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魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第三章「崩れていくもの」

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秋の始まり

バール教暦1152年、秋——




空の色が、変わっていた。




青が、少し深くなった。


風が、少し冷たくなった。




「……秋だな」




リオが言う。




「そうね」




「夏が終わったのに——まだ旅をしている」




「まだ、終わっていないから」




「そうだな」




リオが、空を見る。




「……終わったら、何をするんだろうな」




「また言ってる」




「昨日も言ったか」




「言った」




「……まあ、いいか」






街道を歩く。




前方に、村が見えてきた。




「……寄っていく?」




メイラが言う。




「食料の補充ができれば」




「帝国の旗は?」




「……見えない」




「よかった」






村に入る。




活気があった。




子供が走り回っている。




市場に人が集まっている。




「……普通の村だ」




リオが言う。




「普通が——一番いい」




セリスが答える。






食料を買う。




村人が「旅の方ですか」と聞く。




「はい」




「どちらへ?」




「……北の方へ」




「気をつけてください。最近、帝国の動きが怪しくて」




「どのあたりで?」




「東の森を抜けた先——フォンゼー村というところが、先週」




「……何があったんですか?」




「帝国兵が来て——若い男たちを連れていったと。理由も言わずに」




セリスが「分かりました。気をつけます」と言う。




村人が「あなたたちも、若いのに大変ですね」と言う。




「……いえ」




セリスが、村を見渡す。




子供が笑っている。


老人が日向ぼっこをしている。




「こういう場所を守りたいから——やってることなので」




村人が「……そうですか」と言う。




「ありがとう」




「お礼を言うのは、こちらの方です」






村を出る。




「……フォンゼー村、か」




ガイウスが言う。




「寄っていく?」




「……判断が難しい」




「なぜ?」




「俺たちが行って、何ができるか——分からない」




「でも——」




「でも、行かなければ何も変わらない、と言うんだろう」




セリスが「そう言うつもりだった」と言う。




「……予測できるようになった」




「一緒にいたから」




ガイウスが「そうかもしれない」と言う。




「……行くか」




「行く」




「根拠は」




「やらなければ、始まらないから」




「……それは根拠ではない」




「私には、なる」




ガイウスが「……分かった」と言う。




珍しく——それ以上、反論しなかった。






東の森へ向かう。




道が細くなる。




「……嫌な感じがする」




ライラが小声で言う。




「何が?」




「静かすぎる。鳥の声がしない」




全員が、足を止める。




(ノイエ)




宝石が、鋭く細くなる。




(……前方に、複数の気配)




(帝国兵?)




(……帝国兵と——もう一つ)




(もう一つ?)




(……村人の気配です。囲まれています)




「……囲まれている村人がいる」




セリスが小声で言う。




「どこに?」




「前方。森の中」




「どうする?」




「助ける」




「即答だな」




「やるかどうか、だから」




リオが「……行くか」と言う。




弓を、手に取る。




「リオ」




「なんだ」




「無理はしないで」




「……お前に言われたくない」




リオが、少し笑う。




「行こう」




全員が、動き始める。






森の中——




帝国兵が、村人を囲んでいた。




四人の村人。


男が二人、女が一人、老人が一人。




「逃げようとするな。おとなしくしていれば——」




「放してください! 何もしていない!」




「うるさい」




帝国兵が、女の腕を掴む。




「——やめろ」




リオが、木の上から声をかける。




帝国兵が見上げる。




「……誰だ!」




「関係ない旅人だ。でも——それは見過ごせない」




帝国兵が剣を抜く。




戦闘が始まる。






短い戦闘だった。




帝国兵が、動かなくなった。




村人が「……ありがとうございます」と言う。




「大丈夫ですか?」




「はい。あなたたちは——」




「旅の者です」




「どうして——」




「放っておけなかったから」




老人が、セリスを見る。




長い間、見る。




「……若いのに」




「そんなことはないです」




「いや——若い。それでいい」




老人が「ありがとう」と言う。






村人を見送った後——




「……リオ」




メイラが言う。




「なんだ」




「さっき——木の上から声をかけた時」




「ああ」




「かっこよかったです」




リオが「……突然だな」と言う。




「思ったから言いました」




「……そうか」




リオが、少し顔を赤くする。




「……ありがとう」




「礼はいいです」




「言いたいから言う」




メイラが「……そのセリフ、移ってますよ」と言う。




「移ったのか」




「移りました」




セリスが「いいものが移った」と言う。




全員が、少し笑う。






夕暮れが、森を染めた。




(ノイエ)




(今日も——守れた)




宝石が、一度だけ瞬く。




(……はい)




(でも——もっと守れない日が来る気がする)




(……なぜそう思うんですか)




(秋だから)




(……秋と、何か関係が?)




(何かが終わる季節だから)




長い沈黙。




(……セリス)




(なに?)




(……今日は、守れました)




(うん)




(……それだけは、確かです)




セリスが、仲間の背中を見る。




リオが歩いている。


メイラが歩いている。


ガイウスが歩いている。


ライラが歩いている。




(……うん)




(今日は、守れた)




(それだけで、十分)




夕暮れが、深くなっていく。




秋が、始まっていた。


今日は、守れた。


でも——秋は、まだ続く。


守れない日が、来る。


その時——リオは。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


ここまでお読みいただきありがとうございます!


第三章「崩れていくもの」——始まりました。


普通の村。笑っている子供。日向ぼっこの老人。


「こういう場所を守りたいから、やってる」


セリスのその言葉が——この章のテーマです。


そしてリオに「かっこよかった」と言ったメイラ。


引きの一文——「その時、リオは」。


次回も続きをぜひ見届けてください!


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