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無意味思考

作者: 春波

隣にいる者から目を逸らして、俺は空を見上げる。その行為には意味など無く、世界はただただぐるぐるぐるぐる廻り動きを止める事はない。永遠に時は刻まれ、自らの意思に関係無く過ぎ去って行き、元には戻らない。それは時という物が創った、生きている者――生きている物――達に定めた、酷く当たり前で滑稽で、何より残酷な「運命」と言う代物だ。一体自分は何という物だろう。何故時は自分を生み出したのだろう。そしてどうしてこんなにも辛く、そして汚染された世界を創り上げたのだろう。この思考には何の意味も含まれていない。

結局の所、自分達が生きていると言う事には、大きな意味は無いのかもしれない。ひとりひとりの生きている意味は、数字で表せばたった0,000005mm程度の物でしかないのではないか。それが集まって集まって、そしてまた集まって固まって、生きていると言う事が大きな意味になって行くのではないか。

――最近はそんな馬鹿げた事しか考えられなく、仕方ないから思考している。

平和で平凡でありきたりで普通で終わっていて壊れていて何も無い生活をしている自分は、阿呆臭いくらいに面倒な事を考えている。なんでそんな事を考え思考し勝手に決め付けているのかは、自分でも良くわからない。きっと平和で平凡でありきたりで普通で終わっていて壊れていて何も無い生活をしているのに厭きてきたのだろう。まるで全部クリアしてしまったゲームを何回も繰り返しやるのに、厭きていく様に。

まあ、それでも別に困りはしないのだが。

何となく視線を横に動かす。そこには、いつも傍にいる自分にとってとても、きっと大事であろう存在が一緒に並んで歩いている。そんな存在があっても――生きている内は絶対に必要なのだろう。

こいつは、時が構築した「運命」と言う物をどう思っているのだろう。きっと、どうとも思っていないのだろう。俺の隣に居る存在は、難しくごちゃごちゃしたくだらない事を考える事を放棄している。

全てを単純に理解する。

単純に理解出来るほどの、軽い思考能力。

俺とは造りが違いすぎて、俺にはこいつが理解できないが……別にいいのだろう。自分の事も理解出来ない俺が、隣にある存在の事をわかり切れる筈が無い。

「    」

そいつは俺を呼ぶ。そいつの笑顔を見て、俺は――。

――もう、面倒な思考は止めだ。

終わりだ。終了だ。滅亡だ。破壊だ。

俺の隣にこいつが居てくれれば、

世界が廻っていようが停止していようが関係無いんだ。

――もう、馬鹿げた阿呆臭い思考は止めだ。

世界なんて。時なんて。「運命」なんて。今なんて。

俺の隣にこいつがあれば、

何も思考せず鈍感に単純に意味無く生きていける。

そう思えた。


――なあ。

隣でずっと一緒に歩いててくれないか?


俺はそいつの名前を呼んだ。




初投稿でした。文章訂正誤字脱字等がありましたらご報告いただきたいです。

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