合理の理由
夜。
焚き火が、小さく弾ける。
村の外れ。
人気のない場所を選んで、四人は火を囲んでいた。
リオが枝をくべる。
メイラが静かに目を閉じている。
セリスは、火を見ていた。
(……六人目)
今日の戦闘が、頭をよぎる。
自分が気づかなかった。
ガイウスが傷を負った。
「……ねえ、ガイウス」
「なんだ」
焚き火の向こう。
ガイウスは腕の傷に布を巻きながら、こちらを見ない。
「……どうして、そんなに合理的なの」
手が、止まる。
一瞬だけ。
「……意味が分からないな」
「いつも計算してる。損得を考えてる。感情で動かない」
セリスは続ける。
「……なんで?」
沈黙。
焚き火が、揺れる。
「感情で動くと、死ぬ」
短く、言う。
それだけ。
セリスは、その言葉をしばらく聞いていた。
「……誰かが、死んだの?」
間。
今度は、少し長かった。
「寝ろ」
それだけ言って、ガイウスは視線を火に戻す。
話は終わった。
そういう空気だった。
リオが小声でセリスに言う。
「……しつこく聞かない方がいいと思うけど」
「分かってる」
セリスも小声で返す。
「でも……気になるでしょ」
「……まあ」
リオが火を見る。
「俺も、似たようなもんだけどな」
ぽつりと、言った。
セリスが横を見る。
リオは、もう何も言わなかった。
『非効率な会話です』
ノイエが言う。
「黙って」
『……了解しました』
珍しく、すんなり引いた。
夜が、深まる。
メイラがそっと目を開ける。
全部、聞いていた顔だった。
だが、何も言わない。
ただ、小さく息を吐いて——
また、目を閉じた。
セリスは再び、火を見る。
(感情で動くと、死ぬ)
その言葉が、まだ耳に残っていた。
(……誰のことを、言っているんだろう)
答えは、出ない。
だが。
(いつか、聞ける日が来る気がした)
理由はない。
ただ、そう思った。
焚き火が、静かに燃えていた。




