1章-1 欲望の国
「我はそなたら人を甘い言葉で惑わす者、よって『蛇』である。」
私はいつも通り書斎で父が遺していった魔術書を読み漁っていた。今私達の国は周りの国々から攻め込まれ、崩落するのも目に見えていた。何かこの状況を打破できるものはないかと考え、私は書物を漁ることしか出来なかった。そんなときであった、目の前に謎の魔法陣が出現し、そこから「それ」は現れた。
「そなたは今焦っておるな、この国を守ろうと必死だ。」
「それ」は青色のローブを纏っており、蛇を模したような仮面を付けていた。時折、目の部分が赤く点滅しており不気味な雰囲気である。
「我ならそなたが今必要としている魔法を提供することができよう。」
「それ」が手を宙にかざすとそこが発光し、怪しげな魔術書が現れていた。
「だが、それもそなたの誠意次第だ。そして我がそなたに求めるものはー。」
あの時私はどうかしていたと思う。あんな訳の分からない者の力を借りようとするだなんて。だが私はその力がどうしても欲しかった。だから私は私のーーを差し出す。
「よろしい、それならばそなたに知識を授けよう、周囲の国々を蹂躙するための魔術を。」
「それ」の手の中の魔術書が光を放つ。
今思えば私はあの時から壊れていたのだろう。そしてこの国が滅びるという運命も決まっていたように感じる。