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第三話 「囚われの女帝」

かくして閉ざされた門を開く時が到来したのだ。

外側から木霊するは怨差の声でもましてや啜り泣きでもない、竜の名を冠した万物不当の英雄となる男だった…


シャシュ・レイラ著 無冠の帝王第1章より

なんだって俺は背後を振りまいてしまったんだろう、振り向きさえしなければさっきの話の刺客がこちらに敵意を向ける事なく彼女が傷ついただけだって言うのに…


実際のところ「それは嫌だな」と思ってしまった仕方ない、正義だろうと偽善であろうと理由なんてのはまるっきり二や三の次であって男は女の前にあっては格好の一つもつけたくなるものだ。


飛び出して立ちふさがったは良いものの問題はここからである。護身術の一つくらいは覚えてくれば良かったが生憎とそんなものはガッコウでは習えない。

独力で何とかするような代物でもないが生憎と俺は昔気質な親父にプロレス技だの空手だ柔だかけられているからな大体人の動き方とその勢いの殺し方は知っているんだ。


相手の伸び切った利き腕の肘を手のひらで打ち上げそのまま浮き上がってしまった上半身のバランスを崩してやれればほらこの通りでドサッと倒れ込んでしまった刺客さんの完成と言うわけ、涼しい顔こそしているものの…


何か言っているようだが言語を判別し翻訳する魔法はこの男にはかかっていないらしく何やら声を発して入るもののいやー、何にもわかんないけど多分すげぇ罵声とかなんだろうなぁ。


因みに手にしていたナイフは転がっていたのをお姫様だか皇女様が拾ってくれたし縄を調達しとりあえず縛ってみた、やってとーらい。

すっげえ暴れられたし女帝様傍でなにしたらいいか分かんないのにたまに刺客さんから拳だの足蹴りが飛んでくるだのでワタワタしてたし数分くらい格闘した…


「さっき話してた刺客さんに脱獄させられて二度も殺されかかるとかあんたも大概運の無いやつらしいな」


ひんやりジメジメとした地下牢なのに息が上がるのは仕方がないとしてドッキリカメラでこう大成功ーー!

みたいなプラカード持った芸能人とか刺客が芸人とかが出てくると考えたんだがこれまさか大真面目だったりするんだろうか…

刺客を再び牢に入れ地下牢の重そうな観音扉を締めたあたりですっげぇ不安になった。


「少しびっくりしたけど、」「したけど?」

「…ま、これからやることに比べたら前座以下ね、とりあえずあの刺客の出処が分かったらとっとと始末しないと足がつくわ…それ」

おいこら待て、人の生死を全く興味ない事象のように語るんじゃない、ろくな生き方にならんぞと俺は意見する。


「こら待て、イデアだかなんだか知らんが殺伐としすぎだろ」

「こっちじゃ悪いけど親子供の殺し合いは日常生活の一部なんだけど本当にイデアって理想郷というか楽園なのかしら?」

「えぇ…なにその権力集中のための血の闘争こっわ」


「完全無血で出来ることなんて朝起きるとききに瞼を開けることくらいよ…」


名言チックなことを言っているようでそうではないから、確かに人はなにかを犠牲にしてできているけどそんな言い方しなくても良いじゃないか、

威勢良くも虚しく大理石を叩く音を立てるのは女帝様だけである。


「にしてもへんなりして覇気の無い目をしてる割には何あの手さばきは我流?」


そう、あれこそ一子相伝見様見真似真拳!!ホワタ!なんつってツボ押して人が蜂の巣になったとしてもそんなんやったら絶対捕まるからいらない。

そんなの慣れだよ慣れ、ほんとそういう家庭だからしゃーないけど


「地下牢から外へ出てきたが…小綺麗な避暑地って感じでも無いし皇帝の称号を戴くものにしては護衛やら近衛の姿が見えない、なに君なんかやらかしたん?」


突然女帝様が歩みを止めるので危うくぶつかりそうになったがそれよりも深く吐かれた息から続いた言葉が今しがた起きている出来事が演技にしては迫真すぎる事を物語っていて、目の前の女に無性に触れたくなった。


「男は単純に金と女、権力って暴力と謀略を使って得るもんだと思ってしまうところあるのね…掻い摘んで言うとね「皇帝」の称号を得てから私がしたのは巨大四大貴族の内紛よ」


皇帝から引き摺り下ろされたのどうみてもそれが原因だと思うんだが…


「わざわざ兄妹の中から籤引きまでして決めたのに!!大変だったのよ出来レースにする為の根回し…私が退位したらそれを弟が継いで兄が摂政として実権を握るだなんて、そんなの兄の独裁となんら遜色無いなんて…あんまりだわよ!!」


だ、だわよ? 気になったので語尾を繰り返そうと思ったが彼女としても失言だった様なので聞かなかったことにする。


「帝王という積み木の玉座に馬鹿には見えない服を着て私の耳はロバの耳なんてそんな比喩を使いたくなる状況を変えたくなって何が悪いって言うんでしょうね〜?」

どんな比喩だよ全部盛りじゃねぇか、都心で一度食べたなんかすごいもやしとキャベツが乗っかってるラーメンよりも盛り盛りだなおい、


「って訳でリュージ貴方、イデアの世界に有るもの無いもの使ってこの帝国を乗っ取らない? 大丈夫、仮にこっちで死んでも私が呼んだ使い魔としての体が死ぬだけだから、うまーい事その記憶だけ飛ばしてイデアに戻してあげるわよ?」


こっちにメリットなんも無いけどこいつまさか交渉術とかど下手な人種か?

