、現皇帝を暗殺してくれれば私は満足よ、その後は私がクーデターでもって王宮を占拠して政権を手に入れ王冠を再び戴くわ!!」


どんだけ都合よく事が進むと思ってんだよ…夢想家は遠くで見る分にはいいが傍らで見ていたくないな、痛々しい。異世界の技術が魔法と同義とでも思っているのか、そんな訳無いだろ。

それってもしかしなくても無理に近いんじゃないか。


「とまぁ、簡単にいうとそんなものだけど何を背景に現皇帝派を追い詰めるかが一番問題よね~」

読んでいた本を閉じレイラは伸びをしながら革の椅子に沈み込む、髪の色に合わせた簡易なワンピース浮き上がる。


「そんな悠長で大丈夫なもんなのかね?」

「ふっ、感情と打算だけで動ける程私達には戦力が無いわ。それを稼ぐ手段を考えて欲しいのよ、ヒントは知識の中にあるの。 というか此処にあるのは知識位な物よ」

この部屋確かに本ばっかり並んでるもんな、資料館か何かに


「凝り固まるまで固めようとは思わないわ、でも少しの揺さぶりくらいで揺らいで崩れるムースじゃ仕方ないじゃない」


「その例えばどうなんだろうな」

「うまいと思わない? それにタツヤだって暇になったらひたすら引きこもってなんか書いたり読んだりしてるじゃない」


ま、晴耕雨読の生活と言えば聞こえはいいが資格と小遣い稼ぎも考えないといざという時に積む。


「保険としての勉強だよ、国家資格の一つくらいは持っていて損はないか、元女帝さんには凡そ関係の無い話だ、違う世界の違うお話さ」


社会の中に埋没出来ない人間は壁を築いて立て籠もる、ちっぽけな箱庭の中で日々を転がしていくんだよ


「そうなの、それじゃあ私も巻き込む話をしましょうか?」

レイラはそう言って席をゆっくり立ちあがる、


「随分と考え尽くし、知識を詰め込んでしまったから頭がクラクラするの…知恵熱から落ち着きたいから城内の散策に付き合ってくださる?」


俺へ手を伸ばして来るのはエスコートしなさいという事なのだろう、ヒールの高い靴でも履いているのなら別だが革靴なら平気だろう、


「紳士たるもの淑女は上質な織物の如く扱ってくれるものでは無くて?」


何その謎理論、男女平等は…この世界じゃまだそこまでにはなっていないのか…よし、世界大戦でも起こそうか?

「この帝国の女帝の手を取った男性なんて貴方位なものよ、光栄に思いなさいな!」


此処が正式な王宮で貴女が廃位されていなければな…そりゃ多少は光栄に思うのだろう。

「…はぁ、こんな姿のままで貴女様の手を引いて良ければ城内を一周案内していただけると恐悦至極に存じまする」

伸ばされた白く細いグローブを自分の掌に乗せて観音開きの樫か何かで出来た焦げ茶色の扉を押して俺たちは書庫らしき場所から始めて外へ飛び出したのだった。



次回へ続く!!

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