表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/28

第一話 「始まりは突然に」

 人は皆一度くらい「あの鳥みたく空を自由に飛んでみたい」と思うことはないだろうか。


自由の象徴としての空が書かれたりするとそれに対して釘を刺す様で悪いのだが空ってな、ものすごく寒いんだぞって言いたくなる。


イカロスの翼って話は空を飛んだ結果、羽が溶けて空から落ちるって話だしさ、夢見てるってそんないい事ばかりじゃ無いと思うんだよな。

なんて土転がしながら言う話じゃないんだろうが…まぁ、忙しい中でも暇なほうだからいいだろう別に。


今からね、小松菜なんて作ろうとしてんのよ俺。


農家と言えば畑に鍬入れてよいこらせっとやるのをイメージする人多いとと思うんだ。

でも今の御時世そうなのかって言われると首を縦には振り切れないんだよなこれが。


でも未来のカタチはビルの地下化なんかにでっかい地下プラントみたいなの作って、人工野菜とか合成野菜みたいのが安く売られるようになっちまうんだろうなぁ、きっと。

そんな未来の皮算用をしても仕方ない。今の世の中ではこっちが主流なんだ。


俺はそれに合わせて作業着で土にまみれるお仕事をこなしている。

昔ながらの方法でいつまでもやっている訳がないのに、さんちゃんだーなんだのととやかく言われるのはなんか腹立つんだよなー、

やっている本人たちの意見なんかよりも数字と統計だけ見ていじくり回している奴らの言うことの方が偉いんだから。




さて、本日は晴天なれど花粉多し…誰だよこれからは杉などの木材が売れるっていって山々に植樹したやつ…そのおかげでで健康被害超出てんじゃねぁか責任取りやがれ…

やれやれと思う事が人の文句ばっかり言ってても仕方ない。




溜息を吐いて見上げた空は今日は白の余白や黒に灰色のシミなどは見られない青さばっかりが目立つ綺麗な空だった。




親の懇意で大学までいっておきながら、結局の所実家の農家を継いだのには俺としても考える部分はもちろんある。




まーでも次男坊だし、兄は俺と違ってなんでも出来るし、東京かどっかで上手くやってんだろうなー、最近顔を合わせてないけどさ。

ま、こうして自分のことを考える時間が出来たと思うところや、実家ぐらしでうまい飯がついてるなも恩恵が大きいし経済的な事を考えてのことだった。




そらに今のご時世スマホやパソコン一台使えればそこそこ商売が出来る。それこそ方法を知っていればどんなものだって宝の山になり得る…かもしれない。

「おーい、ちゃんとやってるかぁ竜也~!」

低い声がなんか遠くの方から聞こえてきたけど、さてはなんか親父がサボってないか茶々入れに来たな?




そう言うくせにお茶飲んでるだけで親父が何にもしてない時の方が多いんだよなぁ…やれやれ。

あーい、今ぼちぼちやってんよ~と適当な二つ返事を返して俺は俺の仕事をこなすだけさ。






まぁ今の生活に不満があるって言ったら野暮だし、高望みだよ、畑仕事で忙しいもの。

最新技術とかの活用方法とか個人の出来る範囲で考えながらやってみたりしてるのでそれはそれで楽しい。




現状は余裕があって楽しい…楽しいが一つだけ、嫌な点がある…それはイノシシ(害獣)だ。

なんなんあいつら畑荒らすわ対策の罠とか潰していくわ…そりゃぁ美味しいものが無数にあったら食べに来るってのは分かるけどさ…


一晩で頃合いの野菜が掘り返されて食い荒らされた時にはもう頭にくるわ、本当に。

まだそんなにここは山間じゃないから猿は来ないがイノシシあいつは絶対に許さん、あとは最近イタチとかが増えてきたかな。






ん?なんの話も始まらなそうな気がするって?

まぁ、待ってくれよ。そのうちにはじまるからさ。

因みにさっきのはおれの父親なんだけどまぁ昔気質の頑固者でもぅ…何度納戸に閉じ込められたか…


っといけねこれは俺のトラウマだった、あまり深くは聞いてくれるなよ?




