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魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第三章「崩れていくもの」

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書き置き

朝。

 

目が覚めた。

 

よく眠れなかった。

 

エルマの温かさが——まだ、手に残っている気がした。

 

(……エルマさん)

 

着替える。

 

部屋を出ようとして——

 

足元に、何かがあった。

 

紙だった。

 

折りたたまれた紙が——ドアの下から、差し込まれていた。

 

(……誰が)

 

拾う。

 

開く。

 

短い文だった。

 

 

『一人で確かめなければならないことがある。

 

追うな。

 

——ガイウス』

 

 

セリスが——止まる。

 

(……ガイウス)

 

もう一度、読む。

 

短い。

 

説明がない。

 

理由もない。

 

ただ——行った。

 

(……なぜ)

 

(なぜ、今)

 

(エルマさんが——昨夜)

 

廊下に出る。

 

ガイウスの部屋に——向かう。

 

扉を、叩く。

 

返事がない。

 

もう一度、叩く。

 

返事がない。

 

扉を——開ける。

 

部屋は——空だった。

 

荷物が、ない。

 

全部——持っていった。

 

「……」

 

セリスは——部屋の入口に、立っていた。

 

空の部屋を——見ていた。

 

(……追うな、と書いてあった)

 

(追うな)

 

(……追えない)

 

(どこへ行ったか——分からない)

 

(何を確かめに行ったか——分からない)

 

(でも)

 

(……昨夜のことと——関係があるのだろうか)

 

(エルマさんが死んで)

 

(密偵がいて)

 

(そして——ガイウスが消えた)

 

分からない。

 

全部が——分からない。

 

ノイエが、鞘の中で低く鳴る。

 

「……分かってる」

 

セリスが言う。

 

「追わない」

 

「……追えない」

 

「でも」

 

(……戻ってきてほしい)

 

言葉にはしなかった。

 

——

 

部屋を出る。

 

廊下を歩く。

 

昨夜——エルマが倒れた場所を、通る。

 

足が——少し、止まる。

 

(……エルマさん)

 

(ガイウスも——いなくなった)

 

(昨日まで——いたのに)

 

(今日は——いない)

 

手の中の紙を——握る。

 

強く。

 

「……行ってこい」

 

かすかな声で。

 

「確かめてこい」

 

「……必ず——戻ってこい」

 

返事は——なかった。

 

廊下に——一人で、立っていた。

 

朝の光が、差し込んでいた。

 

静かだった。

 

昨日より——少し。

 

世界が、狭くなった気がした。

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