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魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第二章「守るということ」

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エリ

翌朝。


エリは、メイラの隣で眠っていた。


「……よく眠れたみたいですね」


メイラが小声で言う。


「そうね」


「昨夜、少しだけ泣いていました」


「……聞こえてた」


「私も、泣きそうでした」


「泣けばよかったのに」


「……泣いたら、この子が気を遣うと思って」


セリスが「メイラって——」と言う。


「なんですか?」


「……いつも、人のことを先に考えてる」


メイラが「そうですかね」と言う。


「そうよ」


「……リオさんも、そう言ってましたよ。昔」


静かな声だった。


セリスが「そう」と言う。


「……覚えてるのね」


「全部、覚えています」


メイラが、エリを見る。


「この子が——リオさんみたいに見えて」


「どこが?」


「泣かないところが」


セリスは、何も言わなかった。


ただ——エリの寝顔を見た。



出発する。


エリが自分で歩くと言った。


「抱っこしようか?」


「……歩く」


「疲れたら言って」


「……言わない」


リオが「頑固だな」と言う。


エリが「うるさい」と言う。


リオが「……そっくりだ」と小声で言う。


「何が?」


「いや——なんでもない」



道を歩きながら——


エリが、リオの横に並ぶ。


「……お兄ちゃん」


「なんだ」


「強い?」


「まあ、そこそこ」


「悪い人をやっつけられる?」


リオが少し間を置く。


「……やっつけられるよ」


「じゃあ——お母さんをやっつけた人たちも?」


リオが、足を止める。


「……」


エリが、リオを見上げる。


「やっつけてくれる?」


声が、震えていなかった。


怒りでも、悲しみでもない。


ただ——聞いていた。


「……約束は、できない」


リオが言う。


「なんで」


「できないことを約束するのは——嘘になるから」


エリが「……じゃあ、できることだけ言って」と言う。


リオが「……俺は」と言う。


少し間を置く。


「守ろうとする。できるかどうかは分からないけど——やろうとする」


「やろうとするだけ?」


「……それだけじゃ、ダメか?」


エリが少し考えてから——


「……ダメじゃない」


「そうか」


「お母さんも——やろうとしてたから」


リオが「……そうか」と繰り返す。


声が、少し変わった。



昼頃——


次の村が見えてきた。


「……エリ、この村に知っている人はいる?」


「……おばあちゃんがいる」


「よかった」


村に入る。


老婆が一人、畑仕事をしていた。


エリが「おばあちゃん!」と走る。


老婆が振り返る。


「……エリ? なんで——村は——」


エリが老婆に抱きつく。


老婆が、エリを抱きしめる。


「……よかった。よかった」


その言葉だけを、繰り返す。


メイラが、目を拭う。


ライラが「泣くの?」と小声で言う。


「……泣きます」


「……そうね」


ライラも、視線を外した。



老婆が、セリスたちに頭を下げる。


「……ありがとうございます。この子を——」


「当然のことをしただけです」


「でも——旅の方が、こんな子を」


「一緒に歩いてくれたのは、この子の方です」


老婆が、エリを見る。


エリが「……強い人たちだよ」と言う。


「そうかい」


「やろうとする人たちだって——言ってた」


老婆が、リオを見る。


リオが「……そんなことを言ったな」と言う。


「ちゃんと聞いてたのね」


エリが「全部聞いてた」と言う。


「……頑固だな」


「うるさい」


リオが、小さく笑う。


本当に笑った。


珍しかった。



村を出る前に——


エリがリオの裾を引く。


「……なんだ」


「約束して」


「だから——できないことは」


「できることだけでいい」


リオが、エリを見る。


「……やろうとする、って約束する」


「うん」


「それだけでいいのか」


「それだけでいい」


エリが、リオの手を一瞬だけ握る。


すぐに離す。


「……またね」


「……ああ」


エリが、老婆の元へ走っていく。


リオが、その背中を見ていた。


(……やろうとする)


(約束した)


(守れるか、分からない)


(でも——)


拳を、握る。


(やらなければ、始まらない)



村を出る。


街道を歩く。


しばらく、誰も何も言わなかった。


「……リオ」


セリスが言う。


「なんだ」


「さっき——笑ってたわね」


「……笑ってない」


「笑ってた」


「……笑ってない」


ガイウスが「笑っていた」と言う。


「お前まで言うのか」


「事実だ」


リオが「うるさい」と言う。


しかし——


口の端が、また上がった。



夕方。


野営の準備をしながら——


リオが一人で火を起こしている。


セリスが隣に座る。


「……一つだけ聞いていい?」


「なんだ」


「エリに——「やろうとする」って言えたのは、なぜ?」


「……できないことを約束したくなかったから」


「最初の頃なら——「やってやる」って言ってたと思う」


リオが「……そうかもな」と言う。


「変わったのよ」


「……どっちがいい?」


「今の方が——ずっといい」


リオが火を見る。


「……セリス」


「うん?」


「守りたいもの——少し、分かってきた気がする」


「どんなもの?」


「……エリみたいな子が、泣かずに済む場所」


セリスが「それでいい」と言う。


「根拠になる?」


「十分よ」


リオが「……そうか」と言う。


火が、揺れる。


「……ありがとう」


珍しかった。


リオが、素直に言った。


「どういたしまして」


セリスが答える。


首元の宝石が——

一度だけ、瞬いた。

「エリみたいな子が、泣かずに済む場所」

それが——リオが最後に守ろうとしたものだった。

分かった時には、もう間に合わないけれど。

それでも——分かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき

ここまでお読みいただきありがとうございます!

「やろうとする、って約束する」

リオが変わってきました。

「やってやる」じゃなくて——「やろうとする」。

この違いが、この子の成長だと思います。

そして引きの一言——

「分かった時には、もう間に合わない」

リオに何が起きるのか。

次回も続きをぜひ見届けてください。

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