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魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第二章「守るということ」

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麓の村

山を越えたのは、翌朝だった。


下り坂を進むと、小さな村が見えてくる。


「……帝国の旗がない」


リオが言う。


「まだ手が届いていない場所ね」


「いつまで、そうでいられるかな」


「……それを変えたくて、動いてる」


リオが「そうだな」と言う。


短い返事だったが——最初の頃とは、違う声だった。



村に入る。


食料を分けてもらえないか、交渉する。


村人は警戒していたが——セリスが話すうちに、少しずつ表情が和らいだ。


「……少しなら」


老婆が言う。


「ありがとうございます。お代は払います」


「お代より——あなたたちは、どこから来たの?」


「北から。山を越えてきました」


老婆が「この時期に山を?」と言う。


「事情があって」


「帝国から逃げているのかい」


セリスが少し間を置く。


「……そう見えますか」


「見えるよ」


老婆が、セリスをまっすぐ見る。


「逃げている人間の顔を、私はよく知っている。この村にも、そういう人間が来たから」


「……今は?」


「連れていかれた。三ヶ月前に」


静かな声だった。

怒りも、悲しみも——通り過ぎた後の、静けさだった。


「……ごめんなさい」


「謝らなくていい。あなたのせいじゃない」


老婆が立ち上がる。


「食料を用意する。少し待ちなさい」



村を歩く。


子供が数人、遠くから見ている。


リオが「……なんか見られてるな」と言う。


「珍しいんでしょ。旅人が来ることが少ない村だから」


「そうか」


リオが子供たちを見る。


子供の一人が、目が合った瞬間に隠れる。


「……怖がられてるな」


「最初は、そんなものよ」


しばらくして——


子供の一人が、少しずつ近づいてくる。


一番小さい子だった。


「……お兄ちゃん、強い?」


リオに聞く。


「まあ、そこそこ」


「悪い人をやっつけられる?」


リオが少し固まる。


「……やっつけられるよ」


「本当に?」


「本当に」


子供が「じゃあ——」と言いかける。


その時。


村の入口の方から、声が上がった。


「——帝国の兵だ!」



全員が動く。


帝国兵が三人、村に入ってくる。


「徴収だ。食料を出せ」


村人が「三日前にも来た。もう何も——」と言いかける。


「うるさい。あるものを全部出せ」


兵士が村人を突き飛ばす。


子供たちが悲鳴を上げる。


さっきリオに話しかけた子が——転んだ村人のそばに駆け寄ろうとする。


兵士が、その方向に歩く。


気づいていない。


子供が、道の真ん中にいた。


「——危ない」


声が出た。


リオが動いていた。


子供の前に立つ。


兵士と向き合う。


「……何者だ」


「旅の者だ」


「邪魔をするな」


「子供に近づくな」


兵士の目が変わる。


「——やれ」


残りの兵士が動く。


セリスが「ノイエは使わない。自分でやる」と心の中で言う。


(……了解しました)


ガイウスが前に出る。

リオが弓を構える。


短い戦闘だった。


三人が、動かなくなった。



子供が、リオを見上げている。


「……ありがとう」


「別に」


「怖くなかったの?」


リオが少し間を置く。


「……怖かったよ」


「でも助けてくれた」


「怖くても——やらなきゃいけないことがあるから」


子供が「強いね」と言う。


「そうでもない」


「強いよ」


リオが「……ありがとう」と言う。


珍しかった。

リオが素直に礼を言うのは。


セリスは、その背中を見ていた。


(……変わってきてる)


確かに。

少しずつ。


(……同意します)


ノイエが、珍しく自分から言った。


セリスが(あなたも見ていたの?)と問う。


(……観測していました)


(それって——気にしていたってことよ)


長い沈黙。


(……そうかもしれません)

「怖くても——やらなきゃいけないことがあるから」

最初の頃のリオなら、言えなかった言葉だ。

この旅が——少しずつ、彼を変えている。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

リオが子供をかばった場面。

「たまたまだ」とは言いませんでした。

「怖くても——やらなきゃいけないことがあるから」

この言葉が言えるようになったリオが、これからどこへ向かうのか。

続きをぜひ見届けてください。

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