↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか勇者となる君は  作者: Norinα
第一章 娼館暮らしの冒険者
PR
10/34

第7話 娼館暮らし、始めました

 僕の朝は早い……。


 日が昇ると同時に目が覚める。


 もう、森以外で寝られない呪いに掛かってるんじゃないかな?


 そろそろ温かい布団で眠りたいな。


 夜の内に薬草の群生地に辿り着いたので、近くの木の太い枝の上で就寝。


 起床してからせっせと薬草を毟る。


 青カビの採取も忘れない。落ちた木の実によく付いてるんですよ、コレ。


 これが抗生物質の材料。

 これで薬の合成工程をかなり短縮できるぞ。


 材料の節約にもなるからね。


 昼まで採取して、昼御飯の魔物を狩って、焼いて食ってからウェスタリアに帰還。


 薬はもう合成してあるので、アーニィ・マリィルートの扉を叩く。


 ……全然反応が無い。


「ノリと言ったね。こっち来るさね」


 オババが横から突然現れた。


 ビックリしたよ。


 裏口があるらしく、そっちへ案内された。


 裏口の玄関の向こうは、待機部屋ならぬ緊急病床。


 ただ、昨日よりも、みんな明らかに顔色が良くなっていた。


 一番酷かったスズは、まだ体こそ起こせないが、意識はちゃんとあって、薬もちゃんと飲んでくれていた。


「ありがとうございます。娘を……スズを助けてくださって……うぅ……」


 スズのママ、カノンさんだね。


 しかし、こんな美人を泣かせるなんて、おじさん失格……ここは何と声をかけるべきか。


「まだ助けていません。お礼は完全に治ってから。しっかり、薬を飲ませてあげてくださいね」


 厳しいことを言うようだが、これは真実である。


 しっかりと薬を続けてもらうため、心を鬼にする。


 それでも、カノンさんは涙を拭いて頷いた。


 ママは強し。


 対してスズは嫌な顔をする。


 薬を飲みたくないようだ。


 カノンさんのニッコリ笑顔で、慌てて薬を飲むスズ。


 しょうがないので、薬を飲めたご褒美にヨシヨシしてやる。


 おっと、カノンさんの目が鋭い。


 大丈夫ですよ。


 さすがに、こんな子供に手を出すわけないでしょう。


「……正直、1日で『呪いの薔薇』がここまで良くなるとは思わなかったさね。本当に2週間もあれば、全員元通り働けるさね」


「一応は働けると思いますが、問題は感染源でして……そいつとまた相手したら、何度でも感染《うつ》りますよ?」


 僕の言葉に、オババだけじゃなく、聞き耳を立てていたお嬢全員が反応する。


 そして、カノンさんを見た。


「……私が原因で、間違いないでしょう。申し訳ございません。いつでも、出ていく所存です。オババ」


 カノンさんは土下座して詫びる。


 何があったか聞くのは野暮なこと。


 僕は空気になったつもりで静観する。


 一向に頭を上げようとしないカノンさんに、オババは溜め息を吐いた。


「行く宛が無いから、ここで働かせてくれと言ったこと。わたしゃ覚えているさね」


「オババ! まだカノンを、ここに置く気にゃ!?」


 ネコのハーフ獣人が文句を言うが、オババはネコの尻尾を握って言う。


「にゃああ!」


「ニーアは黙るさね! まぁ、文句を言いたい気持ちも分かるさね。ただ、ここでカノンを手放せば大赤字のまま……それは全員分かるさね?」


 ニーアと呼ばれたハーフ獣人だけじゃない。


 みんな、生唾を飲んでオババを見る。


「カノン、スズのこともあるから籍は置いておくさね。回復次第、しっかり稼ぐさね。ちょうど目の前に金づ……太客がいるさね。ノリの奴隷になったつもりで奉仕するさね」


 金ヅルって言ったよ、このオババ。


 しかも奴隷って何さ。


 僕にナニさせようとしてるのさ。


 他のお嬢達、ドン引きなんですけど。


「はい、カノン・モードレイズは只今をもちまして、ノリ様専属の奴隷として御奉仕させていただきます」


 いや、三つ指ついてお辞儀して、覚悟を決めた顔しなくても良いですよ。


「そういうのは求めていないので……」


「ママ……」


 ほら、スズちゃんの目が……。

 視線で胸がめっちゃ締め付けられるよ。


「なんたってディークの弟子だからねぇ。実力は折り紙付き。あんたらもウカウカしてると、カノンに負けるさね!」


 ギロリと、お嬢全員からの視線が突き刺さる。


 色目と金目と嫉妬の目だ……。


 これが、ハーフとは言え、獣の目。


「早速命令しても良いさね。なんならあたしにするかぃ? ひひひっ、白金貨2枚……持ってることは知ってるさね。それを出すなら、この娼館の経営権もくれてやるさね」


 なんで知ってんの、このオババ。


 ……師匠だな?


 僕と師匠でダンジョンをクリアしたご褒美に、騎士団の詰所で白金貨を2枚ずつ貰った。


 200万ゼミー。


 日本円にして2〜3億円だ。


 それだけ都市の近くに発生したダンジョンの処理は危険度が高いらしい。


 特に今回は人的被害ゼロということもあって、破格の報酬だったらしい。


 師匠曰く、良いもん飲み食いして、良い所で寝泊まりして、女をたくさん囲ってる内に無くなるとのこと。


 金遣い荒いよ、師匠。


 僕はそんな無駄遣いをするつもりは無い。


 むしろ、僕が欲しいのは――。


「奴隷とか経営権とか要らないから、住む場所が欲しいよ」


 オババは土地勘ありそうだし、良い物件を抑えてくれるかなーと思って、白金貨2枚を弾くように飛ばして渡した。


 でも、なんでオババだけじゃなくて、みんなあんぐり口を開けてるのかな?


 それになんでかな?


 なんで夜になって、娼館の5階にある隣り合った空き部屋2つを僕に充てがうことが決まっちゃうのかな?


 それも全員一致で。


 こうして、僕の拠点は娼館アーニィ・マリィルートとなった。


 今日から僕は、娼館暮らし、始めました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。