選ばぬ選択
本日も一日お付き合いいただきありがとうございました!
最初の一撃は、重かった。
金属がぶつかる高い音と同時に、腕に衝撃が走る。
「っ……!」
足が半歩、下がる。
その隙を逃さない。
左右から、同時に刃が来る。
『右後方、三時方向。左前方、十時方向』
声に従い、身体をひねる。
右を受け、左をいなす。
だが——完全には避けきれない。
浅く、肩が裂ける。
熱が走る。
「……っ!」
息が乱れる。
視界が、わずかに揺れる。
『損傷軽微。しかし持久戦は不利です』
「分かってる……!」
三人。
呼吸も乱さず、距離を詰めてくる。
無駄がない。
訓練されている。
対して、自分は——
(まだ、甘い)
歯を食いしばる。
『戦術変更を提案します』
ノイエの声。
冷静で、迷いがない。
『敵一体の離脱を優先。戦力分断により生存確率を向上させます』
「具体的には?」
『負傷個体を作り、退避行動を誘発します』
視線が走る。
三人の中で、一瞬だけ足運びが乱れた個体。
——あれだ。
「……やる」
踏み込む。
正面の一人へ、一直線。
予想外の速度だったのか、わずかに反応が遅れる。
刃を弾く。
体勢が崩れる。
その瞬間——
「そこ!」
横からの一閃。
血が、散る。
だが——
浅い。
致命には遠い。
「……っ!」
『不十分です』
即座に評価が飛ぶ。
次の瞬間。
背後から衝撃。
「ぐっ……!」
脇腹に刃が食い込む。
浅いが、確実に削られる。
膝が揺れる。
視界が白く弾ける。
『損傷拡大。行動継続は危険域に到達』
「まだ……!」
倒れない。
剣を支えに、踏みとどまる。
呼吸が荒い。
血が、温かい。
それでも——
引かない。
『撤退を推奨します』
「却下……!」
短く、吐き出す。
三人が、再び距離を詰める。
包囲は崩れていない。
むしろ、こちらの消耗を見て、確実に仕留めに来ている。
(……ここで終わる?)
一瞬、頭をよぎる。
否定する。
(まだ、終われない)
その瞬間。
——剣が、震えた。
微かな、だが確かな反応。
『……出力上昇を検知』
「え……?」
意識していない。
だが。
身体の奥から、何かが引き上げられる。
熱でも、痛みでもない。
もっと別の——
“何か”。
『制御外の変化です』
ノイエの声が、わずかに低くなる。
だが。
止まらない。
足が、動く。
今までより速く。
今までより深く。
踏み込む。
視界が、狭まる。
敵の動きだけが、はっきりと見える。
一人。
また一人。
動きの“隙”が、線のように見える。
「——そこ」
振る。
黒い刃が、迷いなく走る。
一閃。
それだけで——一人が崩れた。
「な……」
残る二人が、明確に動揺する。
理解できない、という顔。
(私も……分からない)
だが。
止まる理由にはならない。
『出力上昇、継続中』
「なら——!」
踏み込む。
今度は、迷わない。
斬る。
受ける前に。
避ける前に。
動く前に。
——終わらせる。
二人目。
崩れる。
最後の一人。
恐怖が、顔に浮かぶ。
「来るな……!」
叫び。
だが。
セリスは止まらない。
止まれない。
振り下ろす。
終わり。
静寂が、戻る。
荒い呼吸だけが、森に残る。
「……はぁ……っ」
膝が、わずかに揺れる。
それでも、立っている。
剣を、握っている。
『戦闘終了を確認』
いつもの声。
だが。
その奥に、わずかな違和感。
『……想定外の出力上昇でした』
「今の……何……?」
問いかける。
沈黙。
ほんの、わずかに長い間。
『……不明です』
答えは、返ってきた。
だが——
それが“完全な真実ではない”ことを。
セリスは、なんとなく感じていた。
風が吹く。
森が、音を取り戻す。
だが。
何かが、確実に変わっていた。
本日も一日お付き合いいただきありがとうございました!
次回は**【明日6時】**に更新予定です。
ノイエの合理的判断はもっともだが・・・という展開になりますので、ぜひお見逃しなく。
投稿初日で、すでに多くの方に読んでいただけて感謝の極みです。
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