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いつか勇者となる君は  作者: Norinα
第一章 娼館暮らしの冒険者
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第4話 森のダンジョン

 街を出るなり、いきなり走らされた。


 何とかついていける速度だ。


 ディークが定期的にチラ見してくる。


 僕がちゃんと付いてきているか確認しているようだ。


 親切心ではない。


 逃げるなよ?


 そう言わんばかりの鋭い視線だ。


 正直、逃げようと思えば逃げられる……。


 でも、ダンジョンには興味がある。


 ダンジョンと言えば宝箱、金策だ。


 危ないことはしたくないのだが、生きるためにはお金が必要。


 A級冒険者と一緒なら、多分死ぬことはない。


 ……と、僕は必死に走りながら甘いことを考えていた。


 3時間、森の中を走って、そこに着いた。


 大きな木で組まれた門と、下へと続く階段がある。


 甲冑を着た騎士の方々が、周囲に陣を張っていた。


 その中の一人が、ディークに駆け寄る。


「A級のディーク・ブレイマスさんですね。騎士団の詰所より連絡は受けています。そちらは……同行者ですか?」


 僕は軽く頭を下げる。


「おうよ。街からここまでぶっ通しで走れるくらいの実力はある。新ダンジョンなら、まだ育ってねぇだろ。一緒でも問題ねぇ」


「ホーンフォレストを走り抜ける……分かりました。同行を許可します。中の様子はまだほとんど分かっておりませんので、お気を付けください」


「問題ねぇ。それも込みで依頼だ。行くぞ、新入り」


 ディークの言葉に、僕は溜め息を吐きながらも、心を躍らせてダンジョンに足を踏み入れるのだった。


 ディークは両手剣を肩に担ぎ、僕の後ろから階段を降りてきた。


――――――――――――――――


 いや、死ぬ!


 骸骨やらゾンビやら、ゴブリンからオークまで。


 もう1時間くらい、ずっと戦っている。


「気合い入れろ新入り! ここを生きて出られたら、奢りで娼館に連れてってやる!」


 変なフラグを立てるなよ!


 というか、ダンジョンってさ。


 もっと迷路みたいな感じでさ、宝箱とか、罠とか、色々あるイメージじゃん?


 階段を降りた先にあったのは、体育館みたいな大部屋だけだったの。


 しかも入ったら、扉がガッシャーンって落ちてきて閉じ込められるし。


 入ってきた場所以外の3方向の扉が開いたと思ったら、モンスターハウスですよ。


 僕はウサランスを薙いで、スケルトンを吹っ飛ばす。


 2メートルくらいあるオークには、頭に一発、ウサランス。


 ゴブリンがウサランスを掻い潜ってくるけれど、槍を持っていない左手で軽くグーパン。


 それだけで、ゴブリンは塵になって消えた。


 ここの魔物を屠っても、死体は残らない。


 残るのは、核となる魔石だけだ。


 ダンジョン仕様みたいだね。


 ディークも両手剣を豪快に振り回し、モンスターを圧倒している。


「ハッ、新入り。俺の背中を任せられるヤツは久々だ。名前を、聞いてやる」


 上から目線なのは腹が立つけれど、最初は強そうなモンスターを受け持つような立ち回りを見せていた。


 A級というのも納得の強さだし、何となく気遣いも見える。


 口と態度だけが悪いヤツなのかもね。


「ノリ・ブラックシート」


「よし、ノリ。お前には特別に、俺を『師匠』と呼ぶ権利をやろう。喜べ。貴重な権利だぞ?」


「はいはい、師匠、師匠」


「師匠は1回で良いだろ!」


 ディークから学ぶべきことは、それなりにある。


 何より、いつかディークより強くなって――。


『僕より弱くて、まだ〘師匠〙で良いんですか?』


 と、煽り散らしてやるんだ。


 不純な動機くらい混ぜても良いでしょ?


 だって、今後の面倒事を考えれば、やってらんねーもの。


「ノリ……何か悪いこと考えてねぇか?」


「そんなことはないですよ、師匠。あ、次が来ました。あと1時間くらいで、終わってくれるとありがたいですね!」


 僕はウサランスでゴブリンを3体まとめて突き刺して屠る。


「言うじゃねぇか。へばるなよ! ノリ!」


 そうして……2時間後。


 全てのモンスターを狩り尽くし、ようやく外へ脱出できたのだった。


 宝箱?


 そんなものは無かったよ!


 僕の希望を返せ!


