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転生?華の乙女の悲劇!!!


その後、私は零の元から離れ転生を果たした。

緩やかに落ちる意識。

そんな私を最後まで零は愛しげに見つめ続けていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ハッと意識を取り戻す。

傍にはもう零はいなくて心寂しさを覚えたが、転生後に再び会えるからと自分を叱咤した。


『ここが…異世界?』

『そうだよ。どうだい身体の調子は?実は予想外に月詠さんの魂の容量が多くて、人間の身体には合わなかったから龍体にしたんだ。何も言わず決めてゴメンねぇ』


突如脳内に響く零の声。

そしてその内容に、青筋が浮かぶ。


『今、なんて言ったのかな?』

『え?魂の容量が多くて、人間の身体には合わなかったから龍体にしたんだっ…ヒィィッ!』

『乙女の身体が龍ってどういう事じゃぁぁぁぁあ!!!!!』


叫んだ瞬間、喉奥がぶわァァァと熱くなり、気が付いた時には白っぽい炎と蒼い炎が絡み合ったブレスを吹いていた。


『あぁぁぁああ!!ブレス!!ブレス出てる!!!』

『そりゃ出るねぇ。龍だし』

『取り敢えず、説明しようか』


にこぉ…とそれはそれは素晴らしい顔で笑ってみせる。

この恨み…どうしてくれようか。

声だけで震えている零は、きっと冷や汗をかいていることだろう。


『え、えーと。転生する魂には容量があって、その容量に入る分だけ特典をつける仕組みがあるんだ。勿論、容量には個人差があって魂が美しければ美しい程に容量は多くなる。容姿が良くても心根が醜ければ容量も少ない。逆に醜くても心根が美しいのなら容量は多くなる。という感じで。月詠さんの場合、魂が凄く…本当に凄く綺麗でね。天界でも一時大騒ぎされる程に美しいんだ。だから容量もたっぷり。でもその容量たっぷりの魂に耐えられる器が存在しなかったんだ。だから私が一から作ってとびきり上等の器を用意した。それがその龍体だよ』

『へ、へぇー…』


引いたわ。自分で自分に引いたわ。

この私の魂が天界でも大騒ぎされる程に美しいだと?

有り得ぬ…断じて有り得ぬ…!!

男同士のう腐腐な展開を見て興奮する様な女だぞ!?


『この龍…零が作ったんだよね?』

『そうだよ!どうだい?美しい身体だろう?』

『うん…凄く綺麗…!』


光を弾くオパールの様な乳白色の鱗に、鱗よりも透明感のある大きな翼。口元から覗く牙は白く鋭い。

鉤爪は牙よりも鋭く長いがしなやかな美しさがある。

そして、全体的に透明感溢れる白さの中、唯一、血よりも色濃い真紅の双眸は、鮮烈過ぎた。

生きているのか、そこに存在しているのかすら曖昧な神秘的なまでに美しい龍。

その美しさに溜息をついた。


『この龍は世界に居なかった龍なんでしょ?そう簡単に新しい種族を作っちゃって良かったの?』

『月詠さんの為ならたとえ世界の一つや二つどうってことないよ』

『いやいやいや!それは流石にヤバイよ!!アカンやつ!!!』


慌てて止めた。

何この神怖い。

私のせいで危うく世界が二つ程消える所だった。


『言い忘れてたのだけれど、その龍の種族名を〝ローゼリュフェリア〟という。まぁ、簡単に言えば私と同等くらいの力かな』

『ーーーーはい??』


今有り得ない事言ったよねコイツ。


『アンタ私を人外にしたい訳?』

『もう既に人外だと思うけども…?』

『……もういいもん……』


龍だから無駄にデカイ身体をこれ以上となく縮こませて拗ねる私。

傍から見たらキモイと思う。


『あわわわ!ご、ごめんね。ただ私の花嫁に手を出す輩が居ないように人間ではなく恐れられる龍にしたんだ。そうすれば皆近付く所か逃げて行くだろう?』

『……でも零、アンタ自分と同じ力って言ったじゃん。つまり天界の天使とか他の神も手を出せない様にしたって事でしょ…』

『ふふふ。あぁ、なんて可愛いんだ。ね…拗ねないで愛しい子。人間の暮らしが見たいのなら、人型になって、見てみ

目線がさっきより低い!

零が先程言っていた湖まで駆け寄り、水面を覗き込めば、そこには絶句する程美しい少女が映った。

足首ほどまである艷めく乳白色の髪に、少し見開かれた伏し目がちな真紅の瞳。シミ一つない瑞々しい肌。指の先まで整えられたしなやかな肢体。


「だ、だれ…」

『もちろん、月詠さんだよ?』

「そんな事聞いてるんじゃないわよ!なんでこんなに綺麗なの!?元の私どこいった!!!」


なんて事だ。

声まで美しいのかよ。

歌姫もかくやの美声とか有り得ぬ。


『ふふふ。その姿が本来の月詠さんの姿だよ。地球でも色彩は違えどその容姿になる筈だったんだ。けれど、大変申し訳ないことに世界神が手配ミスをしていてね…はぁ…』

「ここまでくると怒りを通り越して冷静になってくるわね」

『本当に申し訳ない…』

「零が謝ることないわ。ミスをした者が悪い。上の立場というのも部下が無能だと考えものだわぁ」

『本当に私もそう思うよ』


心底疲れ切った声で言う零に思わず笑む。

ふと、私は思い付いた事を尋ねた。


「そういえば、ここは何処?」

『あぁ、言い忘れていたね。ここは剣と魔法の世界。今いる場所はセルシュ王国の最北端スィード。社会情勢は絶対王政で、基本的には上から王族・公爵・侯爵・伯爵・男爵・子爵の六貴族となっている。スィードを治めているのは辺境伯と呼ばれるヒュノスレア家で、辺境伯は立場的には公爵と匹敵する権威をもっているかな』

「なるほどぉ。中世ヨーロッパの様な世界という事ね?」

『簡単に言えばそうかな。それに魔法とか魔物とか。あとはやっぱりギルドとかそういうのが加えられた感じかな』

「なんだか楽しそう…絶対にギルドに行ってやる!」


あーはっはっはっ!と高笑いをしてやると、クスリ…と零が笑った。


『とても楽しそうでよかった。これからはあまり干渉出来なくなってしまうけど…大丈夫かい?』

「えっ…零と話せないの…?」

『全くという程ではないよ。けれど、君を贔屓していると他の神々から言われてしまう可能性が高いから…なるべく話す機会を設けるよ。私の可愛い人』

「じゃあ、その時まで待ってる!それまで…う、浮気するんじゃないわよ?」


少々高飛車になってしまったがこんな台詞恥ずかしくて中々に言いづらい…!

でも浮気しないで欲しいのは…私一人だけを見ていて欲しいのは本当だから。

私は恥をも飲み込もう。

そんな私の決心を感じたのか、嬉しそうに笑う零。

く、くそぅ。これが恋愛経験の差かっ!


『する気なんて無いです!だって私にはこんなに美しくて可愛い愛しい人がいるんだから』

「~~~ッッッ!!!」


ほんっっっとこれだから美形は困るっ!

真っ赤になった頬を隠すように俯き、少ししてガバッと顔を天に向ける。


「異世界転生!!楽しんでやるんだからぁぁぁああああ!!!!!!」




ーーかくして、私の旅は始まったのだ。

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