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第四話 「帝王の血と開かれた大国」

暖かな日差しが西の空を焼 く夕陽に変わる頃にやっとの事で資料と史料をかき集め終わり、レイラは俺をイデアへ返還するという…俺は便利な雑用係かよ。


レイラが言った「使い魔」とは異世界(イデア)からこの世界(俺は勝手にハイドゥーと名付けた)に依り代を使って連れてこられるもので基本的には呼び出した主には敵対的行動をせずに報酬を条件に仕事をするという…


「しかしまぁ、国が出来て三代四代で版図を広げて帝国とまで言わしめるほどの大国になるとはね…」


簡単に説明するとこの一帯はもともと豪族としてこの地にあったレイラの祖先が治めていたそうだ。

銀山の開発と交易での利益の寡占とその闘争を重ねていった結果として地域の領主として頭角を現した。

地域の独立の為に大国との駆け引き、裏切り裏切られた果てに五族楽土を作り出したのこと。


「五族って何? 」


「各地方にいた豪族たちの軍団の事よ。平原と川で大国の庇護下で結構長い間番犬やらされてたのを軍事力と経済力で対抗して集合体としての国家を…って分かる? 話着いて来れてる?」


「ん、まぁなんとなくな」

要するに人殺しが悲惨だって気づいたんだろう、あくまでも日常的に戦争状態が良くないと気づいたのだろうけど。


「そう? あくまでも人族オンリーなのがネックなのよね」

ちょっと待て、その言い方だと人族じゃないのもいるってことですかい?


「あー、数は少ないし殆ど人里離れた場所にいるし外交も閉ざしている少数民族って感じで認識してくれればokよ?」

あっ、はい。 案外とハイファンタジーの可能性も秘めている…っと。


「それでその「五族楽土」の盟主が当家ね」

成る程、決定的身分や格差は無いから四大貴族と揉めたり内紛に胃の穴が開きそうになるんだな?


「それ四大貴族を一つ滅ぼす位じゃ無いと集権化なんて夢のまた夢なんじゃないか?」

そうか、目の前の女の子はその細腕でそれ以外の連中からしたら一歩どころかかなり前を歩いているのか…


「そーよ、連合体を維持するならその旗振り役で盾役が必要になるじゃない? 戦争前に各貴族に参戦要請なんて悠長な連中にはうんざりな訳」

そりゃまぁ、独自判断で動く可能性だって多分にあるしな。


「…確かにそちらの方が合理的で素早い判断が出来る、だが俺が気になるのはその考えに至った理由だレイラ、あんたは国をもう一度取って何がしたい?」


国取り物語なんてそんな簡単な事じゃない、何せ相手は権力全てを動員できる国家で味方に錦の御旗は無い。


「国家転覆のクーデターを起こされて四大貴族と世論が沸騰、元老院とか言う訳分かんない世襲制諮問機関をおっ立てられて宮廷費横領とか国家破壊罪とかテキトーな罪作って幽閉されて国民人気もガタ落ちとか!! あーもー有り得ないって!!!」


思い出したく無いものを思い出させてしまった様で悪い事をしてしまったな。


「挙げ句の果てに先祖代々の土地を帝都周辺の土地を持つ爵位第三位に、あろうかとか交換とか呆れてものを言えなかったわ」


それは何故と聞きかけて理由が分かった。

「君の監視だな? そうだろ?」

「えぇ、たまに子爵が兵隊連れて世話しに来るわ、したり顔で。

そうそう、話が逸れたけど私がしたいのは…豊かで長閑でそして強い国よ」

矛盾して…なくは無いか、要は一人一人が強ければ問題無いもんな。

「簡単に言えば戦争が元で死ぬ人よりも食べ物が沢山あって生まれる人が多い国、苦役もあんまり無いのも良いわね。」

飢饉と労役はやはりどこの世界もあるんだな、俺も懲役6年だかそれ位になるし確かに働きたくないわ。


「そうする為にも私は…もう一度皇帝に返り咲いてみせるわ。 安定と停滞は衰退を水面下で進めさせるの、それは人も国も何方も変わらないわ」

レイラさん何、哲学も歴史やらも学んでいるのかい?

「それはもう、帝都でお抱えの学者から聞く帝王学なんかよりもよっぽど役に立ちましてよ。」

彼女は皮肉を込めて続ける。

「帝国樹立以前の貴族にあたる方々の歴史や帝国が滅ぼした国、協力した国と色々学んできたの。独学だけど、けどこの資料室二部屋分の史書が隣にあると思うと知識は無限だと思わざるを得ないわ…」


この部屋ただの資料室なのか…書斎かと思ってた、結構内装凝ってるし。


「にしても国家転覆が目標とはねぇ、ご主人様も御無体な事を要求される…そうだ、内側から崩せないのなら外側の協力を得られれば良いんじゃないか? 敵の敵は味方じゃん?」

パッと思いついて

「下手を打てば多分それ他の国家が介入して泥沼の内戦になる、だから必要なのはアイデアであって腕っぷしじゃないのよ?」「俺にそんな期待を持つなや…」

と嗜められた上に期待している旨を話されて肩に何がが乗ったのを感じた。


「それにしてもまさか成功するとは思っていなったわよ、イデアからの召喚なんて」「え、なんで?」

俺を呼んだみたく特定失踪者とかってこっちに迷い込んでたりしないの?