 良かったことは、レベルが39まで上がったくらいだね。森を彷徨っていた時に上がった分も含めて、それなりのレベルになってきたと思う。


 力の後は知性にまぁまぁ振ったが、ここからは敏捷さに振っていくことにする。


 師匠が騎士団の方々と話している間に、スキルもゲットだ。


 ヒールに次いで、リカバリーを取得。


 これで状態異常も大丈夫。


 今まではどうしてたって?


 錬金術で薬を合成していた。


 薬も効くんだけど、効果が遅いからね。


 薬の知識はあるのかって?


 こう見えて、僕は薬剤師だったのだよ。


 主要な抗生物質くらいなら、構造式も頭に入ってるさ。


 でもでも、そんなことよりも!


 全属性魔法をレベル3まで取ったら、『アイテムBOX(保冷無)』が取得可能になっていた。


 迷わず取った。


 異世界転生ド定番の『鑑定』は、もうあるからね。


 だって鑑定無しじゃ、森に生えるキノコとか木の実とか食べられないじゃん?


 僕は早速、周囲の草花を鑑定でチェックし、ポーションや薬の材料になりそうなものを掻き集める。


 アイテムBOXの容量は軽トラックくらい。

 レベルが上がれば増えそうだし、保冷機能も付けば野営が楽になるぞ。


 いや、ちょっと待って。


 ……なんで森で生活する前提のスキル構成になってるんですかね?


 まぁ、キャンプは好きだけどさ。


「ノリ、ナニやってんだ?」


 師匠に、毒キノコでも食ったのか的な心配をさせてしまった。


 師匠に心配をかけるなんて弟子失格。


 今度、毒キノコでも盛ってやろう。


「師匠、もう良いんですか?」


「あぁ、帰るぞ。少し南に行けば街道に出る。騎士団様の馬車で凱旋だ」


 ウェスタリアの西門から出て、無我夢中で走っていたから、方向感覚が狂っているんだよね。


 今、この場所が地図上のどこかも分かっていない。


 だから、帰りが馬車と聞いてホッとした。


 豪華とは言えないが、8人を収容できる馬車に、師匠と2人で乗る。


 広く使えるのはありがたい。


 馬車が動き始める。


 そして、師匠は口を開いた。


「ノリ。俺にだけは真実を話せ」


「な、なんのことですか?」


 いきなり過ぎて、何のことだか本当に分からない。


「『魔王のせいで、故郷を消され、散り散りにされた』ってな。聞くやつが聞けば、嘘だって分かる」


 ……いや、嘘を見抜かれたことはまだ良い。


 良くないけど。


 それより問題は、なんで師匠がそれを知ってんの? である。


 リリカとエイラにしか話していない内容だし、ギルマスであるカズの耳に入っていても不思議ではない。


 でも、久しぶりに戻ってきて、大した会話もしていない師匠が知っているのは、あまりに辻褄が合わない。


 師匠は頭を掻きながら言った。


「本当は密命なんだが、どうもノリは関係者らしいからな。俺には【看破】のスキルがある。相手のスキルや称号が見えるんだ。『鑑定』じゃ見えねぇ。『鑑定』の強力なヤツだと思え」


 嫌な予感しかしない。


 僕はステータスオープンする。


 でも、そこにはレベルと各種ステータスと魔法レベルと取得したスキルしか表示されていない。


 こんな感じだ。


 ノリ・ブラックシートLv39

 STR99、AGI27、INT50、VIT1、DEX1。

 火魔法Lv3、水魔法Lv3、土魔法Lv3、風魔法Lv3、錬金術Lv3、光魔法Lv3、闇魔法Lv3、雷魔法Lv3、ヒール、リカバリー、アイテムBOX(保冷無)、薬師。


 お。


 薬師が追加されている。


 これは薬の合成が捗りますなぁ。


「……やっぱり、視えてねぇのか……」


 師匠が頭を抱えている。


 何か、僕は見落としているのか?


「いや、それだけでも情報になる。今後は見つけやすくなるだろ」


 いや、なんか一人で納得されても困るんですが。


「【看破】でな、恐らくだが……ノリが視えてねぇ称号も、俺には視える。【異界からの導き手】と【??勇者】の二つがな」


 は?


 さすがの僕も、頭が真っ白になった。


 でも、師匠はやっぱり師匠で、師匠と呼ぶことにして良かったと、本当に思えたんだ。


 だって、僕のこれからの運命を、変えてくれた人だから。

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