表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第二章「守るということ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/72

地図

翌朝。


ガイウスの傷は、思ったより浅かった。


メイラが包帯を替えながら「……昨日より落ち着いていますね」と言う。


「問題ない」


「無理はしないでください。明後日まで時間はあります」


「分かっている」


メイラが「本当に分かってますか」と小声で言う。


ガイウスが「聞こえている」と言う。


メイラが「分かっていればいいんです」と言って包帯を結ぶ。



朝食を終えて。


全員が卓を囲む。


「王宮の構造を教えてほしい」


セリスがライラに言う。


ライラが少し間を置いてから——


「……どこまで知りたい?」


「全部」


「全部は無理よ。私が知っているのは、限られた部分だけ」


「その限られた部分を、全部」


ライラが「しょうがない」と言って立ち上がる。


宿の主人から紙と炭を借りてくる。


卓の上に広げる。


「……王宮の外観は昨日確認したわね」


ガイウスが「ああ」と答える。


「東側の出入り口から入ったとして——」


ライラが線を引く。


「使用人の通路が、ここから伸びている。突き当たりを右に曲がると、中庭に出る」


「中庭から先は?」


「……ここから先は、うろ覚えよ」


「それでもいい」


「王族の居住区に繋がる廊下が、中庭の北側にある。ただし——」


「ただし?」


「夜は衛兵が立つ。一人じゃない。複数で巡回している」


「交代のタイミングは?」


「夜明け前に一度。それ以外は——知らない」


ガイウスが「それで十分だ」と言う。


「問題の部屋は、居住区のどこにある?」


「……将軍が言っていた『帝国の使者と王が二人きりで会った部屋』ということなら——」


ライラが少し考える。


「王の私室に近い場所にある小部屋のはず。客間とは別の——」


「なぜ知っているの?」


リオが言う。


ライラが、リオを見る。


「……情報屋だから。王宮の構造くらい、調べるわ」


リオが「そういうものか」と言う。


「そういうもの」


ガイウスが地図に書き込む。


「東側入口→使用人通路→中庭→北側廊下→居住区→小部屋」


「大体そう。でも中庭から先は確かじゃない」


「確かじゃない部分は、現地で確認する」


「……胆が据わってるわね」


「情報が不完全なことは、いつもだ」



地図を見ながら、全員で検討する。


「衛兵の巡回ルートが分からない」


メイラが言う。


「現地で見るしかない」


ガイウスが答える。


「危なくないですか?」


「危ない。だから最小限の人数で動く」


「私も行く」


リオが言う。


「お前は外で待機だ」


「なんで」


「弓を使えない場所では、足手まといになる」


リオが「……そういうことか」と言う。


不満そうだが——反論しない。


「外での援護は任せる。それの方が、全体として勝率が上がる」


「……分かった」


リオが、腕を組む。


(……足手まといか)


(それは、嫌だな)



「脱出ルートは?」


セリスが聞く。


「入ってきた道を戻る。それ以外は想定しない」


「何かあったら?」


「何かあっても、戻る」


「……シンプルね」


「複雑にすると、崩れやすくなる」


ライラが「賛成」と言う。


「逃げる時は頭より足を使う方がいい」


「……経験則?」


「そう」


ライラが少し笑う。



昼前。


ガイウスが「もう一度、外観を確認してくる」と言う。


「傷は大丈夫?」


「動ける」


「無理しないで」


「言っただろう。問題ないと」


セリスが「はい」と言う。


ガイウスが出ていく。


扉が閉まる。


メイラが「……心配ですね」と言う。


「うん」


「でもあの人、止めても聞かないですよね」


「うん」


「……セリスさんは、どうして止めなかったんですか?」


セリスが少し考えて——


「止めたら怒るから」


メイラが「それは怒らないと思いますよ」と言う。


「……そうかな」


「そうですよ」


セリスが窓の外を見る。


(……あの人は)

(止めても、動く)

(止めなくても、動く)


(だったら——)


(せめて、帰ってきてほしいと思う)


声には、出なかった。



夕方。


ガイウスが戻ってくる。


「確認した。東側の出入り口、夜明け前の二刻に衛兵が交代する。その間、約半刻——出入り口に人がいなくなる」


「……調べてきたの?」


「必要な情報だ」


「傷は?」


「開いていない」


メイラが「見せてください」と言う。


「問題ない」


「見せてください」


ガイウスが渋々腕を出す。


メイラが確認する。


「……本当に開いていないですね」


「言っただろう」


「でも、もう無理はしないでください」


「……分かった」


珍しく、素直に言う。


リオが「珍しいな」と言う。


「うるさい」


「いつもそうやって答えてくれると助かるんだけど」


「黙れ」



夜。


全員で最終確認をする。


「決行は明日の夜明け前。集合はここを出てすぐ。動きは少ない方がいい」


「装備は最小限」


「証拠品は持ち出せる形でなければならない。書状か、それに類するもの」


「入れ物は?」


ライラが懐から小さな革袋を出す。


「これを使いなさい。小さくて丈夫だから」


「ありがとう」


「礼はいらない。取引だから」


セリスが「それでも」と言う。


ライラが「……そういうところ、損をするわよ」と言う。


「そうかもしれない」


「分かってて言うの?」


「うん」


ライラが、少し目を細める。


「……変な子ね」


悪い意味ではない声だった。



夜が深くなる。


各自が休む。


セリスは、眠れなかった。


(……ノイエ)


(明日、うまくいくと思う?)


(……勝率は——)


(言わなくていい)


(……なぜですか)


(聞いたら、緊張するから)


沈黙。


(……一つだけ、聞いていいですか)


珍しかった。

ノイエが自分から聞いてくることは、少ない。


(なに?)


(……明日、私を使いますか)


セリスは少し考えた。


(できれば、使わずに済ませたい)


(……なぜですか)


(目立つから。それに——)


少し、間を置く。


(できれば、自分の力でやりたい)


長い沈黙。


(……了解しました)


(ただし)


(なに?)


(……命に関わる時は、従いません)


セリスが、小さく笑う。


(知ってる。ありがとう)


ノイエは、何も言わなかった。


ただ——いつもより、少し近くにいる気がした。



夜明けまで、あと少し。


——明日、王宮に入る。





夜明けまで、あと少し。


明日、王宮に入る。


(……命に関わる時は、従いません)


その言葉が、なぜか——


心強かった。


ここまでお読みいただきありがとうございます!


いよいよ次回、王宮潜入です。

準備は整いました。でも——計画通りにいくとは限らない。


ガイウスの傷、ライラの「取引」という言葉、

ノイエの「従いません」という一言。


この三つが、次回どう動くか。

ぜひ見届けてください。


「続きが気になる!」という方は

【ブックマーク】と【評価(☆)】をいただけると

とても励みになります!よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【開始12時間で100PV突破の注目の新作!】意志を持つ禁忌の魔剣は、彼女を守る剣か、それとも彼女を喰らう器か? 復讐に燃える王女が世界の真実を斬り拓く、本格ダーク戦記。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