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局地戦

作者: 雪つむじ
掲載日:2017/06/30

カテゴリーは、ここで合ってますか?

辺りは、先ほどまでの戦いなどうそのように、静まり返っていた。

「ちっ」

真っ赤に濡れた自分の手を見て、舌打ちをする。

腕にも、同じサイズの赤い痕。

いつだってそうだ。初めてこいつらに出会った時から、このやり取りは変わらない。

「やったのか」

「あぁ、やった」

ぐっと、手を握ると、少し、ぬるっとする。

なのに乾き始めたものが、少しだけパリッとして。

「傷を見せろ」

そう言って全身をチェックし、互いに傷の手当てをしてく。

薬が、傷にしみる。

「大人しくしていれば、死ななくて済んだのに」

手当をしながら、つぶやく。

「やるか、やられるかだ。それはあいつらも知っている」

冷酷だなんて思うだろうか。

いや、この戦いが始まった時から、冷酷じゃなかった事なんて、只の一回もないだろう。

物心ついたときには、もうこの戦いに身を投じていた。あれから、もう何十年……

毎年、同じ季節にやってくる奴らを、迎え撃つことにはもう慣れてしまった。

奴らもそれをわかっていて、少しでも気を抜けば、容赦なく襲い掛かってくる。

最初のうちは、なすすべなく蹂躙されていたこともあった。

あのころは、無力だった。ただ、助けを呼ぶことしかできなかった。

しかし、その侵攻を、黙って受け続けてきたわけではない。

時に守りに入り、時に打って出て。

そうやって、自分たちの生活圏を守ってきた。

安全圏と言ってもいい。

最初は目に見えるバリアを張り。

突破されればバリアの目をより細かいものとし。

バリアは次第に、はっきりとは目に見えないものとなり、最終的には侵入してくる敵を、自動で攻撃するものとなった。

そうなるまでに、どれだけの犠牲が双方に出て、どれだけの血が流れたことか、わからない。

わかるのは、そういったものの上に、この戦いは続いているということ。

背中を気にしないで済むというだけでも、どれだけ安心できるだろうか。

そして、今はこうやって、攻勢に出ることができる。

誰かを、守ることができる。

今の俺は、エースだといわれる。

だが、それが何になる。

ただ、この戦いに生き延びてきたというだけの事だ。

誰かが囮になって、その間に別動隊が奴らを叩く。

何の発展性もない戦い方を繰り返して。

あいつは、途中で挫折した。

逃げまどい、倒れたあいつに群がっていた奴らの事を、俺は許さない。

プ~ン……

どこからともなく、音が聞こえる。

「敵襲!」

ハッとする。

まだ戦いは終わっていない。

巣食う奴らを駆逐すること。

そうしなければ、守ることはできない。

「防御陣を形成、持ちこたえろ」

火がおこされ、新たな煙が立ち込める。

「すごい数だ、守り切れるのか」

ここにいれば、奴らはやってこない。

だが、これでいいのか。

このまま、安全な所にいて本当にいいのか。

「安心しろ、今年の俺達にはこれがある」

そう言うと、一本の筒が差し出された。

そうだ。

俺達には、これがある。

キンチョールを片手に、俺たちは立ち上がる。

明日の勝利をつかむために。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 2度目の感想、失礼します。 私が言うのもなんですが…読み始めたときはよくあるパターンかな?と思いました。が、最後のオチでいい意味の裏切りにあえました。 オチを知ったときの素直な感想は「ま…
2017/06/30 21:44 退会済み
管理
[良い点]  ただ蚊を退治する事なのに、とても面白ろかったです。
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