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第5話烏さんの言うことにゃ

このまま暫くは変わることもないと思っていた生活がどうしてか90度の直角で変な方向へ向いてしまったのは偶然だとしても出来すぎじゃあないか?


土いじりのknow-howを勉強してその中で郷土野菜をブランド化してそれで細々と確実に暮らせる方法を模索していたと言うのに、俺はどうしてあんな危ない女の協力などしなくちゃいけないんだ。


「そんなん悩んだって仕方ないだろ。もし因果律があるとしたらそれを決めたカミサマを呪うんだな」


そして肩に乗って戯言を吐いているのは何故か白い烏という始末、

ごっめーんまるで意味がわからないんだけどなんで烏なのに白いの?

「別に烏が白くたって白鷺が黒くたって生まれ落ちた時からこうなんだから俺にだってどうにか出来るもんじゃねぇよ」

あとで調べてたらアルビノと呼ばれる種類の様だが目立つなお前、その大きさになるまで生き残れて良かったな。


「なぁんだってそんなしみったれた顔をすんだよお前さんはよ〜」

俺の肩の上でバッサバッサと羽広げんな鬱陶しい。

「ちなみにだが俺さんの名前はフェヘールつうんだ覚えておきな」

フェヘールは肩から降りると誇らしげに胸を張る、

日本語を話すカラスがここまでおしゃべりだとは思わなかった。 確か烏は人間の二、三歳程の知能を持っているのだったか、それにしては利口だ。


「ブランダ様に戴いたのは言語だけじゃないからなぁ〜、俺ってば本当こんな真っ白な体で良かったぜ」


能天気なことは良いことだがそのせいで不幸にならんようにしろよえっと…フェヘール?

「そのフェヘールは俺に何か用事があるのか?」

「そりゃあお前さん、簡単に例えるならだな…スヌーズ機能よ」

なにその良く分かんない絶妙に微妙な機能、毎日定時にこいつに起こされるのか、そうしないと起きられないほど俺は子供じゃないが?


「お前さんをわざわざ起床させるとかそんな面倒な真似をするわけ無いだろ? あ、でも場合にもよるな」

場合によるのか…

「いやー、俺の役目は簡単に言えばこっちとあっちの渡し守って感じだな」

渡し守とあっちとこっちとか言われるとなんか三途の川みたいでいい感じはしない。


「渡し守ってーとあれか、もしやと思うがお前をそばに置いておかないといけないやつか…」

烏を飼い始めるとか親に話したら一体どんな反応が返ってくるのだろうか、生ゴミと作物さえ荒らさないなら案外すんなりok出そう…昔狂犬病とか全部ワクチンとった狸が一時期家にいた時もあったしな、

「そーだな、少なくともお前さんが彼の方と関係のある間は俺はずっとお前さんを見てなきゃなんねぇのよ」


ただのカラスにしては随分とおっさんくさい口調ではなすんだな、よし、烏の寿命とかあとで調べてみよう。

「それとだなお前さんと彼の方との召喚タイミングの意思疎通を図るし俺の目には召喚時に使用する刻印が記されているからな、便利アイテムとしての使い勝手は保証するぜ?」


また随分とあれこれ良く教えてくれることで…待てよ、俺のその厄介ごとはお前さんに込められた魔法陣とやら離れてしまえばいいってことじゃあないか?

俺の頭の隅で暗い考えが出現する。


本当、何か特撮に巻き込まれた一般市民の役ですとか今更そんなオチを望んでいるのだが、話はどうも上手くはまらない様だ。


「便利アイテムねぇ…そりゃあ無いに越した事は無いけどもくれぐれもして欲しく無い事がある。

一つ、敷地内の車や人にフンをしない事。

二つ、生ゴミをばら撒かない事、後はあれだなうちの作物を食わない事、この三つをそちら側が出来るのであれば君を養う用意はしてやろう」

要するに害を生まないのなら別に構わないと言う事だ。 理性をもつほどの烏ならイージーだろ? そうでもない?

