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魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第二章「守るということ」

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助けた女

街が、見えてきた。


城壁に囲まれた小さな街。

帝国の支配下だが、交易路の中継点として辛うじて人が集まっている。


「情報を集めるなら、ここが限界だ」


ガイウスが言う。


「この先は帝国の直轄地になる。動きが取りにくくなる」


「分かった。慎重に動きましょう」



街に入る。


石畳。露店。行き交う人々。


表面上は、普通の街だった。


だが——空気が重い。

帝国の兵士が街角に立っている。

ただ立っているだけで、人々の動きが変わる。


(……重い)


セリスは思う。


黙って、剣を握り直す。


(気をつけて)


頭の奥で、返事はなかった。

ただ、剣がわずかに応えた気がした。



市場を抜けようとした、その時。


——騒ぎが起きた。


「止まれ! 帝国の命令だ!」


怒声。


路地の奥から、女が走ってくる。


帝国兵が三人、追っている。


女は速い。だが、前方に兵士がもう二人現れる。

挟まれた。


(逃げ場がない)


セリスが動くより先に——


女が、笑った。


追い詰められているのに。


「——やれやれ」


低く、落ち着いた声だった。


短剣を二本、逆手に構える。


「五人か。少し多いわね」



強い。


一人、二人と無力化していく。

だが数が多い。

三人目に腕を掴まれる。


「セリス」


リオが言う前に、セリスはもう動いていた。


「——失礼」


残りの兵士に割り込む。

ノイエを抜かずに、柄で制する。


ガイウスが背後を固める。

リオが弓を構えて牽制する。

メイラが防御魔法を展開する。


——片付いた。



女が、セリスを見る。


三十前後だろうか。

赤みがかった茶髪を無造作に束ねている。

目尻に笑い皺。だが眼差しは鋭い。


「……助けてもらっちゃったわね」


悔しそうでも、感謝しているようでもない。

ただ、事実を述べるような口調だった。


「逃げましょう。増援が来る前に」


セリスが言う。


女は一瞬だけセリスを見て——


「そうね」


迷わず、ついてきた。



——街の外れ。

人気のない廃屋の中。


「で、あんたたちは何者?」


女が腕を組んで言う。


「こっちが聞きたい」


リオが言う。


「帝国に追われてたじゃないか」


「情報を盗んだから」


あっさり言う。


「帝国の軍事情報よ。追跡部隊の規模、検問の位置、西への道の状況——欲しいでしょ、そういうの」


全員が、黙る。


「……どうして、私たちにそれを」


セリスが問う。


「あんたたちの手配書、見たことがあるから」


懐から折り畳んだ紙を取り出す。


似顔絵。セリスたちのものだった。


「帝国が血眼になって追ってる連中が、こんな辺境にいるとは思わなかった。——面白いじゃない」


「面白い、で情報を渡すの?」


「それだけじゃないけど」


少しだけ、目が細くなる。


「今は、それだけでいいわ」



ガイウスが前に出る。


「信用できない」


「できなくていい」


女が即答する。


「情報の価値は、内容で判断しなさい。人間性じゃなくて」


「……それは、そうだ」


ガイウスが、わずかに引く。


珍しかった。



セリスはその時、わずかに剣に目をやった。


(……どう思う?)


心の中で問いかける。


返事はない。


だが——剣が、静かにそこにある。


それだけで、少し落ち着いた。



女が、その仕草を見ていた。


「……その剣、気になるの?」


「え?」


「さっきから、時々見てる」


セリスは少し考えて——


「大切なものだから」


それだけ答えた。


女は「そう」と言って、地図を広げる。


だが——その目が、一瞬だけ剣に留まった。


(……この人は)


セリスは思う。


(何かを知っている)



セリスは女を見る。


掴みどころがない。

だが——目が、本物だった。


「名前を聞かせてもらえる?」


「ライラ」


短く言う。


「あんたは?」


「セリス」


「——ふうん」


ライラがセリスをしばらく見る。


値踏みするような目。

だが、悪意はない。


「……思ったより、ちゃんとしてるわね」


「どういう意味?」


「手配書の絵より、目に力がある」


それだけ言って、地図の説明を始める。


「西への道、三日前から検問が増えた。ここと、ここ」


指が、地図の上を動く。


ガイウスが無言で覗き込む。

リオが「把握してなかった」と小声で言う。


「でしょうね。最新情報だから」


ライラが淡々と言う。


「これが、私の価値よ」



「一緒に来てもらえる?」


セリスが言う。


「——へえ」


ライラが少し意外そうな顔をする。


「即断ね」


「必要な情報を持っている人が必要なの」


「私が裏切る可能性は?」


「ある」


即答した。


「でも、今は必要よ」


ライラが、セリスをしばらく見る。


やがて。


「……面白い子ね」


口の端が、上がる。


「いいわ。しばらく、付き合ってあげる」



ガイウスが小声でセリスに言う。


「……後悔するぞ」


「するかもしれない」


セリスも小声で返す。


「でも、しなかったとしたら——それでいい」



廃屋を出る。


街の空気は、相変わらず重い。


だが——


足音が、一つ増えた。



その足音の主が何者なのか。


まだ、誰も知らない

最後までお読みいただきありがとうございます!

次回は**【本日22時30分】**に更新予定です。

今回加入したライラとの会話シーンがメインになりますので、ぜひお見逃しなく。

面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、

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