商業として成り立たせるには結構厳しいけど、今の生活は悠々自適で、程度晴耕雨読というほぼ理想に近い。

近所付き合いが物凄くめんどくさい、何あの寄り合い所帯みたいな感覚…まじ嫌なんだけど。


で後は嫁さんかなぁなんて…来ないよぁもうそろそろ三十路って言われ何分親から催促が来るほどだし女っ気なしで男色家なんかとまで言われる始末だよ全く…謂れのない偏見は辞めてください、本当に。




なにより自分が選んだ道だっていうこともあるが野菜の生産なんて一年通してギャンブルやっているようなものだ。

決して今の状況が楽しくないわけじゃないし社会に出たという感触もこれぞ大人だ!!という実感も湧かない。


最近は只々ルーチンワークじみてきたなと思えてきて深層心理でもそうなのかこれまた変な夢を見るようになった。




 一面の黄金色の海、アレは多分小麦かなんんだろうと勝手に解釈しているがそこで顔の見えない女と散歩をしている夢、決まって丘の上まで登り切る前で目が覚める。


夢の中では幸せな気分ではあるんだが覚めるとしんみりとしたいたまれなくない気分に陥るのはなんでだろうな。

しかもここ三日くらいその夢を毎晩見てるからなんか怖いんだよなぁ…




明晰夢とか脳の不思議とか調べてみたらそれなりに面白そう…いやいや、今調べたいことは別にあるんだった。それが先だよ、先。

 やれやれ…ぼんやりと空を見上げることが多くなって駄目だな、年寄り臭いと体まで老けこんじまう。「病は気から」ってよく言うがこの感じを病気にするならどんな病名が付くのかね~?




ん…?白い鳩…? ありゃ違うな鳩にしてはがたいが良すぎるな…


段々畑になっているうちの畑に鳥が一羽、悠々と白い翼をはためかせてこちらへやって来た。

白い…あれはなんだ人に慣れてるのか、我が物顔でトコトコとこちらへ近づいてきた。

まぁ、今のカラスごみ置き場とか平気で漁ってるし、人が来てもあんまり怖がらないもんな、図太い奴め。


顔立ちと体つきもやっぱり、カラスだ…でも真っ白いってのはあれかね、ある…アラビア…じゃなくて…ええっとそうだ、アルビノだよ、アルビノ!!




お前も大変だなぁ…色素の抜けた突然変異の動物はだいたい自然界で生き延びるのは稀であり、保護されることが多いのだが、やれやれ珍しいこともあるものだ。

畑にいる俺ののことも気にせずにすーっと降りてきて小さく「かー」と鳴くと興味ありげにこちらを向く。


所詮はカラスだと思って作業に戻るのだが、どうも視線を感じて振り返ればカラスがこちらの様子を窺っている様だ。そんなに人間は珍しいわけでもないだろうに、




気になって注意力が削がれるので食べ物でも欲しいのかと適当なものを探す。

確か腹が空いた時に食べようと思っていたカレーパンが確かバックの中に有ったはずだが…あったあった。 


「ほーれ食べ物だぞ~居着くのは勘弁して欲しいが他のとこ(畑)を荒らされるよりは良いからな、というか揚げパンだけどこれ大丈夫なのか…?」(良い子はあまり真似しちゃ駄目だぞ?) 




あまり味のしないカレーのルーが無い場所を千切って与えてみた。


「こーいうのひさびさだ~あれあれ、生き物観察とか小学生の自由研究か何かだな」


少し微笑ましい気分で白色のカラスを遠巻きに見ていると自分の作ったパン屑の道を警戒心もあまり無く近づいてきた。やっぱり腹減ってたのか…

少し驚きながらもパン屑を自分の足元から少し先にまとめて置いてみたらそれもつまみ出したのでよっぽど腹が空いていたのかそれとも警戒心が薄いだけかどちらかだろう。



「大きめの九官鳥かやっぱり鳩とも思ったがこの大きさなら…うん間違いなくカラスだなお前」

物言わぬ動物に話しかけてしまうという親に見られるのすっげー恥ずかしいことをしているがまぁ、大丈夫だろうさっき様子を見に来たばかりだったし、

「おーいあんた、その食べ物もっと寄越せよ」


う…ん? 俺は今誰かに話しかけられたのか?

「話を聞いてないのかな聞こえてないのかな?


確かこの地方の言葉はこんな感じに話せば通じるはずなんだけどなおーいあれ?」




辺りを見渡せど人の姿も無し。そして食べ物の話をしているということは…待てまて早まるな落ち着けって俺、寝不足で幻聴が聞こえてるのか…いやいやいやいや、昨日夜の10時には寝てたし、それはない。


なら変なキノコでも食べたか?って今は春前だからそんなわけ無いし、朝から酔っぱらって農作業するほどふざけた精神持ち合わせてないし…ならどういう事なんだ?


これが俺の頭の誤作動でも起こしたんでもないとしたら一体どういう風の吹き回しなんだよ。


まさかとは思うがついにカラスは九官鳥やインコの様な生態を身に付けてしまったのか…?

俺の頭が追いついていない中で白いカラスは呑気にかーと鳴く。


俺にこの後どんな事が待ち受けているのかなんてこの時は全く考えつく訳がなかった…




次回へ続く!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