「因みに成功すると国の半分あげるわよ?」

うん、ド下手だった。 さてはプレゼンとかしたことないなこの人、誰がそんな突拍子もない提案に乗ると言うんだ…


「実際私の右腕となってしまえば私に実権を握らずに傀儡化させて豪遊生活だって夢じゃないのよ?

財務担当させて帝国の金庫を自由に着服させてあげるわそれでどう?」


なんで俺が犯罪する前提で話が進んでるんだよ、待て待て単なるリスクじゃないかそれ…

文句と言うべきか少し間をおいて彼女の案内で恐らく客間か応接室へ通された。

白みがかった大理石の廊下とは異なって内装は質素な雰囲気でモザイク模様の赤茶とベージュの色をした毛織の絨毯が部屋の中央に広げられ両壁には本棚と文明レベルとしてはかなり発達している様ではある…


転生ものって文明がそもそもないとかいうパターンじゃないのかよ、後はあれだ逆に進んでるとか中世欧州が王道ね、いつの時代近辺だこれ…


「うーん、まだ資料と史料がぐちゃぐちゃね。 それなりに頑張って整理はし始めてるんだけどまだまともに機能する部屋はあの地下牢とここと私の寝室位なのよ」

機能する部屋とはどう言う意味だろうかと思って直ぐにこの城は捨てられた場所なのよとフォローが入ったが尚更意味が分からない。


「あー、そうね説明しなきゃいけない事はそれこそ山の様にあるのだけど私と貴方が今置かれている状況から説明しましょう」


説明も何もお前の信用するに足るものが無いのだが…

「何から始めるにもそうね、貴方が知りたいことを私が答える質問形式にしましょうか?!」


良いことを思いついたとばかりに手を叩いたから一体何を言うかと思えば…

「とりあえず此処はなんて名前のどんな場所だ?仮にもあんたがその偉い立場だだった人だとして俺の身の安全と此処に呼んだ経緯を説明してくれ、まるで理解できん」


絨毯の似た色をしたソファーにどっかりと座り溜息を吐くと彼女は少し遠慮がちに話を始める、おや?さっきの威勢の良さはどこ行った?


「えっと…先ず貴方の立場から説明するわね。貴方は区分するなら使い魔という立場になるわ、イデア(異界)から報酬を条件に連れてこられたって事、ここまでは良いかしら?」


使い魔ってのがピンとこないが飲み込むにする。

「頷くのは肯定するって意味で解釈するけど、報酬は今のところこの傾きかけてる辺境の城くらいしかあげられないのが問題よねー」

「それよりもそのさ、イデアに帰る方法とかない?」

ここが聞ければとっとと戻ってやる!!


「え?そんなの簡単よ、戻りたいと思えばいつでも戻れる…けど使い魔自体の意思で戻るととてつもない魔力を喰うからお勧めはできないの、ちなみに言っておくと主人の意思ではいつでもイデアに送ったり戻したりできるからって人の話は最後まで聴いてくださいな?」

立ち上がったところを女に制止され渋々今度は静かに席に戻る、

「よしよし…いい子ね」

そーいう言い方はねぇだろとは思った、どう見立てたって俺の方が年上なんだがこの際細かいことは二の次で話を先に進めよう、実際問題右も左もよく分かっていないから事の成り行きを少し見てみようじゃないか


「さる霧月の晩に事件は起きた、その夜は風が嫌な唸り声を上げ木の葉を弄び月だけが平穏を保つ夜だった…」

「あーっとその話長くなるか?」

「へ?それなりには長くなりますよ、なんせ私の英雄譚としての序章悲劇のプロローグとして後世の歌劇に残すつもりで書き上げた原稿ですもの!!」


うわー、まじか暇過ぎて頭のネジを締め直さなきゃいけないとこまでになってしまったのか〜それほんま?

