2.1日目 森の中の風
「うーん...ここはどこだ...?」
じめっとした空気の森の中少年は目覚めた。
少年の名前は北風斗星。今を駆け抜く(?)中学2年生である。好きなものはうな重と刺身など和風の物、嫌いなものはカレーなど洋風のものである(ただしピザは好き)。欲望の塊のような人間。そして、元リアである。元リアである。
「繰り返すだけ悲壮感増すからやめよううん」
若干話を盛り上げる程度のコミュ力は持ち合わせているものの、極度の人見知りで、初対面の人にはあまり突っかからない。それでも数日話して入ればすぐに仲良くなる。
「人とはあんましあいたくねえけどな...さて」
目の前の景色を見て思わず唖然とする。
「これ...卵か?」
禍々しい球体がこちらを見ていた。
「しかし、こんなアマゾンみたいな森に何でこんなもんあるんだ?いや、あるんだろうけど、こんなに禍々しいのはねえだろ」
そう思っていると空から声が聞こえた
『それは私が置きましたよ』
「うおっ」
突然の大きな声にびびる。さっきの精霊だ。
「そんな声出すんじゃねえよ、周りのやつら逃げるだろ」
『逃げたりしませんよ、テレパシーですよ』
「こいつ直接脳内に・・・!」
微妙に使い方が違う気もするがまあいい。そうなると...
「俺だけ話してるってどうなの?はたから見ればただの痛い人なんだが」
『あなたもテレパシーすればいいじゃないですか』
「できんのかよ」
まあ、そんな気はしていたが。
「でどうすんの」
『念じて話すだけ。簡単でしょう?』
「当たり前みたいに言いやがって。こちとら魔法の一つも使えん身やぞ」
そういいつつも念じて話してみる。
『あーあーあーマイクテスマイクテス...聞こえますか~』
『聞こえませーん』
『聞こえてんじゃねえか』
漫才にしか見えないやり取りをしつつも、そろそろ本題に入ろう。
『んでこの卵は?』
『ドラゴンの卵です』
『思ったよりなんの捻りもねえな。んでこいつをどうしろと?』
『育てて強いドラゴンにしてください。あなたの手助けになる、いい相棒になるでしょう。」
『何?進化とかあんの?』
『ありますよ』
『あるのかよ』
あると決まれば聞きたいことはただ一つだ、それは...
『俺も進化できんの』
『残念ながらできません』
『できねえのかよ!ドラゴンできて人できぬとかなんだよ!何の境界線だよ!』
『できるのはマナを吸収してエネルギーに変換できるもののみ。それ以外はできませんよ』
『マナって魔法っぽいな、気に入った』
中二心くすぐられる単語だ。マナといえば、魔法もありそうだな。
『んでこの卵いつ孵るんだよ』
『3日後です』
『おい!?普通すぐ孵るだろこういうの!』
『それまでどんな生き方をするのか見てみたいんですよ、私が』
『お前の私利私欲の産物かよ!俺は納得いかねえぞ!』
と言って恨みを晴らすとそれから大きく息を吸った。
「まあ恨んでてもしょうがねぇ、まずは住居探さねえと」
と声に出した
『そうですよ。うだうだ言ってても何も進みません』
『お前がそれをいう筋合いはないと思う』
と声に対してそういった。
俺は卵を担ぎ歩きながらテレパシーで話しかけた。
『そういやさ、お前なんて呼べばいいの?お前じゃやりずらい』
『そうだねえ...天の声とかどう?』
『テレビ番組みたいじゃねえか!』
まあ、特に問題はないと思うので、それでもいいな。ってか急に距離詰めてきたな。
『じゃお前の名前は天精だ!』
『さすが中二』
『地味にdisんなし』
そう話しながらうだうだ10分歩いていると
『ごめん、今日は終わりみたいだ』
『結構一気に距離詰めてきてんな。なんでだ?』
『マナが足りないんだよ、アナウンス程度ならできるけど、話すとなると長時間は持たない。そうだな あ、1日2時間ぐらいかな?』
『ゲームみたいだな。わかった、こっからは俺一人で何とかするよ』
『ありがと。んじゃ、おやすみ』
とそこで声は切れた。
あいつ、ものすごい距離詰めてるな。いやここまで詰められたのは久しぶりだ。親友と元k...
「それ以上はやめとこう」
黒歴史っちゃ黒歴史なので、あまり思い出したくはない。
「さーて、さっさと洞窟でも...ん?」
風が吹いた。それもただの風ではない。
獣の臭いを乗せた風が吹いた。