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いつか勇者となる君は  作者: Norinα
第一章 娼館暮らしの冒険者
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〜Side エイラ〜

 ノリ・ブラックシート。


 二十代半ばに見えるけれど、詳細は不明。


 リリカさ……じゃなくて、リリカのお気に入り。


 あんな鼻の下を伸ばしてるヤツのどこが良いんだか。


 まぁ確かに、依頼はサクサク片付けるし、こっちが忙しい時は手短に用件済ませてくれるし、お世辞とは言え会う度に褒めてくるのも忘れないし、しつこくないし、他の男よりマシに見えるのは間違いないわ。


 ただ、あくまで見えるだけ。


 男なんて、しょーもない生命体なのは真理よ。


 それを暴いてやることにしたわ。


 ディークに連行されて娼館に行ったことくらいは知ってるわ。


 リリカも、付き合い程度なら普通、とは言った。


 目の周りがピクピクしていたけど。


 これはチャンスと思い、張り込んだわ。


 この1か月。


 娼館アーニィ・マリィルートにね。


 私、こう見えて、火と光魔法が得意なのよ。


 高位光魔法を発動する。


 それは【光視】よ。


 闇魔法を見破る魔法。


 これを取得している者は、なかなかいないわね。


 間者の仕掛けた罠を見抜けるから、お偉方が囲うそうよ。


 改装工事中から、やたらと出入りするノリ……。


 工事が終わっても出入りするノリ。


 行列ができる娼館なんて初めて聞いたし、初めて見たわ。


 ノリが絡んでるの?


 というか、ノリってここに住んでるの?


 本当はやりたくないんだけれど、私は意を決して侵入する。


 確証が欲しかったから。


 ノリは今日も娼館の裏口から入った。


 1時間待っても出てこない。


 私は、その裏口から入る。


 認識阻害魔法が掛かっていたわ。


 ノリを見ていたから気付いた。


 【光視】が無かったら、分からなかったかもね。


 誰もいない部屋……。


 そこからロビーを覗く。


 むさ苦しい男共が、ウジャウジャ。


 虫唾が走るわ。


 隙を見て階段を上る。


 人の気配がほぼ無い5階から階下を見下ろす。


 改めて内装を見る。


「綺麗な場所ね。宮殿みたい……」


 お世辞じゃなくて、本当にそう思った。


 下から声が聞こえるわ。


「ママ。ノリくんのところ。いってくるね!」


「ノリ様の言う事をちゃんと聞くのよ?」


「はいはーい」


「返事は1回!」


「はーい」


 親子の会話?


 なんで子供が娼館に?


 それに、なんでノリ?


 いや、そんなまさか。


 さすがにソレは無いと思う。


 思わせて。


 大丈夫……よね?


 黒い犬耳と尻尾を大きく振りながら、少女は5階の部屋に入る。


 私には、気付かなかった。


 5階の部屋の前に立つ。


 表札があった。


「なんで、ここに『ノリ・ブラックシート』って表札があるのよ? ん? この表札……細工がしてある」


 光魔法の【光視】を発動したままの私は、表札の裏に細工がしてあるのを見つけてしまった。


〘おニューの【影見絵】を設置したにゃ。好評価、レビュー、お待ちしているにゃ〙


 …………。


 覗きスキル?


 なんで?


 偽物かもしれないと思い、覗き込む。


 先程の少女の影絵が、キョロキョロして……ベッドに潜った?


 なんで?


 ハッ、階段を急いで上ってくる音がした。


 私は階段の裏手まで戻って隠れる。


 ノリが慌てた様子で駆けてくる。


 そして、部屋に入った。


 ……嘘でしょ?


 ノリ、ちょっとでも、私はあんたを信じたいの。


 リリカだって、あんたを信じてた。


 私は、ダメだと思っていても、体が勝手に動いていた。


 表札の【影見絵】を起動する。


 そこには、ベッドの布団に潜り込んだ少女と、その布団に飛び込むノリの影が映っていた。


 ノリの影が、ベッドの上の少女に手を伸ばすように動いている。


「……嘘でしょ?」


 私は階段を駆け下りた。


 誰かに見られて、声をかけられた気がした。


 ディークもいやがったわ。


 でも、あんまり覚えていない。


 私は、リリカにこんな話をしたくなかった。


 でも……親友だから。


 そして、私はリリカの前に居た。


 全部喋った後、ハッと我に返った。


 歯の根が合わない。


 カチカチと、私は震える。


 笑ったリリカの笑顔。


 誰が見ても怒ってるって、分かるから。

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