表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第二章「守るということ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/62

道中

街道は、広かった。


森の圧迫感が消えて、空が開ける。


遠くに山が見える。

その手前に、小さな町の輪郭。


「あそこで補給できる」


ライラが言う。


「帝国の駐屯はあるが、少数だ。昨日時点の情報だけど」


「昨日と今日で変わることは?」


ガイウスが問う。


「ある。ただし急に増援が来るほどの町でもない」


「……根拠は」


「この町は帝国にとって、戦略的価値が低い。交易路の通過点に過ぎない」


ガイウスが少し考えて、頷く。


「合理的な判断だ」


「当然」


ライラが淡々と返す。



リオが隣を歩きながら、ライラに言う。


「……あんた、どこで情報収集を覚えたんだ」


「必要に迫られて」


「誰かに教わった?」


「昔、世話になった人がいた」


昨夜と同じ言葉。


「その人に?」


「……似たようなことを、ね」


少しだけ、間があった。


リオはそれ以上聞かなかった。


聞いていいかどうか、分からなかったから。



メイラが前を歩くセリスに小声で言う。


「ライラさん、リオくんと話してますね」


「そうね」


「意外です。もっと人を寄せ付けない人かと思ってた」


「……私も、少し思ってた」


セリスが答える。


「でも、ああいう人って——話しかけやすい相手には話すのよね」


「リオくんが話しかけやすいんですか」


「……深く考えないから、かな」


メイラが小さく笑う。


「それ、リオくんに言ったら怒りますよ」


「言わないわよ」



昼前に、町に着いた。


帝国の兵士が二人、入口に立っている。


全員が自然に動きを合わせる。


帽子を深く被る。

剣を外套で隠す。

顔を伏せる。


——通り過ぎる。


声をかけられなかった。


「……息が合ってきた」


ライラが小声で言う。


「練習した?」


「してない」


リオが答える。


「なんとなく、分かるようになってきた」


ライラが「そう」と言う。


その口調が、少しだけ柔らかかった。



補給を済ませる。


食料。水。包帯。


メイラが薬草を選んでいる。

リオが干し肉の値段を交渉している。

ガイウスが地図を広げて次の経路を確認している。


セリスは、その様子を見渡した。


(……チームになってきた)


じわりと、そう思う。



「セリス」


ライラが隣に来る。


「少し、いい?」


「うん」


二人で、少し離れた場所に移動する。


「次の目的地、ヴァレン王国でいいのね」


「そのつもり。情報が欲しいし、安全な拠点も必要だから」


「ヴァレンには、私にも伝手がある」


「……本当に?」


「使えるかどうかは、着いてみないと分からないけど」


ライラが街の方を見る。


「帝国がヴァレンに圧力をかけ始めてる。最近の話」


「どの程度?」


「まだ軍事行動には出ていない。ただ——」


少し、間があく。


「物資の徴収が増えている。人も、少し」


セリスの胸が、重くなる。


「……また、徴発」


「帝国のやり方はどこでも同じよ」


ライラが淡々と言う。


感情がない、というわけではない。

慣れているから、淡々と言える。


そういう声だった。



「ライラ」


セリスが呼ぶ。


「なに」


「……なんで、ここまで教えてくれるの」


ライラが少し、目を細める。


「取引、って言ったでしょ」


「それだけ?」


間。


「……今は、それだけ」


また、その言葉。


「今は、ってよく言うのね」


「そう?」


「三回目よ」


ライラが、わずかに目を丸くする。


「……数えてたの」


「気になったから」


セリスがまっすぐ見る。


「あなたには、まだ言えないことがある。そうでしょう」


沈黙。


長くはなかった。


「……賢い子ね」


ライラが小さく笑う。


本物の笑いだった。


「いつか、話す。それでいい?」


セリスは少し考えて——


「いつか、聞く。それでいい?」


ライラが、少しだけ目を細める。


「……ええ」


短く、確かに言った。



二人が戻ってくる。


リオが干し肉を袋に詰めながら「何話してたんだ」と聞く。


「次の目的地の話」


「そっか」


それ以上は聞かない。


ガイウスが地図を畳む。


「出発する。ヴァレンまで二日。今日中に峠を越えたい」


「了解」


「分かった」


「はい」


「……ええ」


五人が、歩き出す。



セリスは少しだけ、ライラを見た。


(いつか、話す)


その言葉が、まだ耳に残っていた。


(……待てる)


理由は、分からない。


だが、そう思った。



街道が、続いている。


山が、少しずつ近づいてくる。


旅は——まだ、続く。

最後までお読みいただきありがとうございます!

次回は**【本日8時】**に更新予定です。

メンバーそれぞれの旅の目的を確認し合うという展開になりますので、ぜひお見逃しなく。

面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、

下の**【☆☆☆☆☆】をポチッと評価、

または【ブックマーク】**をいただけると、執筆の大きな励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【開始12時間で100PV突破の注目の新作!】意志を持つ禁忌の魔剣は、彼女を守る剣か、それとも彼女を喰らう器か? 復讐に燃える王女が世界の真実を斬り拓く、本格ダーク戦記。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