伝言
朝食を終えて。
全員が卓を囲んでいると——
宿の主人が声をかけてきた。
「お客様に、お届け物が」
折り畳んだ紙を差し出す。
「……誰から?」
「使いの者が置いていきました。夜明け前に」
セリスが受け取る。
開く。
短い文章だった。
『ヴァレン北部に拠点を作った。必要なら使え。——エルディン』
セリスが、小さく笑う。
「……あの人らしいわね」
「誰からだ?」
ガイウスが聞く。
「レジスタンス結成の時に別行動を取った仲間。エルディンという人」
「……名前は聞いたことがある」
「生存者を集めて、拠点を作ると言っていた」
「それが、できたということか」
「そうみたい」
メイラが「どんな人ですか?」と聞く。
「似た者同士、って言ってた人」
「セリスさんに似てるんですか?」
「守り方が少し違うけど」
リオが「どう違うんだ」と聞く。
「……私は目の前の人を守る。あの人は仕組みを作って守る」
「……なんか、でかいな」
「でかい人よ」
ガイウスが「使者はどこへ行った」と問う。
「もう去ったそうです。返事は不要と」
ガイウスが「……徹底している」と言う。
「ヴァレン北部に拠点があるなら——後で使えるかもしれない」
「そうね」
セリスが紙を折り畳む。
(……エルディン)
(あなたは、ちゃんとやってるのね)
——
リオがセリスの隣に来る。
「……なあ」
「なに?」
「昨日の少年」
「うん」
「……お前がああいうことをするのを見て」
リオが少し間を置く。
「考えたことがあった」
「どんなこと?」
「……守るって、倒すことじゃないんだな、って」
セリスが、リオを見る。
「気づいた?」
「……ちょっとだけ」
「それで十分よ」
リオが「ちょっとだけじゃ足りないだろ」と言う。
「ちょっとずつ増えればいい」
リオが「……お前は気楽だな」と言う。
「そう?」
「そうだ」
「あなたが難しく考えすぎなの」
「……そうかもしれない」
リオが、前を向く。
「……まあ、考える」
「うん」
「答えが出たら」
「教えてくれるのね」
リオが「……考える、とは言った」とぼやく。
セリスが「同じじゃない」と言う。
「違う」
——
「行くぞ」
ガイウスが言う。
将軍の屋敷へ向かう。
「私が動くと怪しまれるかもしれない」
ライラが言う。
「私の顔を知っている人間が、この街にいる」
「……帝国の人間か」
「かもしれない」
ガイウスが「セリスが動く」と言う。
「私が?」
「お前の方が、話をまとめるのが上手い」
「……珍しいこと言うのね」
「一度だけだ。忘れろ」
メイラが「また言ってる」と小声で言う。
——
街へ出る。
朝の光が、石畳を照らしている。
人々が行き交う。
その顔に——重さがある。
(……守らなければ)
セリスは思う。
(この街も。この人たちも)
(ノイエ)
(何かあれば、教えて)
(了解しました)
短いやり取り。
それだけで、少し落ち着いた。
将軍の屋敷が——見えてきた。
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あとがき
ここまでお読みいただきありがとうございます!
エルディンからの伝言。
「必要なら使え」——その一言が、どれだけ心強いか。
次回、将軍との接触へ。
続きをぜひ見届けてください。
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