2017/01/08に見た夢 華の都 大東京
こんな夢を見た
泣きたいくらいに憧れた華の大東京と言うほどではないけれど、田舎で生まれ育った人間ならば、一度は東京での生活を夢見た人は多いだろう。
牛を買い始めたとか言うわけでもないが、アルパカを飼っている。
高校を卒業して十年ほど勤めた会社が倒産してしまい、途方に暮れていたところを仕事で付き合いのあった今の会社に世話になることとなり、とりあえず新しく働き始めた会社のグループ企業がある東京に長期出張することとなり、二十代最後の年にある意味で夢を叶えた形となった。
もちろんその夢が吉夢か悪夢かはまだわからない。
逃げ惑うアルパカを追いかけて捕まえる仕事は体力勝負であり、なかなかきついものもあるのだけれど、今日は休みを利用して東京観光に繰り出した。
オタクを自称するものならば、一度は訪れたい聖地・秋葉原。
割と薄汚い街並みを、キョロキョロと見回しながら歩く。
東京に来て思ったのだけれども、車がないとどこにもいけない地元では、必然的に免許を取り、車を購入して運転する機会が多く、そうなってしまうと不便で自由の効かない交通機関を使うことは少なくなり、歩く機会も少なくなるのだが、自分の車を持って来ているわけでもなく、交通機関の充実している東京は、田舎の地元よりも、逆に歩く機会が多くなる。
地元ならちょっとコンビニに行くのでも、車で行くのが普通なのだけれども、もともと店が多いと言うのもあるけれど、歩くのがデフォルトになってしまっている。
出張一ヶ月目ともなれば、随分となれたものだけれど、最初はそれがいちばんの苦痛だったのである。
普通の街中だけれども、意外と坂道が多かったりして、平坦な田舎の地元とは全く違い、東京というところは意外と住みづらい場所であると認識したのであった。
秋葉原の細い路地裏の道にあるビルの中のちょっと怪しげな店に入ったりしたのだが、ビルだというのにエレベーターすら付いておらず、コンクリートの階段を、ひたすら目的の店がある階まで登ったりしたこともある。
疲れ切った私は秋葉原を去る事にし、駅まで戻って路線図を見ると、ちょうど山手線の円の反対側が若者の街、原宿であるという事に気がついた。
特に行くあてのない観光である。
私は東京という街の広さを考慮せず、山手線を中央から横断するだけならさほどの距離はないだろうと誤解して、秋葉原から原宿を目指して歩き始めたのである。
全くもって愚かであるというほかない。
そもそも山手線の各駅それぞれが、私の地元の街と同じ規模かそれ以上の規模だというのに、その中を横断しようというのだから無謀である。
当然のように力つき、道端にへたり込むこととなったのは二時間後のことであった。
タクシーに乗るような経済的な余裕はなく、バスに乗ろうものならどこに行くかわからない。
中央線はすでに見えなくなり、自分の迷走は確かなものになっていた。
ここはどこか?
私は誰?
もはや猶予は残されていなかったのである。
そんな私の目に地下鉄への入り口が入って来たのは奇跡であった。
私は長い長い階段を降りて、地下鉄のホームで原宿に行けることを確認し、地下鉄に乗り込む事にしたのである。
人混みの流れに乗り、地下鉄に乗ったのだが、なぜか着いた場所は原宿ではない場所であり、私は地下鉄を乗り間違えてしまった事に気がついたのである。
ドンマイ‼︎
もともと行くあてのないぶらり旅だったわけであるから、たどり着いたのは原宿ではなくても何ら問題ないわけである。
気になるのはどうやって宿泊先の会社が借りてくれているウィークリーマンションに帰るかということだけであった。
ここがどこであるかを認識するために、私は地下鉄の駅とつながっている地下街を歩く。
地下街は人で溢れて歩くのもままならず、譲り合いの精神はないのか、こちらは避けているつもりでも、すれ違う人とガンガン肩がぶつかるのので、私は人混みの中を満足に歩けない田舎者であると自己批判するしかなかったのである。
恥ずかしさと切なさと愛おしさを感じた私は、階段を上がり、地上に出る事にしたのである。
ちょうど階段を上がって目に入ったには、喫茶店であった。
喫茶店に入って、一休みをしようと思ったのだが、店の中には客も従業員いなかったのである。
しかし店は開いているのだから、従業員はちょっと出かけているだけではないかと思い、店の中で従業員が帰ってくるのを待つ事にした。
待てども待てども従業員は戻ってこなくて、疲労困憊だった私は眠りに落ちたのである。
目覚めて時計を確認すると、数時間ほど寝ていた様だった。
「お目覚めですか。すいません、野暮用でちょっと出ていたものですから。それはともかくお久しぶりですね、鰤鰤さん」
なんと喫茶店の店主は勝手私とともに倒産したブラック会社でともに働き、待遇を巡って当時の社長と殴り合いの末に退職していった元同僚の五所川原くんだったのである。
退職後に上京し、飲食店をやっているという噂を聞いてはいたのだけれど、まさかのその店がこの喫茶店だったとは全く知らないで入ったのである。
偶然というのは恐ろしい。
そして私はカウンターに立っている五所川原くんの後ろに掛けられている血みどろの鏡も恐ろしく思うのである。
滴る血が模様を描き、ドクロに見えるのは私だけではないはずだと思う。
よくよく見れば模様はドクロだけではなく、苦しんだり、悲しそうだったり、怒っていたり、恨めしそうにしている顔も何人分か確認することができる。
これは何かの呪いか、悪霊かと確信するのだけれど、五所川原くんんはあまり気にしている様子はない。
「あぁ、これですか。そんなに悪いものじゃないんで、気にしなくても問題ありませんよ」
五所川原くんはガラスコップを笑顔で磨きながらそう言った。
「いやいや、めちゃくちゃ悪霊感満載じゃないか。お祓いしてもらうとか、ガソリンをかけて焼き尽くすとかしたほうがいいんじゃないか」
私はそう忠告するのだけれど、五所川原くんは相変わらず物騒な言動ですね、鰤鰤さんはと笑うだけであった。
その時、鏡についた真っ赤な血が移動して文字を浮かび上がらせた。
「調子に乗っているんじゃねぇよ。殺すぞ。このスットコドットココイ。お前を許さないし、4%アップの消費税増税も許さない」
カチンと来たので、鏡を叩き割ってやろうと立ち上がったら五所川原くんはこんなのは拭けばいいんですよと、雑巾で鏡を拭き、真っ赤に染まった雑巾を見て、今日はちょっと多い日ですねと意味ありげに呟いたのであった。
心霊現象も解決し、私は会社が倒産して新しく働き始めた会社で長期出張で東京に来ていることを伝え、今日は東京観光をしているのだと伝えた。
「じゃあ、僕が車で案内してあげますよ。外に僕の車が止まっているんんでそこで待っていてください」
と言ってくれたので私は店のを出て車の前に立つ。
「強盗事件が発生しております。武装した犯人は人質をとって現在も逃走中であり、近隣の住民の皆様は屋内に入って鍵をかけ、安全を確保してください」
そんな警察と思われるスピーカーからの音声が街中に響き渡り始めたのである。
私は車に乗り込んんで、鍵をかけていようと車のドアを開けた瞬間、右腕に若い女性を抱え、左腕に銃を持った中年の男に銃を突きつけられたのである。
「車を運転しろ。それとも死にたいか」
強盗である。
「いや、この車、私の車じゃなくて知人のものですから、鍵がないので運転できませんよ」
と私は言った。
「じゃあ、仕方ないな」
強盗はそう言うと、人質を抱えて立ち去ったのであった。