自信満々に言う台詞じゃないだろそれ。

自分の伝記とか有る事無い事色つけられて他人にいい様に評価されるとか俺は真っ平御免被りたいのだが、世の中には世に印象を残すとか存在を認めさせる事が生きる目的の奴いるからなぁ…


「へー、その伝記の執筆する暇があるほどに簡単に言えばやる事がないわけか…」

ギクッと古典的な反応が返ってきたのを他所に大体のあたりを考えてこの先を考えてみよう。


「だって、話し相手すらロクにいないんだもの仕方ないじゃない? 怖いわよ〜「誰もいない」のって、そこに誰がいるって思い始めたら末期ね。

迎えにきてくれる人も慰めてくれる人居なくって…イデアから使い魔を使役するなんてね正気の沙汰なのだから、成功してよかったとは思う反面貴方が何故連れてこられたか少し疑問に思うわ…」


それを俺に言われても困るんだが…ともかく戻れる事は原理上できる様で安心した、とっとと戻って秋作の準備をしなければ親父にボコされてしまうからだ。


「それで貴方何が出来るのかしら? 使い魔として優秀な面を見せて欲しいのだけれど魔法とか使えるのです?」


そんなん学校で習わなきゃまず無理だね、教科「魔法」実技で変身薬とかドラゴン退治させられるんだけどあのマンドラゴラだけは無理、気絶するわ(笑)ってんなわけあるかい、

「職業だって在宅で出来ることと実家の農家やってるだけだし…」「へ…農奴?」「おい、農家なめんなその言い方はしちゃなんねーぞ俺の国ではかつて農家の蜂起で支配階級が滅ぼされるなんざ日常茶飯事だったんだからな」


嘘はついてない。かつてはそうだったって話、支配する階級と被支配階級がほぼ同列に語られた時も少なくてもあったのだ。

「農奴怖!」

そう言えばこいつの名前なんだったっけ?発音しづらい事だけは覚えているのだが…

「そっかー、宮廷の支配を巡って争ってばかりじゃしょーもないってことね!」

うわー、ポジティブな捉え方嫌いじゃないけどもそこに飛躍するとは思ってなかったわ


「なんか、これからどうしようか考えたいんだけど貴方時間あるかしら!!」

現代人に一番聴いてはならない言葉だが俺の世迷言と知識から何か閃いて聞いてくれるのであればほんの少しだけこの女の言う事を信用をしてやろうとも考えて時間があると答えた…たしかにそう言ったが…

「まさかの日が暮れて夜にまでなるとは思わなかった」

「わ…私もこうなるとは予想してなかったわ!!」


こちらの世界も俺の元いた世界と同様に太陽は東から出て西に沈む事だけは分かっただけでも収穫だということにしておこう、途中休憩やらしてたし日が傾くのも確認していたがいやはや女性の長話というのは恐ろしいものだ、

「まさか時間跳躍の魔術を俺の知らん間にいつのまにか詠唱しているだなんて…誰が思うものだろうか、いやない」

時間軸に干渉する技術なんてあったらそれはそれて凄いことだが俺はそっち畑の人間じゃないからよく分からん。

「そんなつもりは無かったけどす、過ぎてしまったものはしかたないじゃないーー!」

あ、開き直った。


「今日は一先ずこの位にしておいて多少のあれはあったけれどこれにてお開きって事にしましょうかリュージ?」

あんだけ脱線に脱線を重ねた話を要約するのは骨が折れそうだ。

「よし、私が命じると貴方は元の世界へ戻れるけどまた結構頻繁に呼び出すかもしれないからよろしくねリュージ、呼ぶ少し前には連絡寄越すから」

ん……ッ?!

「なにその意外そうな顔、ずっと呼び出している訳ないじゃないの疲れるんだから」

疲れをほぐすように伸びをしながら彼女から衝撃の事実をぶん投げられてしまった。

「それでも報酬はきちんとやるつもりです、しかも貴方が出す成果によって報酬は増えるから楽しみにね!それと私の方はレイラって呼んでねよろしく!」


目眩にも似たぐにゃりと認識がが歪む感覚とブラックアウトした視界、俺は長い夢でも見ていたのだろうかと考えながら深い世界の底へと落ち着いて落ちていった…


不思議な事に時間は半日ほどいたはずだがその実二時間ほどしか経過していなかったし、きちんと元いた場所へ戻ってきていた…何だったんだ今のは…

どこか浮遊感を感じながら戻ってきた先には白いカラスが鳴いていた、今日一番驚いたのはそいつが渋い声で「よう若造どうやったいであとかいう場所は?」と聞いてきた事だった、勘弁してくれ鸚鵡だって人に考慮して真似るっていうのに…


それと余談だが服のポケットに金貨が一枚よく分からない文字を刻んであるものが入っていた。

鑑定に出してみたら凡そ1万円相当となんか現実的な数字が出てきたのでしょんぼりして帰ることになる。

日給1万円とか日雇いの労働者か俺は…

ダブルワークが期せずしてトリプルワークになったがそこまで楽はできそうにないのである、イデアの事を考えるのは取り敢えず喫茶店にでも入ってからにしよう…


以下続く!

「なんだこの前書きは」

「ちょっとした私の宣伝文のつもりなんだけど、ほら正当性を表す為には先ずは「神からの恩恵を授かったぞーー!」的なものが必要じゃない?」

「そんなもんかねぇ…」

「じゃあリュージはどう思う訳?」

「相手方の派閥闘争を煽って分裂した固定層を基盤に持つ連中を囲う」

「…貴方、友達って呼べる人イデアにちゃんといる? 大丈夫?」

「何故にそこまで言われりゃならんのだ…」

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