「オイオイ、そして俺の仕事には畑に出没する害獣と鳥を追っ払うのも追加で発注されるってーのは見えたぜ? 請け負ってやるぞ?」

なんだこの烏、言い回しやら態度がいちいちカッコいい。

「任せときな、俺の目が黒いうちは百舌の一羽だって畑に入れやしねーぜ?」

「フェヘール、お前はアルビノだから目は赤いだろうが」「あぁ、そうか違えねぇカカカ!!」

えぇ、烏の笑い声ってあるにしても絶対そうじゃないだろ…

「ま、一先ずよろしく頼むぜタツヤさんよ」

握手とはいかないが悪い奴でも無い、あの女帝様は別としてこっちとは仲良くできそうかもな。



「あ、そうだよろしくやるのはいいとしても、頼むから家族の前でその主張的な言動は止めてくれよ。あくまで君はカラスなんだからふつーに普通に頼む、「かー」とか「あー」の相応しい鳴き声だけだぞしていいのは」


「なんでー、インコや文鳥だってピーチクパーチクおしゃべりしながらだってのに俺には二言しか無しって訳かい、そーいつは面白くもねー話だ」

機嫌を損ねたか両脚を揃えてピョンピョンと飛んでそっぽ向く。

「だがしかし忘れるなよ、俺はあの方とこっちの世にいて唯一話ができる存在なんだ。 お前さんを観察して知り得たあんな事やこんな事、あった事なかった事を…ふふん、俺を敵に回すのとロクなことが起きないぜ?」


お前…悪魔かよ。

「それにしてもよ、俺みたいな烏から見てもあの方はべっぴんさんだと思うんだがお前さんはどうだい?」


フェヘール、お前は昼間から酒でも飲んでるかの様な調子で話を進めていくが大丈夫か、今まで話した事きちんと覚えてるか?

「なんだよ〜黙り込んじまって、さては…惚れたか?!」

「馬鹿野郎、出会って数時間で他人を盲目的に信用出来るもんか。 それに…あの状況で何か安心出来るものを提供・提示されてな」

そこまで言ってそう言う事が聞きたいんじゃ無いとフェヘールに言葉を遮られる。

「おいおいおい、あんたは彼の方をどう思ったかって聞いてんだ。印象とかそんなのねぇの? 」

そう問い詰められた格好になって少し俺は考える。


レイラの印象か…賑やかな人だったと答えるべきか、考え方からすると先を行き過ぎていると言うべきなのかも…でもあれだな、ここは容姿について話した方が良さそうだが赤髪ってあんな色の事を実際には言うのだろうか。


「…褐色で赤みかかっている綺麗な髪だった、堅苦しい格好は何か着られてる感じがしたんだがそれはこっちの慣れの問題かもしれない。

なんかこう…一言で言うなら本当綺麗の一言なんだが…洒落た言葉とかでたとえるなら…天竺牡丹? 花言葉もあった筈だけど覚えて無いなぁ」

花言葉は確か、「絆」だったと思っていたがと後で調べて違うのだと言うことが分かった。


「ほーう、人間は花に意味を付けるのか面白いな」

発祥は知らないが贈り物に花を贈るのなら気をつけた方がいいって話だ、俺はそれで一度失敗してるからな。


「まるで荒涼たる大地に根付いた一輪の大華というわけらしいですぜ? レイラ様?」

ちよっっと待てぃ、え何? まさかとは思うけども今の会話ってあっちへ聞こえてる訳? それはなんとも恥ずかしい感じがしてならないんだけど、うわっまじか…

「半分は冗談だがタツヤさんよ、忠告しておくがあの方に少しでも同情はするな…いいか?」


その半分本気なのが気になるがそれ以上にフェヘールの言葉が頭からしばらく離れなかったが、仕事はしなくてはいけない。 ウチは様々な野菜に加えて水稲もやっているのでこの時期は割と忙しい、そっちは父の担当だが時間があればそっちも手伝わなくては…


そんな様子で俺の雇われ異世界転移は幕を開いたのだがこれから俺は金貨一枚、レイラ曰く金の含有量は2gだとすると…日給1万円か、割には多分合わないが打ち込むものもない現状ではいい暇つぶしにはなるだろう。 軽い気持ちで契約をあっさりと受け入れたのを後悔するのに時間はそこまでかからなかった。


次回へ続く

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