「あー、それは有り得ない話ではないけど…ここで使えたのがかなり古い魔術式しかなかったからよ。 魔術だって信じて実際使っている人口だって年々少なくなってるのもあるわ、科学的な道具の方が安全で誰でも使えるし素質に左右されないのだとか…」


習得するのに時間を要し、体力を削っていく魔術とモノさえあればいい良く、その場で説明すればちゃんと動作してくれる科学と何方のものが良いかと言われれば勝敗は決している様なものなのもしれない。


「勿論だけど人間や他種族を不用意に商品として売買しない事ね、あんなのは無駄よ無駄人が勿体無いじゃない!!」

何その効率厨怖い、人をモノとして扱うのが駄目とかじゃない訳?

「あっ、いいこと思いついたわ。 奴隷達を沢山買って軍隊にして宮廷に奴隷解放運動として押し掛けておしつけましょう?!」

外道過ぎるし俺ら諸共ぶちのめされて終わるわそんなの、

「えっと、一応聞いておくけど奴隷解放運動とかやる影でなんか目的あるだろ、何考えてやがる?」

「え? 嫌がらせ?」

分かっててやってるから尚更質が悪いなぁ…

「国をひっくり返すのならひっくり返すだけの騒動をおっ始めなきゃ駄目よ?」

事後処理大変だからやめておいた方がいいも思うんだけどなぁ…

「それはそれとしてもういい時間になるからそろそろ戻りましょうかリュージ?」

待って待て、どうして突然返すとか言い始めんだよレイラさん、こーゆーのって来たら来っぱなしでってのが相場じゃないのか…


「なんとこの術式丁寧に作られてるんですけど、イデアと此方の時間軸をなんと調節出来るなんて凄いわ!! ま、動かしてみたことは無いからどうなるかはお楽しみにしてね!」

結局今目の前にいる赤髪の女性も、誰も居ない一人にしては広すぎる地下室のある屋形も、現実で作り物でも無く寸劇の一部でも無いと言うのか…ん?さらっと凄えこと言わなかった

「因みにだけど呼び出す少し前にイデア側の使いを通じて話すからあの子をよろしくね」


あの子…? 何かいたかなと数時間前の出来事を首を傾げて思い出してみる…

「ほら居たじゃない、イデアに白い大きな翼を持った子」


こっちの世界の話なのだろけれど全く思い出せん…

戻れると聞いて安心しているがこの子の願いを俺如きが叶えてやれるのだろうか….

異世界転移したものの、チートスキルも才能も時にない無いので助言すらままならならんがこんな奴だけど大丈夫?


「あの子イデアでなんて名前かは知らないけれど出来れば側に居させてあげてね…それじゃあまた呼ぶわ。

因みに言っておくけわね、ダメならダメで構わないけど居留守と無視はなしよ? 分かるんだから」


別れの挨拶は良く聞き取れない単語だったのと直後の俺を襲った事態にあまり確かな記憶は無いがボチャなんとかと言っていた気がする。

頭の中がぐるりと縦に一回転する様な感覚を数秒味わうと俺は元いた長閑すぎる畑の端に忽然と立ち竦んでいた。


「今のは…一体…?」

その場に元から居たように何の違和感も無し、イカれた平衡感覚とほんの一瞬の暗転の後に俺はもといた世界へ無事に舞い戻ったのである。

「そうだ、今何時だ?」

体感時間にして七、八時間だったがもしかするとあちらとこちらの時間軸や自転時間などが違えば…丸一日行方不明になってたりしたらやだな。


目の前には何時間も前に

「大丈夫だぜ安心して時計を見な、あっち行ってから五分となってねーからよ」


何処からするか分からない低い男の声の通りに圏外だった携帯と腕時計を確認してみたところ、イデアへ連れて行かれる前の日付と同じことが分かり俺は安心して一息ついた。


「おーい、こっちだよこっち。 全く早よ気づいてくんないかな〜?」

確かに男の声がするんだがなぜ姿が無い、それと俺の事を知っている様子だが…一体誰がこの畑にいると言うんだ、段々畑でも無いんだから人影があれば普通に気づくぞ?


「あー違う違う 、上だよ上」

上? 良く分からないが声のする通りに真上を見上げると何か白いわりかし大きな物体が落下してくるので驚いて身をかわした。

羽を広げてゆっくりと地面に着地したのはどうやら鳥のようである。

「よっ、お前が天川竜二だな」

白い烏に発信器と小型カメラなどなどを疑ってみたが、くちばしの動きから烏自体から発せられる言葉だと気づき結構ゾッとした。

どうにも俺は不可思議な出会う体質になってしまったらしい。

「嘘だろお前」と言葉が口を付いて出てしまう嘘だと目を覆い、口を閉じ、耳を疑いたくなる光景に俺はこの先度々出会うのだがこれはまだまだ序章に過ぎなかったのだ………


次にまた話す機会があればこの続きをするとしよう。

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