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魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第三章「崩れていくもの」

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秋の雨

雨が降り始めたのは、昼過ぎだった。




街道が、泥になる。


足元が重くなる。




「……雨宿りできる場所は?」




セリスが問う。




「前方に廃屋がある。昨日確認した」




ガイウスが答える。




「どのくらい?」




「半刻もあれば着く」




「分かった。急ぐわよ」






廃屋に着く。




屋根に穴がある。


壁も、一部崩れている。


だが——雨は凌げる。




「十分ね」




「十分とは言えないが」




「言えるわよ」




ガイウスが「……そうか」と言う。




全員が中に入る。




濡れた外套を脱ぐ。


火を起こす。




「……温かい」




メイラが言う。




「そうね」




雨音が、屋根を叩く。






「昨日の村のことが、頭から離れない」




リオが言う。




唐突だった。


だが——誰も驚かない。


みんな、同じことを考えていたから。




「……そうね」




「あの村を守れなかった」




「守れなかったのは——昨日の話じゃない。もっと前から、始まっていたことよ」




「どういう意味だ」




「帝国が圧力をかけ始めた時点で、あの村の運命は決まっていた。昨日の私たちがどう動いても、変えられなかったかもしれない」




リオが「……それは」と言う。




「慰めにもならないか」




「慰めじゃない。事実よ」




「事実でも——」




「腹が立つわね」




リオが、少し止まる。




「……ああ」




「私も、腹が立ってる」




「……そうか」




「腹が立って、悔しくて、それでも次へ進むしかない。それだけよ」




リオが、火を見る。




「……お前って、強いよな」




「強くない」




「強く見える」




「……弱いから、強く見せてるの」




リオが「……そういうもんか」と言う。




「そういうもの」






雨が、少し強くなる。




ライラが壁際に座りながら言う。




「……帝国の動きが、変わってきてる」




「どういうこと?」




「今まではじわじわと圧力をかけるやり方だった。でも最近——直接的になってきてる」




「昨日の村もそう?」




「そう。理由も言わず、人を連れていく。前はそこまでしなかった」




ガイウスが「……焦っているのかもしれない」と言う。




「帝国が? なぜ?」




「どこかで——抵抗されている。それに対応するために、力を示す必要が出てきた」




「エルディンの動きが、影響しているかもしれない」




ライラが言う。




「ヴァレン北部の拠点が、機能し始めている。帝国はそれを知っている」




「……エルディン」




セリスが、小さく言う。




(あの人は、別の場所で戦っている)




(私たちが動いている間に)






「セリスさん」




メイラが言う。




「うん?」




「……侵食のこと、少し気になっていて」




セリスが、少し止まる。




「何が?」




「最近、使った後の回復が——前より遅い気がして」




「気のせいよ」




「……気のせいじゃないと思います」




「メイラ」




「はい」




「今は、気にしないで」




「でも——」




「気にしないで」




メイラが、口を閉じる。




黙っていることを選んだ。




しかし——




(……覚えておく)




心の中で、そう決めた。






(ノイエ)




宝石が、ゆっくりと動く。




(メイラが気づいてる)




(……はい)




(どう思う?)




(……彼女の観察は、正確です)




(やっぱり、遅くなってる?)




宝石が、一度だけ瞬く。




(……はい)




(そう)




(……セリス)




(なに?)




(……限界が、近づいています)




(分かってる)




(……分かっていて、止まらないのですか)




(止まれない)




(……なぜですか)




セリスが、リオを見る。


火を見ている横顔。




(守りたい人が、いるから)




宝石が——しばらく、動かなかった。




(……了解しました)




短く言った。




だが——その声が。


いつもより、少しだけ。


重かった。






雨が、続いていた。




「……次の村まで、どのくらい?」




リオが聞く。




「明日の昼前には着く」




ガイウスが答える。




「その村は、大丈夫かな」




「……分からない」




「分からないか」




「分からない。だから——確認しに行く」




リオが「……そうだな」と言う。




「行かなければ、始まらないから」




「……それ、セリスが言いそうなセリフだな」




「移ったのかもしれない」




リオが「……うつるのか、そういうのは」と言う。




「うつる」




セリスが答える。




「いいものが、うつる」




リオが「……そうかな」と言う。




「そうよ」




「……なら、いいか」




リオが、少し笑う。




火が、揺れる。


雨が、続く。




全員が、そこにいた。




それだけで——今夜は、十分だった。


「限界が、近づいています」


ノイエが言った言葉が、まだ耳に残っている。


知っていた。


でも——知っていても、止まれない。


それが——セリスという人間だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


ここまでお読みいただきありがとうございます!


雨の夜。廃屋。


リオが「腹が立ってる」と言えるようになりました。


最初の頃なら「倒す」しか言わなかったはずです。


そしてノイエが「限界が近づいています」と言った。


何かが、迫ってきています。


次回も続きをぜひ見届けてください!


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